!更新中 ア淫夢ドルマスター 迫真デレラガールズ ブッチッパレボリューション

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1489051596/
1 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/09(木) 18:26:36.38 ID:gFdyefLOo
三度目の初投稿です
(書き溜め)ないです


前々スレ
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1447214531/
前スレ
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1469883914/

クッッッソ長いですが、最初から読まないと話が分からないのでこの機会に読んでください、オナシャス!

2 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/09(木) 18:27:47.63 ID:gFdyefLOo
2スレ分読むのがめんどくさいホモへのあらすじ



モバプロ所属のプロデューサーモバPはある日、オーディションを受けにやって来た田所、木村、三浦の三人を不合格にする。
結果が不満だった田所はモバPを昏睡レイプしようと企むが、睡眠薬入りのアイスティーを誤って渋谷凛が飲んでしまい計画は頓挫。凛は入院してしまう。
翌日。モバPは田所の家に向かうが、疲れからか、不幸にも黒塗りの高級車に追突してしまう。大人しく車についていったモバPに対し、車の主、893プロ社長谷岡に言い渡された示談の条件とは・・・。



あとは読んできて、どうぞ
3 : ◆8Zk9bbuSBI [sage]:2017/03/09(木) 18:28:30.99 ID:gFdyefLOo
それと立てておいてなんですが今日の更新はありません
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/09(木) 18:36:36.39 ID:DmRyqaRDo
ふざけんなぁ!!!(レスだけ迫真)
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/09(木) 18:37:03.32 ID:k7ZtPKRAO
おまんこぉ^~(気さくな挨拶)
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/09(木) 19:08:41.68 ID:pKIMXMm7O
nonaのアルバム聴きながら待つゾ
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/09(木) 19:34:31.31 ID:gTYPbNmWo
はーつっかえ
やめたら?この仕事
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/09(木) 19:46:41.94 ID:yjb7q6+gO
建て乙ぅ~
1スレ目から読んでるけど、ここまで長い話になるとは思ってなかったゾ
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/09(木) 19:55:54.89 ID:H7LTsSnN0
3スレ目なのか・・・・(困惑)
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/09(木) 20:47:26.77 ID:I7/tVOLLo
おい和三盆・・・
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/09(木) 20:52:20.10 ID:MClK0IuV0
きしょい…
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/09(木) 21:03:35.62 ID:8T1nP94Fo
サムソンブーム来てますねえ!
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/09(木) 21:42:56.13 ID:/bfAKtOBo
おp…おっぱげた…
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/09(木) 22:16:32.59 ID:1B4vsYrco
グノシー・・・
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/09(木) 23:30:29.88 ID:wj/RO2rGo
ホモバP?(幻聴)
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/10(金) 00:30:19.97 ID:MKa1TQY0O
(雑談混じりの語録もどき)き、きしょい...
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/10(金) 00:32:30.03 ID:L00HSrzt0
あ、そうですね(自覚)
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/10(金) 03:48:31.28 ID:u3Ax+lJ6o
(原稿に)手を入れる専門家も呼んであるからな?
19 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/10(金) 22:46:48.12 ID:CnmkFs/wo
P野「じゃあ123、4で始めよう」

CER「はい。1,2,3、4……」

キュッ,スタッ,ズギュッ

P野「あらぁっ!?」ステーン!

CER「だっ、大丈夫ですか!?」

P野「ごめんごめん。ちょっとつまずいちゃった」

P野(身体能力が格段に上がってるとはいえ、中々上手くいくものじゃないな)イテテ

CER「じゃあもう一回やりましょう。1,2,3……」スッ

P野「はい、ほい、はい」キュッ,タッタッ

P野(えーと、次はどう動けばいいんだっけ……)スタッ

CER「!?」

ドサッ!

P野「す、すまん智絵里!大丈夫か!?」

CER「はい。私は大丈夫ですけど……中野さん」

P野「ごめんね本当に、ちょっと調子が出なくてさ」

P野(まずいな……踊れるかどうかはともかくとして、まず振り付けを完璧に覚える必要がある)

P野「ほら、立てるか? ゆっくりでいいぞ」スッ

CER「はい……っ!?」ビクッ

P野(なんだ、掴んだ手をすぐに離したぞ?)
20 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/10(金) 22:53:28.91 ID:CnmkFs/wo
P野「おっ、どうしました?」

CER「あっ、いえ、何でもないです……」スタッ

P野「……?」ジー

P野(俺の手に何か付いてんのかな……あっ!)

P野(この変装は鏡やカメラのレンズ越しでもバレる事は無いが、実際に姿を変えている訳ではない)

P野(姿も声も、あくまでベルトの機能で相手を錯覚させているだけなのだ)

P野(つまり感触まではごまかせない。頭にはヘルメットを着けているし、胴体はタイツ風のコスチュームだ)

P野(智絵里は俺の手の感触に違和感を覚えて反射的に離したんだな……この後も気を付けなきゃ)

CER「……あの、どうしますか? まだ続けます?」

P野「じゃあまた智絵里だけ踊ってくれないかな? ちゃんと出来ているか確認するから」

CER「分かりました。ダメなところがあったら言ってください」

P野「オッケー。でも本番前だから軽く、軽くね」

CER「はい。じゃあ、いきます……」

スタッ,キュッキッ,クルッ……

P野(ここがこうで、こっちがそっちで? これもうわかんねえな)

P野(そもそも冷静に考えてみると、智絵里が踊ってるのを見ても俺の振り付けは分からんよな……)

P野「あーそこまで! ストップストップ!」
21 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/10(金) 22:58:14.27 ID:CnmkFs/wo
CER「っ、はい……間違えてましたか?」キュタッ

P野「いや、まぁ動きはオッケーよオッケー。それよりさ、レッスン中に踊ったのを撮影した動画とかない……なかったっけ?」

CER「それなら、前にプロデューサーさんが送ってくれましたよ。今見るんですか?」

P野「今見れるなら見せてくれ!」

CER「いいですけど……中野さんの携帯には無いんですか?」スッ

P野「えっ、あっ……いや、慌ててスマホ忘れちゃってさぁ~」

P野(実際は上着のポケットに入ってるので、変身を解かないと取れない……)

CER「あ、そうなんですね。どうぞ」

P野「ありがとう」ジー

P野(さぁ覚えるぞ覚えるぞ覚えるぞ)





P野「……」

P野(やば……やば……わかんないね……)

CER「あの、どうして今これを?」

P野「えっ? いやまぁ、ちょっと気になるところがあって……」

CER「どこですか?」

P野「えっ!? あっ、や、気になったけど、気のせいだったかな~、なんて

CER「……」

P野「よ、よし。そろそろ会場に向かおうか! レッスンは疲れるから終わり、閉廷!」

CER「そう、ですね……」

P野「あ、それとさ、やっぱりまだ気になるから、後でまた見せてもらっていいかな? 今の」

CER「構いませんけど……中野さん、ちょっと……」

P野「何!?なんつった今もっかい言ってみろ、ええ!?」

CER「いっいえ、何も……行きましょうか」
22 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/10(金) 23:01:22.27 ID:CnmkFs/wo
P野(明らかに怪しまれているな……智絵里はあの性格だからはっきり指摘してこないが)スタスタ

P野(いくら見た目が本物だからって、普段の口調も性格も知らん奴が成り済ますのはやっぱ無理があったな……)スタッ

CER「あ、あのっ」

P野「ん、どうした?」スーッ

CER「それ、モバPさんの車ですよね……?」

P野「~~!!~^~↓^~!!(慟哭)」

CER「ひっ……だ、大丈夫ですか?」

P野「はっ! す、すまん。そうだったそうだった、まったく俺は何してんだろうな! あははは!」

CER「……」

P野「はは、は……じゃ、じゃあタクシー乗って行こうか。ちょうどそこに停まってるし」

CER「はい」

P野(姿を変えている限りバレはしないさ、大丈夫大丈夫……本当に大丈夫か俺)

スタスタスタ……トントン,ガチャ……バタン

「どちらまで?」

CER「武道館までお願いします」

「武道館ね、はい」ブゥーン

P野(会場は武道館だったか。急だったのによくそんな所抑えられたな)

P野「……あ、スマホ貸してくれない? さっきの動画見るから」

CER「あ、はい。どうぞ……」スッ

P野(移動時間で頭に叩き込んでやる。覚えられさえすれば、後はベルトの力で反射的に身体が動いてくれるはずだ……!)
23 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/10(金) 23:03:09.59 ID:CnmkFs/wo
イニ義事務所

ピピピピピピ!

タカダキミヒコ「はい、タカダです。ええ、ええ。はい……はい? そうですか。ええ」

タカダキミヒコ「では、そのまま続けてください。ええ、それでは」ピッ

イニ義「野郎の居場所が分かったのか?」

タカダキミヒコ「車だけ見つかったそうです」

イニ義「んだと?」

タカダキミヒコ「スタジオCOATという場所にモバPが使っている364プロの車があったのですか、本人はレッスンスタジオ内にも周辺にも居ないと──」

イニ義「馬鹿野郎! 車だけ見つけてもどうにもならねえんだよ!」

タカダキミヒコ「はい。ですので、そのまま捜索を続けるように言いました」

イニ義「……どうにもきな臭え。急な仕事ってのは嘘だな」

タカダキミヒコ「渋谷さん達にも伝えますか?」

イニ義「余計に心配させるだけだ、見つかるまで言う必要はねえよ」

タカダキミヒコ「分かりました。……兄貴ぃ、こちらで見つける前にモバPが戻ってきたらどうします?」

イニ義「フッ、そうだな、少し喝を入れてやろう」

タカダキミヒコ「ええ。きっと従順になりますよ」

イニ義「ああ。楽しみだ……」
24 : ◆8Zk9bbuSBI [sage]:2017/03/10(金) 23:06:49.71 ID:CnmkFs/wo
短いですがここまで
(サムソンのおっさんどもはキチガイ過ぎるので登場し)ないです
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/10(金) 23:38:32.70 ID:L00HSrzt0
なんで?
26 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/12(日) 23:35:34.55 ID:WrGBqJ42o
会場 控え室

P野(こ、これはまずいぞ……絶対にまずい)

CER「……? どうしたんですか中野さん」

P野「い、いや……」

「ちょっとー、時間無いんで早く座ってくださいよ」

P野(メイクと髪型のセット! 顔はヘルメットで覆われてるんだから、触られるのはさすがにまずいですよ!)

P野「ちょっ、ちょっとトイレ行ってきます! 先に智絵里着替えさせといてください!」

CER「中野さん!?」

ガチャバタン,タッタッタッ……


P野(脱げるかなこれ……っ!?)スッ

スポッ!

P「あっさり取れるのか(呆れ)」

P(この状態で変装機能を使えば誤魔化せるか?)

「おい君君、こんなところで何してるんだい? ここは関係者以外立ち入り禁止だよ」

P「え? いや、俺は関係者──」

「嘘を言うな! そんな変な格好の奴が演者の関係者なわけないだろ!」

P「え……?」

P(もしかして……ヘルメットを取ったから変装機能が解けたのか!?)

P「……逃げる!」タッタッタッタッ

「あっ、おい待てい!(江戸っ子)」
27 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/12(日) 23:39:24.26 ID:WrGBqJ42o
男子トイレ

P(警備員を走って巻けたし、どうやら変装が切れただけで変身状態は維持されてるらしいな)

P(しかし、ヘルメットを外した状態で変装機能を使うことは出来ないようだ。鏡に映る姿はいくらベルトをいじっても変わらない)

P(ならどうする……あのメイクさんを追い出せれば何とかなるか?)

P(でも下手なことを言って智絵里の事まで悪く思われるのは避けたい……)

P(他人に成り済ますってのは難しいなぁんん?)

P(と言いつつ……一ついい案が浮かんできたぞ)

P(一人で隠し通すのが難しいなら、いっそ共犯を作ってしまえ!)

P(なんたって今の俺は────)

スチャッ,カチカチ

GO P「神にだってなれるんだから、な」
28 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/12(日) 23:47:32.68 ID:WrGBqJ42o
会場外

スタ,スタ,スタ……

「お、おい。あれって」「うせやろ?」「いや、間違いない!」

ザワザワザワザワザワザワ!

「GO is GOD!」「GO is GOD!」「GOisGOD!」

GO P(結構気持ちいいよこれ……っとと、早く目ぼしい奴を見つけて戻らないとな)スタスタ

「GO is GOD!」「GO is GOD!」ズササササ

GO P(……こっちが近づくと離れてくな)スタスタ

「GO is GOD」ズササササ

GO P(このっ……!)

スタスタスタ、ズササササ,スタスタスタ、ズササササ,スタスタスタ、ズササ──

GO P「お前漫才やってんじゃねえんだぞ!」

「」ビクッ 「神がお怒りだ!」「こ世界の終わりか……!?」

GO P(だ~っ、やっぱ全然気持ちよくねえ! 反応がいちいち大袈裟すぎる!)

GO P「おいそこのお前、じゃなかった君さ、ちょっと来てくんない? すぐ終わるからサ」

「お、俺すか……?」

GO P「そう。すげーよ、簡単だから。パパパっとやって、オワリっ!」

GO P(GOの口調はわりかし真似出来てる……気がする)
29 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/12(日) 23:53:16.23 ID:WrGBqJ42o
ザワザワザワザワザワザワ!!

「どういうことだ?」「何故神がこんな奴を」「それに聖也様の姿が見えないぞ」

GO P「あの、さ。俺の言うことが聞けないワケ? バラまくぞこの野郎!」

「主には主の意志があります」「神を試してはいけない(戒め)」「GO is GOD!」

GO P(多少怪しまれようが神性でゴリ押しすれば大丈夫だな)

「お前、早くGO様の下へ行くんだ」「神を待たせるな」「あ、あぁ……」

GO P「じゃ、詳しい話するからこっち来てくれる?」

「はい……」トボトボ

GO P「別に怖がんなくていいから。そうだ、君三浦さんに雰囲気似てるから、ミュラーって呼んであげるよ」

偽MUR「あ、ありがとうございます……」

GO P「ミュラーくんには特別に、俺の力をちょっと見せてあげるよ」

偽MUR「力……?」

パチン

SIY P「こういう力なんだけど」

偽MUR「!? か、神が、天使に……!」

パチン

GO P「この力を使ってさ、今から君と一緒に──」


……
30 : ◆8Zk9bbuSBI [sage]:2017/03/12(日) 23:53:42.58 ID:WrGBqJ42o
短いですがここまで
31 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/14(火) 23:59:40.63 ID:xt/VkHGbo
控え室

ガチャ

CER「中野さん!」

P野「ごめんごめん、待たせて」ニコニコ

「やっと戻って来たわね……って、そっちの人だれ?」

偽MUR「あっ、や、俺、は……」チラッ

P野「……」カチカチ

P野「中野くんの専用メイクを務めさせていただくミュラーといいます」ウツムキ
偽MUR「(口パク)」

P野(ここで突っ立ってくれていれば、後は俺が声を変えて一人二役をこなせる……)

「は?(威圧) 専属メイクとか聞いてないんですけど」

CER「そんな人居ましたっけ……?」

P野「今日のステージのためにお願いしたんだよ、な?」

カチカチ

P野「はい、その通りです」
偽MUR「(口パク)」

CER「そうなんですか」

P野「ということで、君もう帰っていいよ」

「はぁ? 何それ、意味わかんない」

P野「いいからハイ!」

CER「またよろしくお願いします」

「何か変なのよねぇ……」

ガチャ,バタン!
32 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/15(水) 00:00:15.73 ID:O14snZ/Vo
P野(よし、あのメイクは追い出せたぞ。後は適当にメイクされてるフリをすれば完璧だ)

偽MUR「ご、GO様、これは一体どういう……何故こんな──」

ガシッ!

CER「……?」

P野「君は余計なこと考えなくていいから、言われた通り俺をメイクするフリだけちょっとやってくれればいいの。分かったか?」ボソッ

偽MUR「」コクコクコク

CER「どうかしましたか?」

P野「なんでもないよ。時間もないし、手早く頼みますよメイクさん」

偽MUR「……どうやればいいんですか?」ボソボソ

P野「なんでもいいからこの辺の道具を顔にポンポンやってりゃいいんだよ!」スタッ

偽MUR「はっはいっ!」ガチャガチャ

CER「だ、大丈夫ですか……?」

P野「あぁいやなんでもない、なんでもないよ……」
33 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/15(水) 00:01:29.60 ID:O14snZ/Vo
偽MUR「で、ではこの白いポンポンする奴を……」スッ

カツッカツッ

偽MUR「……?」ポンポン

カツッ,カツッ

偽MUR「???」

P野「どうかした……しましたか?」

偽MUR「か、顔の、感触が変な気がするのは私だけでしょうか……?」

P野「……」スタッ

偽MUR「ヒッ!」

P野「お前ごときが俺の顔に直接触れられると思うな。いいから黙って言うとおりにしろ」

偽MUR「はっはふっぃ!」

P野(これで問題は無いだろう)スタッ

コツコツコツ,トントントントン……

P野(と思ったけど音がちょっと変ですねこれは……まぁ仕方ない)

偽MUR「こ、こんな感じでいいでしょうか」

P野「うん。ありがと……ありがとうございます」

P野(顔をメイクを受けたように変えて、と)カチカチ

偽MUR「どういうことなの……(レ)」
34 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/15(水) 00:02:47.93 ID:O14snZ/Vo
CER「中野さん、衣装はフィッティングルームの中にありますから」

P野「ああ分かった。じゃ君、もう帰っていいよ」

偽MUR「あ……はい」

ズイッ

P野「もちろん、ここでのことは他言無用だよ。喋ったら……分かるな?」ボソッ

偽MUR「」ブンブンブンブン

P野(まあ本当にどうにかするつもりはないが、一応釘をさしておかなきゃな)

CER「あの、中野さん。一人だと着るの大変だと思いますけど……」

P野「えっ? ああっ、そ、そうだよな! じゃあ智絵里に手伝ってもらおうかな~」

CER「えっ!?」ビクッ

P野「あ嘘嘘、冗談だから。ミュラー君も何出ていこうとしてんのッ!」

偽MUR「だ、だってもう」

P野「今の話聞いてたでしょ? 俺の着替えを手伝う!」グイグイ

偽MUR「ははっ!」

トントントン

P野「なんだよ今度は!」

ガチャ

GO「どうもこんちわっす」

P野・偽MUR「!!?」

CER「ご、GOさん……!?」
35 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/15(水) 00:04:00.02 ID:O14snZ/Vo
偽MUR「か、神が二人……?」

P野(本人登場はまずいですよ!)

GO「別に怖がんなくていいよ。ちょっと挨拶に来ただけだから」

SIY「今日はよろしくお願いします」

CER「こ、こちらこそよろしくお願いします……」ペコッ

偽MUR「あ……だ……まさか、お前……」クルッ

P野(ここで騒がれたら終わりだぞ、どうする!?)

GO「ん? あれ、君……」

P野「……っ」ゴクッ

偽MUR「GO様! こいつはGO様の名を──」

スッ

GO「ままそう、焦らないで。大体読めてきたから」

偽MUR「ははっ」シュタッ

P野(読めてきたってこいつまさか、いや、そんな……)

GO「まさか君が……ねぇ。中々面白いこと出来るんだね君」

P野「!!」

P野(こ、こいつ……俺の正体を見抜いている!)
36 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/15(水) 00:08:45.86 ID:O14snZ/Vo
P野(ヤバイぞ、ミュラー君を騙したことも多分気付いてる!)

GO「ま、お互い今日は頑張ろうよ。中野クン」

P野「あ、あぁ……」

GO「んじゃ、また後でね」スッ

P野「な……」

偽MUR「GO様! いいんですか!?」

GO「えぇ? 俺は挨拶に来ただけって、今そう言ったでしょ」

P野(俺を見逃すつもりなのか?)

偽MUR「ですがこの男は──」

GO「それより君さ、随分なれなれしいけど誰? 知り合いだっけ、聖也知ってる?」

SIY「いや」

偽MUR「お、俺はその……」

GO「部外者は外に出てなよ。最近困ってるんだよね、君みたいに勝手な事をする奴が多くて」

P野「!」

偽MUR「は、はい……」

ガチャバタン

GO「それじゃ今度こそ失礼するよ。正々堂々、小細工ナシで頑張ろうね」

CER「は、はい」

GO「……ただ今回は何があろうと、絶対に俺達が勝つけど、ね」

P野・CER「…………」ゾクッ
37 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/15(水) 00:15:22.73 ID:O14snZ/Vo
ガチャ,キィー……バタン

CER「……メイクさん、GOさんのファンだったんですね」

P野「あぁ……」

P野(GOは一部の信者が暴走していることを知っていたんだ。おそらく、中野くんに近づいていたことも)

P野(GOにとってこのステージは、敗北の汚名を返上して暴走している信者を沈める絶好の機会。それが不戦勝になっては目的を果たせない)

P野(だからこそ、俺を見逃してくれたんだ……ステージで完膚なきまでに倒すつもりで)

P野(しかし変装どころか、俺が変身してることまで一瞬で見抜くとはマジで人間じゃないな……そいつと今から戦うのかと思うと身が震えるぞ)

P野「でも、やるしかない……」

CER「え?」

P野「勝つしかないよな、絶対!」

CER「はっはい! 怖がってたら、ダメですよね!」

P野「ふぅー、じゃあさっきの動画もう一回見せてくれない? 最後の確認ってことで」

CER「ま、またですか? いいですけど……あの、着替えは」

P野「ああそうだ、まずは着替えだな! 一人で出来るから心配しなくていいぞ」

P野(どうせ衣装を見てその格好に変装し直すだけだしな)

CER「は、はぁ……」

P野(智絵里はますます怪しんでる表情、っていうか俺ももう普段と同じように喋っちゃってるけど……まあ、後から何とでもなるさ!)


……
………
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/15(水) 06:24:25.70 ID:TbtR0+BxO
まだ続いてて草
その継続力ええやん、気に入ったわ
39 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/16(木) 23:35:18.42 ID:7jO4e0lIo
「お待たせいたしました。ただいまより、アイドルアルティメイトトーナメント部門、三位決定戦を行います!」

ワァァァァァァァ!!
「GO is GOD!」「GO is GOD!」「GO is GOD!」

「登場するのは、ここまで数々の対戦を勝ち抜いて来ましたが惜しくも準決勝で敗れた両ユニット! ────」


P野(この司会なんだか話が長そうだな。……それにしても凄い歓声だ)

「GO is GOD!」「GO is GOD!」「GO is GOD!」
ウオオオオオオオオオ!!!

P野(今からこの歓声の中に出てって踊るんだよな……あーもうおしっこでちゃいそう!)

P野(プロデューサーがステージに立つなんてもういよいよ何でもありだよ! クソッ!)

P野(はあ、変身してるってのに妙に身体が重い。これが本番前の緊張って奴か……)チラッ

CER「……」

P野「……緊張、してるか? 智絵里」

CER「えっ? はい、それは、もちろん……」
40 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/16(木) 23:36:43.39 ID:7jO4e0lIo
P野「やっぱりな♂……でも、ステージ上ではそんな素振りを全然見せない。なんでだ?」

CER「え……そんなこと、ないと思いますけど……」

P野「いやいや、曲が始まったらちゃんと歌って踊れてるじゃないか。それだけで凄いんだよ」

CER「一生懸命やろうとしてるだけで……本当、いっぱいいっぱいですよ。そんな私でもここまで来られたのは、支えてくれる人が居るからだと思います」

P野「支えてくれる人、か……」

CER「ファンのみんなや、カーリーさん。中野さんもですし、それに、モバPさんも……」

P野「俺もか!? 嬉しいねぇ」

CER「ユニットの仲間じゃないですか、もちろんですよ」

P野「あっ、うん。そうだね……」

CER「……やっぱり一人じゃなくて、見守ってくれる人が居るからこそ、頑張れるんだと思います」

P野「そうか……そうだよな。じゃあ俺は、智絵里のために頑張るとするよ」

CER「えっ!? わ、私のため、ですか?」


「さあ、それでは登場していただきましょう。『神×聖』そして『チェリークローバー』の皆さんです!」

ワァァァァァァァ!


P野「ああ。それじゃ、行こうか」スッ

CER「あっ、ちょっと待ってください!」スーッ
41 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/16(木) 23:39:01.10 ID:7jO4e0lIo
P野「ん、どうした?」

CER「あの、これ、付けてくれませんか?」スッ

P野「ん、四つ葉のクローバー……のバッジか?」

CER「はい。元はストラップとかキーホルダーにするアクセサリーなんですけど、留め具を付けてバッジにしてみました」

P野(なるほど、この形……初めて会った時にくれた奴と同じ物から作ったんだな)

CER「胸のところに付けるといいと思います。……今さら言い出してすいません」

P野「いいよいいよ。かわいいワンポイントになるな」スチャッ

P野(直接サイバーZのコスチュームに付ける形になるが、まぁいいだろう)

ザワザワザワザワ……

P野「っと、早く出ていかないとマズイな。行こう!」ギュッ

CER「はいっ!」

タッタッタッタッ……ワァァァァァァァ!!!

P野「!」スタッ

P野(舞台袖からステージの中心まで一気に駆け抜けるつもりだった足が途中で止まった)

────────! パチパチパチパチ!

P野(観客席の方を向いた瞬間に何百何千もの視線が突き刺さって、そのままじっと見つめるしかなかったのだ)


P野「…………」ボーッ

CER「中野さん……?」

P野「! わ、悪い悪い」スタスタスタ


P野(智絵里が繋いでいた手を話してこちらを呼び掛けるまで、俺は完全に放心状態だった……)
42 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/16(木) 23:40:40.41 ID:7jO4e0lIo
P野(これがアイドルたちの見ている景色なのか! こんな、こんな大勢の前で、自分を見せてるっていうのかよ……)

「さあ両者出揃いました! 早速対戦に移りたいところですが、その前に意気込みを伺ってみましょう」

ワァァァァァァァ!

「ではまず、チェリークローバーのお二人から。中野くん、どうですかこの武道館の舞台というのは?」

P野「え? あぁいや、その……えっと、ですね、あの……」

P野(や、やばい……何も浮かんで来ない)

「…………」

P野「あ……どっ、だっ……」

CER「え、えっと! とっても大きな舞台だから緊張してるみたいです。私もですけど……」

「なるほど、それはそうでしょうね。ですが緊張に負けず、頑張ってください」

CER「はいっ!」

パチパチパチパチ!

P野「…………」ハァッハァッ

P野(動悸が止まらない……あの一瞬、会場全体が俺を見つめていた。頭が真っ白になって何も考えられなかった……)

「では続いて神×聖のお二人に伺いましょう」

ワァァァァァァァ!
「GO is GOD!」「GO is GOD!」「GO is GOD!」

GO「みんな静かにね。また進行しづらくなっちゃうから」

シーン……
43 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/16(木) 23:42:31.34 ID:7jO4e0lIo
「ありがとうございます(半笑い) お二人はもう、武道館なんて慣れっこじゃないですか?」

GO「どうだろう、ねぇ。分かんないね」

SIY「そんなこと無いですよ」

P野(この二人は、いや、俺以外はこの雰囲気の中でも全く動じていない! しかり受け答えして、表情も自然のままだ)

P野(落ち着け……せめて俺も笑顔ぐらいは作るんだ。いつもアイドルに言ってることじゃないか)ニコニコ

「──なるほどそうですか。それではいよいよ、対戦に参りましょう!」

「GO is GOD」「GO is GOD!」
ワァァァァァァァ!

P野(え、嘘もう!? まだ心の準備が出来てないぞ!)

「準備はいいですか? それではミュージック、スタート!」

P野(だからよくないっつってんじゃねーかよ……)

~♪

P野(なんて言ってる場合じゃねえ! 動かないとダメじゃないか!)スタタッタッ
44 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/16(木) 23:47:27.17 ID:7jO4e0lIo
P野(重要な出だしの場面は何度も見直した! 今の俺の身体能力なら動けないこともないはずなんだ!)キュタッキュッ

P野(だから踊れてるよな? ミス、してないよな……?)タッタタッ

ドサッ!

CER「きゃっ!」

P野「!」スッ

ギュッ,グルーッ! パッ……ヒュー! パチパチパチ

P野(あ、危ない……間一髪手を掴めた。そのままぐるっと回って、それっぽい動きに見えたはずだ……)

P野(アイドルのダンスってよりかは体育祭のフォークダンスになってしまったが、転倒するよりはマシだろう)スッタッシュッ

P野(しかし、クソッ! 頭では分かっているのにミスしてしまった!)

P野(このダンスは複雑に動く立ち位置を完璧にしてこそ、個々の振り付けが映えるっていうのに!)

~♪

P野(悔やんでる余裕はない。もうイントロが終わって歌いだしだ……ん? 歌……?)

CER「~~♪」

P野(しまった! ダンスの事ばっかりで歌をどうするかまったく考えてなかった!)

P野(というか、歌唱力までは真似できないんだからどうしようもない……ならもうどうにでもなれ!)スーッ

P野「パパのチンチン入ってる~♪ アタシのおまんこに入ってる~♪ 気持ちいい……」
45 : ◆8Zk9bbuSBI [sage]:2017/03/16(木) 23:48:30.80 ID:7jO4e0lIo
とりあえずここまで
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/17(金) 00:52:50.68 ID:xtdpT1JiO
ひっどい
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/17(金) 01:19:54.71 ID:v0NVHYIgO
アイアンマン!
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/17(金) 04:37:45.36 ID:wXykQzGTo
神より目立つなー!
49 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/18(土) 23:33:05.64 ID:SABy26oio
P野(やってしまった……いや、やってやったぞ! もうこのまま突き抜けるしかない!)~♪

キュッターン、スタッフッタッ

P野(歌とダンス、両方に意識を集中させなきゃいけないのが辛いな。普段の俺なら30秒でグッタリだ)

P野(それをアイドルたちはよくもまあ、二曲も三曲もやっていられるよな……)スタタッ

CER「っ!?」

P野「おっぶえ!」クルッ

P野(こんな時にのんきな事考えてるからまたミスをする! すまん智絵里!)

P野(でもまたすんでのところで回避出来た……変身のおかげで咄嗟の判断力も思考速度も上がってるらしいな)

P野(だったらそれを少しでもこのステージに活かすんだ! じゃなきゃGOになんて到底……)


「GO is GOD!」「GO is GOD!」「GO is GOD!」「やはりGOは神だ!」

GO「いいね、盛り上がってきてるね」

SIY「~♪」


P野(勝てるのか? 三位決定戦の演奏曲数はこの一曲だけ、それにたたでさえ、ここまでの俺のミスで差は開いてる)

P野(負けるわけにはいかないが、しかし何の策も無しに続けたところでこのままでは……)スタッキュッ

~♪

P野(もうサビに入る……何か俺にできる事はないのか? 今の俺だからこそ出来る……)
50 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/18(土) 23:33:54.33 ID:SABy26oio
CER「~~♪」キュッタッタッ

P野(ちょうどサビに入るタイミングで智絵里と俺が一直線に重なる。智絵里が前に出るから、俺の胴体が隠れる形だ)スタタッ

P野「……!」

P野(思い付いたぞ、今の俺だから出来る突拍子もない演出を!)

~♪

P野(今だ!)カチカチカチ

スッ,タッタッタッタッ……オォ~,パチパチパチパチ

CER「~♪ ……えっ!?」

P野「ほら、このまま続けないとご褒美はないんだぞ?」

CER「はっ、はいっ!」キュッ,ターン

P野(智絵里と重なって俺の体が隠れるわずかな時間、その一瞬で衣装替えを行ったのだ)

P野(ベルトを少し弄ればいいだけだから難しくはない。それでいてインパクトは大きかったはずだ)

P野(観客以上に智絵里が一番驚いてしまったのは誤算だったが、とにかくこれは使える! やれるタイミングでどんどんやっていこう)キュッ,タッシュッ
51 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/18(土) 23:34:33.93 ID:SABy26oio
スッ……スタッ,ワァァァ! foo↑

CER「! っ……~~♪」キュッターン

P野(また上手くいったぞ! 智絵里も合わせてきてるな!)


GO「へぇ……道理で、ねぇ」パチン!

「GO is GOD!」「GO is GOD!」「GO is GOD!」「GO is GOD!」


P野(しかし観客の反応が思ったより少ない。GO信者の勢いに押されてるのか? あるいは……いや、とにかくもう一度だ!)

シュッ,タッ,タタッ,タッタッタッ……

P野(よし、ここでまた一瞬すれ違うからそのタイミングで──)

CER「……っ」フラッ

P野(な、なんだ!? 俺の直線上に居たらぶつかっちまうぞ!)スッ

CER「……~♪」スッ,クルッ

P野(気付いていないのか……? いや、ミスしても俺みたいに大げさにはしないって事かな)

P野(……乱発すると飽きられるし、後半のここぞって時のために温存しておくか)

P野「形にとらわれるな~♪ 常識に縛られるな~♪ 人目、気にするな~♪」

「GO is GOD」「GO is GOD」「聖也くーん!」

P野(ちっ、馬鹿の一つ覚えのGO信者に加えてクソノンケの嬌声まで聞こえて来やがった。やはり来場しているファンの数がそもそも違うな……)

P野「このっ……!(焦り) 横ステップだ横ステップ!」キュッキュッキュッ

CER「っ!?」

P野(やばっ、またやっちまったか!?)キュッターン,クルッ

CER「……」スタッスッキュッ

P野(……あれ?)
52 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/18(土) 23:35:57.24 ID:SABy26oio
P野(今のは俺がミスしたのかと思ったけど、違う。智絵里が本来停止する位置を越えて俺に近づいてきたんだ)

CER「~♪、……」スッタッタッ

P野(どことなく歌声もか細くなってきたんじゃないか……? どうしたんだ一体)

「GO is GOD」「GO is GOD」「GO is GOD」

P野「……!」

GO『気付いたかな?』

P野「っ!?」スタッ

ドサッ!

CER「ひゃっ!」フラッ

P野(や、ヤバい、倒れる!?)

ギュッ,スーッ!

CER「っ……」ダキッ

P野「ちょっ……!?」ギュッ

ワァァァァァァァッ! ヒューヒュー!

P野(ここで一番盛り上がるなんて下世話だぞ観客!)

GO『熱いねぇ。いきなり抱き合うなんて』

P野(お前がいきなり話しかけてきたから! ……あれ?)

GO『ふふっ、いちいち反応が面白いね君は』

P野(こいつ、俺の中に勝手に挿入ってきやがった!?)
53 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/18(土) 23:40:12.14 ID:SABy26oio
CER「……」フラーフラー

P野(これが噂に聞く洗脳なのか? 答えろ!)

GO『人聞き悪い言い方しないでよ。俺はただこう、ちょっと背中を押してるだけ』

P野(ふざけんな! 今すぐ智絵里にかけた洗脳を解け!)

GO『解くとか解かないってモノじゃないんだよねぇ。だって後押ししてるだけだから』

P野(な……じゃあ、智絵里はもう……)

GO『ふふ、それはどうかな?』

P野(は? っていうかおい、話しかけてない所まで勝手に覗くな!)

GO『ゴメンゴメン、面白いからさ。じゃあこの辺でお喋りは止めにしようか。君には効かないみたいだしね』

P野(俺には洗脳が効かないってことか? これも変身してるおかげだろうな……)

GO『最後に言っとくけどさ、君たちいつまで抱き合ってるつもりなの?』

P野(えぇ? ……あっ!)ギュ

CER「……」

GO『あ、後さ。このままだとつまんないから、もうちょっと何か抵抗してよね。勝つつもりなんでしょ? 一応』

P野(なんだテメエ……♂ 言われなくても絶対勝つ! お前も呑気に話しかけてる暇があったら、自分のステージに集中しやがれ!)

GO『そう? じゃあ───』スッ

ウオオオオオ! ワアアアアアアアアア!
「GO is GOD!」「GO is GOD!」「GO is GOD!」「GO is GOD!」

P野(あの野郎、とことんコケにしてくれる……もう許さねえからなぁ?)
54 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/18(土) 23:43:03.95 ID:SABy26oio
~♪

CER「あ……ご、いず……」

P野(まずは智絵里をどうにかしなないとな。っていうか離れなきゃダメだろいい加減!)ズイッ

CER「ぁ、っ……」フラッ

P野「おっ、おい!?」キュッタッ

オォ~foo↑

P野「お前社交ダンスやってんじゃねえんだぞ! しっかりしろ!」

CER「あっ……私、私っ……」

P野「歌えよ智絵里!」

CER「……~♪」タッタッキュイッ

P野(正気に戻ったか? ……まだだな。上の空のままとりあえずパフォーマンスを再開したに過ぎない)

P野(GOは俺にやったように智絵里にも何かを語りかけたんだろう。恐らく、内心抱えていた不安や緊張を煽るような)

P野(だったら、逆の事をやってやるまでだ……!)

キュッ,タッタッキュッターン

P野(今度は俺が智絵里の前に出る形で一直線に重なる。そのタイミング!)

P野「っ!」クルッ,グイッ

CER「えっ……!?」スッ

P野(俺が突然振り向いて智絵里の背中に手を回す!)

CER「な、中野さん……」

スーッ……

CER「ぁ、いやっ……!」ツムリ

P野(顔を近づける俺に智絵里が目を閉じたその一瞬!)カチカチ
55 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/18(土) 23:55:05.30 ID:SABy26oio
カチッ

「お前、何下手なパフォーマンスしとんねん」

CER「え……?」パチッ

「歌もダンスも全然レッスン通り出来てないやん! どうしてくれんのこれ!」

CER「すっ、すいません……」

「実力で負けてるかどうかは別として、自分の全力を出し切ってないのに勝てる訳がないやろ!」

CER「…………」

「他の全部負けててもええ。けどな、GOを倒すっていうんならせめて、気持ちで負けるなや!」

CER「気持ち、で……」

────────

カーリー『気持ちで負けとる奴がどうやってトップアイドルになるねん!』

────────

CER(そうだ……私、気持ちだけは負けてないってあの時言えた。なのにっ……!)

「ええか、最後まで諦めんなよ。お前と中野くんなら絶対勝てる」

CER「はいっ! カーリーさ──」

カチッ

P野「自由に恋しよう~♪」タッタッキュッ

CER「あ、れ……?」

ワアアアアアアアアアッ!
「GO is GOD!」「GO is GOD!」「GO is GOD!」

CER(……きっと、私が不甲斐ないからだ。最後まで、精いっぱい頑張らなきゃ!)キュッターン

P野「ほら変態アイドル行くぞ」スッ

CER「はい! パパのちんちん入ってる~♪ わたしのおまんこに入ってる~♪ 気持ちいいよぉ……♪」
56 : ◆8Zk9bbuSBI [sage]:2017/03/18(土) 23:55:31.47 ID:SABy26oio
とりあえずここまで
57 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/20(月) 23:52:08.55 ID:9dzWcQCRo
P野(ひどいエセ関西弁だったが何とか成功したみたいだな。智絵里の動きが戻った)

P野(っていうかそんな汚い歌詞歌わなくていいから……)


「GO is GOD!」「GO is GOD!」「GO is GOD!」
ワアアアアアアアアア!

P野(問題はここからどうするかだな。正直、この辺の振り付けは覚えてない……)

P野(雰囲気を崩さないようそれっぽく動いてるが、審査員は騙せないだろうな……)

P野(そもそも、あれだけミスしてしまった以上はこのまま続けても勝てる可能性は低い)

P野(智絵里とカーリーには悪いが、もう元の演出は無視するしかないもな……)キュッターン

CER「……? ~♪」スッターン

P野(さっきから適当に動いてるのは智絵里もとっくに気付いてるだろうな……クソっ、あんな事言っておいて俺が足引っ張ってどうする!)

P野(やはりここはもう一度衣装チェンジでアピールするか? いや、まだ早いような気もする)

P野(それにまず、振り付けが分からないから智絵里に重なるタイミングがはかれないんだよなぁ)
58 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/20(月) 23:53:34.74 ID:9dzWcQCRo
P野(だったらどうする……いや待て、なにも変身だけがベルトの機能じゃない)

P野(変声機能! これを使って七色の声を操り、一気に歌の評価を上げる!)カチカチ

P野「あ~♪(RN)、あ~♪(CHR)……あ~♪(UDK)」

CER「!? ……~♪♪」

P野「あ~? あぁ↑ あぁ↓」

P野(……やっぱダメだこれ、イメージがはっきりしてないから思ったような声が出せない)

P野(第一、出せたとしても歌ってるのが俺じゃあね……まるでカラオケで無理して声張り上げてる奴みたいだぁ……(直喩))

P野(地声が一番! ラブアンドピース!)カチカチ

P野「~~♪ …………あっ!」

P野(中野くんの声に戻さなきゃいけないのに俺の声に戻しちゃってたよ、ヤバいヤバい)カチカチ

CER「……」チラッ

P野(智絵里が一瞬こっちを向いた気がするが、気にしないでおこう……)
59 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/20(月) 23:54:52.53 ID:9dzWcQCRo
P野(しかしやってしまった、今のはただボーカル評価を下げただけだぞ……GOに追い付くどころか自分から離れているじゃないか)

P野(変声が駄目ならやっぱり変装しかない。ここまで来たら衣装だけじゃなくて、顔も他のアイドルにチェンジするか?)

P野(それかいっそ、逆に変装を解いてサイバーZとして踊るとか……どっちもダメだな、あまりに突拍子が無さすぎて観客が引いてしまう)

~♪

P野(間奏に入って後は最後のサビを残すのみか……クソっ、何も思い浮かばない!)

CER「……」キュッタッタッ,クルッ

P野「……すーっ、はぁーっ」スタッ

P野(諦めるな! 智絵里は一生懸命やってる、俺にだってまだ何か出来ることがあるはずだ!)

P野(発想を変えよう。元の演出は無視するしかないと決めつけてたが、逆にそれをもっと活かす方法があるんじゃないか?)

P野(ずっと滅茶苦茶な歌詞で歌ってたが本当はこの曲、複雑な恋愛模様を歌った名曲なんだよなぁ……)

P野(その歌詞を表現するため、俺と智絵里がすれ違ったり重なったり、とにかく立ち位置が細かく変わる振り付けになっているんだろう)

P野(しかし、俺が正しく踊れていないせいで表現しきれていない! だったら、それをベルトの力でなんとか──)

GO『必死に考えてるところ悪いけどさ、もう決めちゃうよ? 勝負』

P野「!?」
60 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/20(月) 23:56:06.93 ID:9dzWcQCRo
P野(あの野郎また頭の中に! GO! 一体何をするつもりだ!)

~♪

P野(おい、無視するなよ!)


「GO is GOD!」「GO is GOD!」「GO is GOD!」

GO「~♪ いいね、みんな今日は盛り上がってるじゃん」

ワアアアアアアアアア!
「GO is GOD!」「GO is GOD!」

GO「じゃあ今日はちょっと、サービスしちゃおうかな?」スッ

ザワザワザワザワザワ!!!


P野(なんだ、会場全体がどよめいてるぞ……よく聞こえなかったが、GOが何かするのか?)

「GO is GOD!」「GO is GOD!」「GO is GOD!」

GO「よし、じゃあ──」

SIY「君はGOの裸をみて……ゴー、ゴッ、ゴー!」

GO「~♪」ヌギッ


ウオオオオオオオオオオオオオオ!!!!


P野(ぬ、脱いだ! 脱いだのか!? そもそも脱ぐって何をだ!?)

ワアアアアアアアアアアアアアア!!

P野「────!」

P野(だ、駄目だ、声が歓声で完全にかき消された。もう演奏が聞こえないレベルだぞ!?)

GO「う~ん、いいねぇ。涼しい。聖也も脱ぎなよ」

SIY「はい」ヌギッ

キャアアアアアアアアアアアアアア!!!

P野(これがGOの本気か……まったく、ホモアイドルは脱ぐことしか考えないのか……)

P野(なんて考えてる場合じゃない。こっちも何かしないと、もう曲が終わってしまう!)
61 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/21(火) 00:00:13.04 ID:Ddp1BQ4Ho
~~♪

P野(このままじゃマズイが、しかし、一番重要と言ってもいい最後のサビは優先して振り付けを覚えた。だから動ける!)タッタタッスタ

CER「~♪」タッタッキュタ

P野(でもラスサビは立ち位置移動がなく、横に並んで踊るだけ……変装機能は使えない)スッタッタッ

P野(しかし最後の最後、アウトロではステージの両端へそれぞれ移動した俺と智絵里が歩み寄り、ステージ中央ですれ違う、という動きがある。何かするそこがラストチャンスだ)

P野(どうする……衣装チェンジするとしたらどんな衣装だ? 最初の衣装に戻すか? いや、それじゃ何のアピールにも───)

ワアアアアアアアアアアア!ギャアアアアアアアア!

P野(GO信者の歓声がうざってぇ!)

CER「────、…………」スタッ,スタ,スタ……

P野(まずい、歌詞が終わった。もう考えてる時間もない!)スタ、スタスタ……

P野(何をしてやればいい、何を……ッ!)

スタッ、クルッ,スタ、スタ、スタ……

P野「くそっ……」ボソッ

CER「────」ニコッ

P野(智絵里が、笑った……?)

スーッ

P野「……!」カチカチ



「そこまで!」
62 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/21(火) 00:08:14.61 ID:Ddp1BQ4Ho
ワアアアアアアアアアアアッ!
「GO is GOD!」「GO is GOD!」「GO is GOD!」「GO is GOD!」「GO is GOD!」

「両者ともに大変素晴らしいステージでした! それでは、審査の結果が決定するまでしばらくお待ちください」

GO「んしょっと、みんなあんまり騒ぎすぎないようにね」スルスル

「神々しい……」「やはりGOは神」

SIY「」スルスル

キャーワーキャワー!

SIY「あ、みなさんも他のお客さんの迷惑にならないようにお願いします……」

ザワザワザワザワザワ……


P野「智絵里……」

P野(ライブが終わる寸前、俺は自分のものではなく智絵里の衣装を変えようとした)

P野(しかしそんな咄嗟に良い衣装が思い付くはずもなく、結果的には、何も出来なかったのだ)

CER「どうしたんですか?」

P野「何度もぶつかったり、振り付けを間違えたり……足を引っ張ってばかりだった。ごめんな、本当」

CER「そんなことありません! 今日ステージに立てたのも、ここで最後まで頑張れたのも……中野さんのおかげですから」

P野「そう、か……すまん、気を遣わせて」

CER「謝らないでください。私だって、駄目なところはいっぱいあったと思いますから」

P野「……結果を待とうか」

CER「……」コクッ
63 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/21(火) 00:14:09.94 ID:Ddp1BQ4Ho

……

「はい、ただいま審査が終了し、三位入賞となったユニットが決定いたしました」

ザワザワザワザワ……ゴーイズゴッドゴーイズゴッド……

「審査員らによる選評がありますので、それを読み上げたのち、LIVEバトルの勝者を発表いたします」

P野(俺と智絵里のステージ、審査員の目には果たしてどう映ったか……)

「選評。『神×聖』『チェリークローバー』ともに全体的なパフォーマンスのレベルは非常に高かった。神×聖はボーカル、ダンス、ビジュアルという三要素に大変秀でており、チェリークローバーはそれ以外の演出面、衣装替えなどのアピール面で優れていたという印象だ」

「さて、勝敗を決定するにあたってはまず、観客の反応を参照した。ライブ中最大の盛り上がりを見せたのは、神×聖の二人が上半身の衣装を脱いだ場面であるる。このアピール自体は技術の要った物ではないが、会場全体が震える程の盛り上がりは大きく評価出来る」

「次に注目したのは、ライブを通して見られたミスの数である。神×聖のパフォーマンスにははっきりミスと言える物は見られなかった。対して、チェリークローバーは全体通してダンスのミスが非常に目立っていた。これは残念な点だが、しかし、ミスを何度も重ねてなお雰囲気を崩さず歌いきったのは一定の評価に値する」

「選評は以上です。これらの観点から審査が行われ、勝者が決定しました」

P野(衣装替えの評価は高かったようだが、やはりミスが大きく響いてるようだな……)

「それでは、結果を発表いたします。アイドルアルティメイト三位決定戦、勝者は────」

ザワザワザワザワザワ……


「『神×聖』!」


ウオオオオオオオオ!パチパチパチパチパチパチ!
「GO is GOD!」「GO is GOD!」「私にとって彼はアポロンでした」「聖也くん最高!」「GO is GOD!」

「GO is GOD!」「GO is GOD!」「GO is GOD!」

P野(その歓声は、GOが右手を振りかざして信者たちを止めるまで続いた……)
64 : ◆8Zk9bbuSBI [sage]:2017/03/21(火) 00:14:35.98 ID:Ddp1BQ4Ho
とりあえずここまで
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/23(木) 20:53:19.18 ID:OK4Vg6ZAo
そのための、右手......あとそのための拳?
66 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/23(木) 23:45:34.74 ID:E3Eeqm9so
控え室

P野(ここに戻ってきて改めて、自分たちは負けたのだと実感した)

P野(今まで多田野やナオキたちが敗退するのをすぐ近くで見ていたのに、どうやら俺はその気持ちを理解出来ていなかったらしい)

P野(この気持ちは後悔や虚脱感、空しさに悲しみが混じりあったとてつもない絶望だった)

P野(そして更に言えば、今この場には普段一番近くでアイドルを見守っている人物も居ない。慰めも、健闘を讃える言葉もない)

P野(沈黙だけがただただ流れていた……)

P野「……」

CER「…………」チラッ

P野「……?」

CER「……」ウツムキ

P野(もの悲しげな表情をした智絵里が、さっきから俺の顔を見つめては目を逸らしている)

P野(もしかしたら、いい加減何か話しかけてほしいのかもしれない……もしくは、話すのをためらっているか)

P野(いずれにせよ、いつまでもこうしちゃいられないよな……)
67 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/23(木) 23:47:46.83 ID:E3Eeqm9so
P野「あの、さぁ……」

CER「え、あ……はい」

P野「カーリー……プロデューサさんに結果を伝えないとな」

CER「あ……そうでしたね」

P野「どうする、直接会って話すか?」

CER「そうですね。病院に行って……」

P野「じゃあ着替えてすぐに行こう。俺はそっち使うから、智絵里は反対側のフィッティングルームを使ってくれ」シャーッ

P野(カーリーには色々面倒なことを聞かれるかもしれないが、まぁ仕方ないか……)カチカチ

CER「あっ……あのっ! 病院に行くのは、私一人で大丈夫です」

P野「え?」シャーッ

CER「いや、あの……え、もう着替え終わったんですか?」

P野「あっ……う、うん。早着替え早着替え」

CER「……ずっと気になってたんですけど、中野さん、いつもは私の事を呼び捨てにしませんよね」

P野「!!!」

CER「呼び方もそうですけど、喋り方も、いつもは丁寧な感じなのに、今日は、ちょっと」

P野(や、ヤバい……智絵里はやっぱり、相当な違和感を覚えていたようだ……)
68 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/23(木) 23:49:19.26 ID:E3Eeqm9so
P野「は、はは……今日はほら、本番当日で気が立っててさ……です」

CER「そうなん、ですか……?」

P野「……」

P野(ステージが終わった今、これ以上中野くんのフリをしても仕方ないかもしれないな……)

P野(智絵里をこのまま騙すのも気が乗らないし、第一、俺が本物じゃない事は次期に分かるだろう)

P野(だったら今、はっきりと真実を伝えた方が──)

CER「……中野さんは中野さんですよね。変な事言ってごめんなさい」

P野「あ、いやそうなんだけど、そうじゃなくて……」

CER「いいんです。……あの、中野さんはもう、アイドル辞めちゃうんでしたよね?」

P野「え? や、まぁ、多分」

CER「そうですよね。改めて、今まで一緒に活動してくれてありがとうございました」ペコッ

P野「あ、あぁ。こっちこそありがとう。それより、病院には一人で行くって……」

CER「……ワガママです。今の気が立ってる中野さんを見たら、プロデューサーさんビックリして傷が開いちゃいますよ。ふふっ」

P野「智絵里……」

P野(何かを悟っている、そんな言い方だった)
69 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/23(木) 23:52:10.28 ID:E3Eeqm9so
CER「ダメ、ですか? やっぱり……」

P野「いや全然! ワガママなんて言われたら聞くしかないよ」

CER「ありがとうございますっ」

P野(まぁ、そっちの方が助かるしな)

P野「そしたら、俺はとっとと帰るかな。一人で病院まで行けるか? 迷わない?」

CER「あっ、当たり前じゃないですか!」

P野「冗談だよ冗談、ハハハ! それじゃあ、さよなら──」クルッ

CER「あっ、ちょっと待ってください! まだ話したいことがあるんです」

P野「ん?」

CER「今日のこと……勝てなかったのは、本当に悔しくて……まだまだダメだなって分かって、とても悲しかったですけど……それでも──」

CER「それでも私、あなたと一緒に歌えて本当に楽しかったです」ニコッ

P野「……ああ、俺もだよ。ありがとな」

CER「それと、あの、えっと……」

P野「……? まだ何かあるのか」

CER「はい。ちょっと変なことですから、もし違ったら全然、聞き流しちゃってください」

P野「なんだよ、遠慮せずに言ってくれ。これが最後みたいなものなんだからさ」

CER「じゃあ、あの……もし、中野さんが中野さんじゃないとしたら──」

P野「!」ビクッ

CER「もしそうだとしたら、私のためにこんなことまでしてくれて……本当に、本当に、ありがとうございます」

P野(やっぱりバレてるじゃないか(呆れ))

CER「もう感謝してもしきれませんけど……いつかまた会えたら、お礼させてください」ペコッ

P野「ハハァ……別に気にしなくていいんじゃないかな。そんなバカはきっと相当のお人好しだからさ、今の言葉だけで他に何も要らないよ」

CER「そうですか? でも──」

P野「あ~、この話はもう終わり、閉廷! 大体そんな奴居ないから、ここには智絵里と俺しか居ないの」

CER「……はい。やっぱり変でしたよね、えへへっ」

P野「(察したような笑みは)やめてくれよ……恥ずかしくなるじゃないか」

CER「ふふっ。それじゃあ中野さん、また」

P野「ああ、またな。智絵里」

ガチャ……バタン
70 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/23(木) 23:53:42.27 ID:E3Eeqm9so
スタスタスタ……

P野(智絵里、ちゃんと前を向けてるじゃないか……カーリーも中々いいプロデュースしやがる)

P野(っと、それはひとまずおいといて、早く凛たちの所に戻らないとな!)タッタッタッ

P野(今何時だ? 控え室に戻って来た後時計を見てなかったが、ステージが始まったのは15時だから、今は大体16時過ぎか)

P野(まずいな……凛たちのレッスンは17時まで。今から行ってギリギリ間に合うかどうかってところだ……)

P野(折角の機会なのに悪いことしちまったなぁ。またどこかで時間を作って、ちゃんと見てあげないと)タッタッタッ

P野(それにしても、なんだか身体が重い。さすがに疲れたか……)

ズキッ

P野「!!」スタッ

P野(な、なんだ……? 急に頭が、脚も震えだしたぞ……)ガタガタ

ピキッ!

P野(立っていられない……どうしちまったんだ、俺……)ガタッ

P野「……!」

P野(そうだ……変身には、いわゆるタイミリミットがあるんだった。俺の身体が耐えきれなくなったときに、この激しい痛みが襲ってくる……)

ズキッ!

P野「アァ!(スタッカート)」

P野(気を抜いたら、マジでイっちまうぞこれ……)バタン
71 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/23(木) 23:54:51.06 ID:E3Eeqm9so
P野「はあっ、はあっ……」

P野(思えば……本場前からやけに体がダルかったのも、ベルトのサインだったのかもしれない……)

P野(しかし、前テレビ局で変身した時は一時間ちょいしかもたなかったんだから、変身してられる時間はかなり延びたんだな……)

P野「なんて、言ってる場合じゃないか……っ!」スタッ

P野(このまま気絶したらいつ目が覚めるのか分からん……下手すりゃ二日三日じゃ済まない可能性もある)スタ、スタ……

P野(それを回避する方法は一つしかない……810プロに行って、田所にツボ押ししてもらうんだ)スタ,スタ……

P野(こんな急に戻ったら厄介な事になるのは間違いないが、もうそれしかない)スタッ

ギッ

P野「あぐっ……!」バタッ

P野(く、くそ……力が入らん、立てない……)

P野「ハアッ、ハア……はあっ……」

P野(意識が遠くなっていく……せめて、凛たちに連絡しなくては……)ムズムズ

P野「スマホ、どこだ……あれ……」

P野(あぁ、スーツのポケットに入ってるから変身したままじゃ取れないのか……なら、もう──)

P野「変身、解除……!」

ピカーッ!

P「っ……っく、が……っづ、で、電話……」スッ

ビギッ!

P「ぐぁっ! はあっ、あ、っく……」

P「…………」

P(すまん、凛、遠野、まゆ……)ガクッ
72 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/23(木) 23:56:19.16 ID:E3Eeqm9so

……
スタスタ……

CER(やっぱり、モバPさんだったのかな……でも、どうやって中野さんになったんだろう)

CER(衣装を一瞬で着替えたり、声が変わったり、不思議なことばかり。カーリーさんにはなんて言えばいいのかな)

CER(でも、今ならきっと……言いたいことをはっきり言えるよね)



ザワザワザワ……

CER(……? 何かあったのかな)スタスタ

「なんで部外者がこんな所で倒れてるの?」「知wらwなwいwよww」「あく救急車呼べよ」

CER(人が倒れてる……?)スッ

CER「……!」ガタッ

「ん? あ、智絵里ちゃん。ごめんね、ちょっと人が倒れてて──」

CER「う、嘘……なんで……」ガクガク

「あれ、もしかしてこの人の事知ってる? 俺もどっかで見たことあるんだけど」
「いいからあく救急車呼べよ」「お前が呼ぶんだよ!」「ん、おかのした」

CER「っ……モバPさん、モバPさんっ!」スタッ、ユサユサ

P「」

「揺らしたらダメだよ! 今救急車と人呼んだから」「AEDも持ってきてもらうからな?」

CER「どうして……カーリーさんも、中野さんも、私の大事な人、みんなっ……!」グスッ

P「」チーン


……
………
73 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/23(木) 23:57:47.76 ID:E3Eeqm9so
364プロ

TDN「……だから、お前はアイドルを続けた方がいいって何度も言ってるだろ」

DB「フン、そんな上辺だけの言葉」

TDN「あのなあ大坊……」

ガヤガヤガヤ

MUR「まるでホモカップルみたいだぁ……(直喩)」

DB「おい! 今なんて言った!」

MUR「あっ、なんでもないゾ」

DB「聞こえているんだぞ……冗談も大概にしろ」

TDN「そんなに怒るなよ、短気は損気だぞ。……ですが三浦さん、僕はゲイではありません。これだけははっきりと真実を伝えたかった」

MUR「そう……(無関心)」

プルルルルルルル!

MUR「おっ。(ガチャ) もしもし? ……病院? いや、ここは364プロだゾ。間違えるなよな~」ガチャ

TDN「間違い電話ですか?」

MUR「ここをどこかの病院と間違えてるんだゾ。おかしい人も居るもんだなぁ」

DB「……相手が名乗っただけじゃないのか?」

TDN「もし病院からわざわざかけてきたなら、何か重要な要件だったのでは……」

MUR「あっ、そっかぁ……(池沼)」

プルルルルルルル!

TDN「出てください!」

MUR「はいっ! ……もしもし、はい、364プロ社長の三浦だゾ。はい、は……え?」
74 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/24(金) 00:00:27.06 ID:gxNiLW6Oo
MUR「そ、それはどういうことだゾ!? ……え? はい、はぁ。それは俺もよく分からないゾ……」

TDN・DB「……?」

MUR「……はい、はい、分かったゾ。ありがとうございます」ガチャ

TDN「何かあったんですか?」

DB「多田あたりが事故にでも遭ったか」

TDN「そういう事を言うな大坊!」

DB「……」ケッ

MUR「……プロデューサーが倒れたんだゾ」

DB「……何?」

MUR「プロデューサーが、武道館の通路で倒れていたんだゾ! それで救急車で運ばれてきたって!」

TDN「プロデューサーさんが倒れた!?」

DB「待て、武道館だと? あいつはどうしてそんな所に居るんだ」

MUR「それが病院側もよく分からないみたいなんだ……とにかく、プロデューサーは意識不明の重体らしい」

TDN「そんなにひどいんですか!?」

MUR「ああ。俺はすぐ病院に向かうから、大坊と多田野はイニ義の所に行って、凛ちゃんたちに事情を説明して連れてきてくれ」

TDN「分かりました」

DB「なんで俺がそんな事を……」トボトボ

TDN「口ではそう言っても体は正直みたいだな」

DB「チッ……早くしろ、なるべく飛ばす」

TDN「なんという病院に運ばれたんですか?」

MUR「聖バビロン大学病院だゾ。場所は分からないからそっちで調べてくれ、俺はタクシーで行く」

TDN「分かりました。大坊、急ぐのはいいがぶつけるなよ」

DB「分かってる! ごちゃごちゃ言うならお前は歩いていけ!」


……
75 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/24(金) 00:01:38.07 ID:gxNiLW6Oo
イニ義事務所

剛竜馬「ショア! ショアシャア!」

RN「はあっ、はあ……今日は終わりだって」

遠野「あ、ありがとうございました……」ゼエゼエ

MY「……」ハァー

RN「……まゆ?」

MY「え……? あっ、どうかしましたか?」

RN「いや、別に……お疲れさま」

MY「はい、お疲れさま……はぁ」

遠野「プロデューサーさん、結局戻ってきませんでしたね……」

MY「そうですね……はぁ」

RN「……」

RN(プロデューサー……もしかしたらまた何か、変な事に巻き込まれてるんじゃ──)

ガチャ

RN「!」クルッ

イニ義「よお、姉ちゃん」

RN「なんだ、またアンタか……」

イニ義「あぁん? いくらなんでもそりゃねえだろ」

RN「……ごめん、ちょっと疲れてるみたい」

MY「イニ義さん、プロデューサーさんは見つかったんですか?」

イニ義「いや、悪いがまだだ。あの野郎、本当にどこほっつき歩いんてんだか」

MY「そうですか……」
76 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/24(金) 00:05:29.97 ID:gxNiLW6Oo
トントン,ガチャ

RN「今度は誰?」

タカダキミヒコ「失礼します」

イニ義「おう、どうしたタカダ。モバPが見つかったのか?」

タカダキミヒコ「それが──」

スッ,スタッ

TDN「失礼します」

RN「多田野……? どうしたの」

TDN「今からモバPさんのことを話します。皆さん、落ち着いて聞いてください」

イニ義「なに?」

MY「プロデューサーさんに何かあったんですか?」グイッ

TDN「……モバPさんは今、聖バビロン大学病院という所にいます。とある場所で倒れているのが見つかって、救急車で運ばれたそうです。先ほど事務所に電話がありました」

RN「!!」

遠野「そ、そんな……」

イニ義「おい、そのとある場所っていうのはどこだ」

TDN「倒れていた場所は、あの武道館だそうです。どういうことなのか、よく分からないのですが」

MY「そんなことよりっ! プロデューサーさんは……モバPさんは大丈夫なんですか!?」

TDN「電話では、意識不明の重体だと……」

MY「な……っ」フラッ

RN「! まゆ、大丈夫?」

MY「っ、はい。ごめんなさい……」

イニ義「どうなってやがる……おいタカダ! すぐに車を出せ!」

タカダキミヒコ「はい」

タッタッタッ……スタッ

DB「……お前らも俺の車に乗れ。病院に行くぞ」

遠野「は、はい……」

MY「……」スタ,スタスタ……

RN「まゆ……」

TDN「凛さん、プロデューサーさんから何か事情を聞いていませんか? なぜ、そんな場所に居たのか……」

RN「……分からない。とにかく、行ってみないと」

TDN「そうですね……」

RN「プロデューサー……」

RN(どうして、悪い予感がした時に限って……!)
77 : ◆8Zk9bbuSBI [sage]:2017/03/24(金) 00:05:55.11 ID:gxNiLW6Oo
とりあえずここまで
78 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/25(土) 23:46:31.16 ID:9u3L5pvJo
聖バビロン大学病院

トントン,ガララララッ

MUR「おっ、みんな。ちょっと──」

MY「プロデューサーさんっ!」タタタッ,ギュッ

P「……」

ISHR先生「こら、離れなさい。彼は絶対安静でなければいけないんだ」

RN「まゆ、落ち着いて。お医者さんの話を聞こう」

MY「……はい」スッ

MUR「病院では静かにしなきゃダメだゾ~。……多田野、大坊、連れてきてくれてありがとな」

TDN「はい。しかし社長、あの子は……」

MUR「ん?」

DB「そいつだ、そいつ。名前を忘れたが、どうしてここに居るんだ?」スッ

RN「……智絵里!?」

MY「緒方、智絵里……?」クルッ

CER「……っ」ビクッ
79 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/25(土) 23:48:05.56 ID:9u3L5pvJo
MUR「そんなに震えなくても大丈夫だゾ。智絵里ちゃんはただ付き添って来てくれただけなんだ」

TDN「付き添い? ……そうか、そういえば武道館では今日、IUの三位決定戦が行われたんでしたね」

CER「か、会場から出る途中に人だかりができていて、なんだろうって思ったら、モバPさんが倒れてたんです……」

RN「それで自分から付き添うことにしたの?」

CER「は、はい……他に人が居なかったので……」

RN「……」

RN(プロデューサーはほぼ間違いなく今日ずっと智絵里と一緒に居たはず……嘘をついている? そうは見えないけど……)

MUR「智絵里ちゃんのおかげで事務所への連絡が早かったんだゾ~」

MY「そうだったんですね。ありがとう、智絵里ちゃん」

CER「い、いえっ、私は……」

MY「?」

RN(事情は話すに話せないってこと、かな……)

遠野「そういえば、イニ義さんたちは来ていないんですか? 僕たちより少し早く出ていったはずですけど」

MUR「来てないゾ」

遠野「あれ、おかしいですね……」

RN「気にしても仕方ないよ。それより、先生、プロデューサーの容態を詳し教えて」

MUR「そうだよ(便乗) 重体って、頭でもぶつけたのか?」
80 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/25(土) 23:50:20.27 ID:9u3L5pvJo
ISHR先生「いえ、外傷はありません。脳も検査しましたが、異常は認められませんでした」

MUR「じゃあプロデューサーはどうしていきなり倒れたんだ……?」

ISHR先生「それをこちらがまだ把握出来ていないからこそ絶対安静なのです。今のところ生命活動は安定していますが、容態が急変する可能性も十分に考えられます」

TDN「単なる過労という可能性はないんですか?」

ISHR先生「無いとは言い切れませんが、身体に慢性的な疲労を感じていたことを示すものはありません」

RN「いずれにせよ、いつ目覚めるかは分からないってこと……ですか」

ISHR先生「そうですね……検査をしながら様子を見るしかありません」

MY「そんな……」

ISHR先生「一つ言えることは、彼は本当に突然倒れたということですね。何者かに襲われたり、どこかケガをした拍子に倒れた……ということはありません」

MUR「そうですか……分かったゾ」

ISHR先生「では、私は一旦失礼します。くれぐれも彼を触ったり動かしたりはしないよう、よろしくお願いします」

ガララララッ,スタスタ……
81 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/25(土) 23:51:42.71 ID:9u3L5pvJo
DB「……明日からどうするんだ、こいつは一人で九人の面倒を見ていたんだぞ」

TDN「大坊! 今そんなことを言わなくてもいいだろう」

DB「いくら悲しんでもこいつが目を覚ますわけじゃないんだぞ。愛の力でもな」

MY「っ……!」ジッ

DB「っ、やべぇよやべぇよ……」ビビリ

RN「まあまあ。大坊の言うことにも一理あるよ。プロデューサーだって、自分の心配よりは仕事を優先して欲しいはず」

MUR「そうだよ(便乗) それだけに困るんだよなぁ、人手が足りないゾ……」

ガララララッ!

RIN「プロデューサーさんが倒れたってほん……っ、プロデューサーさん!?」

DB「うるせぇ!」

NTK「病院では静かにな、だりー」スタスタ

RIN「ご、ごめん。でも驚くよ、こんなの……」

NTK「……ああ」

KMR「まさかこんなことになるとは……」
82 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/25(土) 23:53:16.43 ID:9u3L5pvJo
TDN「社長が連絡したんですか?」

MUR「当たり前だよなぁ?」

RIN「プロデューサーさんは大丈夫なんですか? 一体何が……」

RN「今のところ、いつ目が覚めるかは分からないって」

RIN「えっ!? 嘘、そんなにひどいの……?」

遠野「原因が分からないそうですから、ひどいかどうかはなんとも」

KMR「それはまた……もどかしいですね」

RIN「プロデューサーが自分で起きるのを待つしかないんだ……」

CER「っ……私、私が……」

KMR「……誰か、何か言いましたか?」

CER「…………」

RIN「あれ? この子、緒方智絵里ちゃん……?」

RN「あっ、智絵里はプロデューサーに付き添ってここまで──」

ドサッ

RIN「うわっ、何、誰……?」クルッ

イニ義「どきな」

RIN「はっ、はいぃっ!」スササッ

TDN「ずいぶん遅れたみたいですが、どうしたんですか?」

タカダキミヒコ「あっ、いえ、なにぶんこういう風貌ですから」

DB「そういうことか」ククク

イニ義「あぁ……?」ギロッ

DB「ヒッ……」ビビリ
83 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/25(土) 23:54:57.44 ID:9u3L5pvJo
イニ義「野郎の容態は?」

RN「いつ意識が戻るかは、分からない」

イニ義「んだと……!」スタッスタッ

RN「!? やめて、プロデューサーは絶対安静なの!」

イニ義「てめえ勝手で仕事をフケた挙句このザマだぞ……ふざけんじゃねえ!」ギュウッ

RIN「ちょっ、ちょっと!」

遠野「せ、先生を呼んできた方がいいんじゃあ」

DB「警察の間違いだろ……」

ガタッ!

CER「やめてください! モバPさんは、何も悪くないんですっ!」

イニ義「あぁ……? なんだ嬢ちゃん、見ねえ顔だな」

タカダキミヒコ「兄貴ぃ、364プロのアイドルじゃないですよ。渋谷さんたちと同じでIUに出場していた、緒方智絵里というアイドルです」

イニ義「ほぉ……それで、よそ者が何を知ってるっていうんだ? あぁん?」ギロ

CER「ひっ……も、モバPさんは今日、私と──」

RN「待って、智絵里。まずは私が話す」

CER「え……」

KMR「どういうことですか、凛さん」

RN「みんな、ごめん。私、本当はプロデューサーが今日何をしていたか知ってた」

MUR「どういうことだゾ?」

RN「プロデューサーは今日、智絵里と一緒に居た。そうでしょ?」

CER「は、はい……」

遠野「え……じゃあ、仕事の都合というのは」

RN「……嘘」

イニ義「どういう事情だ。返答によっちゃあタダじゃおかねえぞ」

RN「それも今から話すよ。でも、その前にもう一度言わせて。……本当にごめん。まさか、こんなことになるなんて思わなかった」

MY「……大丈夫ですよ、凛ちゃん。だから、ちゃんと話してください」

RN「まゆ……うん。じゃあ、えっと、今日の朝のことなんだけど──」
84 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/25(土) 23:57:22.47 ID:9u3L5pvJo

……
RN「……私が知ってるのは、ここまで」

CER「私が電話してしまったせいで……本当にすいません」

MUR「プロデューサーは自分の意志で行ったんだから、気にしなくていいんだゾ」

イニ義「……それより嬢ちゃん、続きを話しな。モバPとはいつまで一緒に居たんだ」

CER「はい。モバPさんには、カーリーさん……私のプロデューサーさんが入院している病院に来てもらって、そこで中野さんを探して欲しいって頼んだんです。中野さんは、私のユニットの仲間で──」

イニ義「そんな過程は聞いちゃいねえんだよ。結果を話せ」

CER「は、はい……えっと、最終的に中野さんと普段使っているレッスンスタジオで合流することになって……モバPさんとは、そこで別れました。大体、午後一時ぐらいのことです」

イニ義「レッスンスタジオ? ……おい、タカダ」

タカダキミヒコ「レッスンスタジオというのは、ここの事で間違いありませんね?」スッ

CER「は、はい、そうですけど……」

KMR「どうして分かったんですか?」

イニ義「組の奴らにモバPを探させてたんだ。見つかったのは、ここに停めてある車だけだったがな」

タカダキミヒコ「午後一時というと、僕たちがこの車を見つける30分ほど前ですね」

イニ義「こいつはその後、どこで何してやがったのか……」

TDN「モバPさんが武道館に居たということは、隠れて三位決定戦を見に行ったということでしょうか」

RIN「でも、車を置いていったりするかなぁ……」

イニ義「おい、嬢ちゃん。嘘は付いてねえだろうな」

CER「ほっ、本当です! モバPさんとはそこで別れて、その後は……ずっと、中野さんと二人でした」

RN「……?」
85 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/25(土) 23:59:10.94 ID:9u3L5pvJo
イニ義「そうかよ……もういい、帰るぞタカダ」

タカダキミヒコ「ええ。ですがいいんですか?」

イニ義「肝心な部分がはっきりしない上にこいつが寝てるんじゃどうしようもねえ。あとの話は目を覚ましてからだ」

タカダキミヒコ「分かりました」スタッ

MUR「ちょっと待って欲しいゾ!」

イニ義「……あぁ?」

MUR「頼みがある。プロデューサーの代わりになる人間を二三人用意してくれないか? 最悪、送迎をしてくれるだけでもいいゾ」

イニ義「んなことをしてやる義理はねえよ。お前達で何とかするんだな」

MUR「……優勝を逃してもいいのか?」

イニ義「なんだと?」

MUR「送迎が無いだけでアイドルの負担は大きく増える。それが響いて決勝戦当日のコンディションが悪くなったらどうするんだ」

イニ義「……」

タカダキミヒコ「兄貴ぃ、人を少し貸すだけなら別にいいんじゃないですか?」

イニ義「ケッ……まあいい、精々二日かそこらだろうからな」

MUR「助かるゾ~!」

イニ義「ただそこまで言うからには、810プロを倒せなかったらどうなるか──」

RN「分かってる。部外者も居るんだから、あまりその事は言わないで」

CER「…………」

イニ義「フッ、そうだったな。……じゃあな、そいつが起きたすぐに連絡を寄越すんだぞ」

タカダキミヒコ「」ペコッ

ガララララッ,スタスタスタ……
86 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/25(土) 23:59:37.09 ID:9u3L5pvJo
RIN「えっと……じゃあ、この後はどうします?」

DB「ここに居ても仕方ないだろう」

NTK「そうだな。さっきから思ってたんだが、人が多過ぎて狭くるしいぜ」

遠野「イニ義さんたちが帰りましたけど、それでも一、二……十人も居ますものね」

RIN「……帰ろっか」

DB「フン、そうさせてもらう」クルッ,ガララララッ

TDN「では、自分も大坊と一緒に帰ります」

DB「なっ、ついてくるな!」

スタスタ……

NTK「相変わらずだな」

MUR「……あっ!」

KMR「ど、どうしたんですか?」

MUR「また事務所の鍵を閉め忘れてたゾ……(池沼)」

KMR「なら、一緒に戻りますか。僕も荷物を少し置いたままですから」

MUR「おっそうだな。じゃあ、お医者さんに何か言われたら……凛ちゃん、代わりに聞いておいてくれ」

RN「私? まぁ、いいけど」

MUR「じゃあ、また明日だゾ~」ガララララッ

スタスタ……

RIN「まゆちゃんはどうするの?」

MY「私はまだここに居ます。なるべく、傍に居たいですから」

RIN「そっか……智絵里ちゃんは?」

CER「わ、私は……」

NTK「帰るんじゃないのか? だりー。アタシももう行くけど」ガララララッ

RIN「あっ、ま待って! じゃあみんな、また明日! プロデューサーさんも、お大事に」ペコッ

スタスタ……
87 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/26(日) 00:01:38.61 ID:r4gjE9z0o
遠野「凛さん、まゆさん、僕も帰ります。お疲れ様でした」

RN「うん、お疲れ様」

MY「また、明日」

ガララララッ,スタスタ……

RN「あっという間に三人になったね」

MY「うふふ、そうですね」

CER「……」ウツムキ

MY「智絵里ちゃん」

CER「……はい」

MY「まだ、何か言いたいんじゃないですか?」

CER「えっ……いや……」

RN「私もさっきの話、ちょっと気になったんだけど。ずっと一緒って言ってたのに、プロデューサーを見つけた時は中野くんと一緒じゃなかったの?」

CER「いや、それは、ステージが終わった後すぐに別れたので……」

RN「なんで?」

CER「なんで、って……」

RN「ごめん。私が気になってるだけだから、答えたくなかったら、別に」

CER「……」

RN「ただ、それがプロデューサーと何か関係があるんだったら……教えて欲しい」

CER「……分かりました。でも、モバPさんと関係あるかどうかは、正直、分からないんです」

MY「大丈夫ですよ。顔を上げて、話してください」スッ

CER「はい。実は……今日私とステージに立った中野さんは、モバPさんかもしれないんです」

RN・MY「……は?(困惑)」
88 : ◆8Zk9bbuSBI [sage]:2017/03/26(日) 00:02:07.13 ID:r4gjE9z0o
とりあえずここまで
89 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/27(月) 22:43:19.78 ID:uEpTo1r6o

……
CER「それで中野さんと別れて……そんな感じ、です」

MY「な、なるほど。確かに、それが本当なら変……ですね」

CER「……信じられないですよね。すいません」

MY「いえ、本当の事を言ってるのは分かります。でも──」

RN「うん、本当だね。プロデューサーで間違いないと思う」

CER「え……ほ、本当ですか?」

MY「何か根拠が?」

RN「ちょっと待ってて。もし、私の想像通りなら……」スタッ,ガサガサ

CER「えっ、何してるんですか……?」

MY「プロデューサーさんの上着に何か?」

RN「上着じゃなくて、隠れてハンガーに掛かってたこれ」スッ

MY「ベルト?」

RN「そう。……まゆには前話したよね、メガデスのこと。これは、サイバーZに変身するためのベルトなの」

MY「えっ?」

CER「えっ?」

RN「……ごめん、ちょっと唐突だった。とにかく、プロデューサーはこれを使って中野くんに化けたってこと」
90 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/27(月) 22:44:04.91 ID:uEpTo1r6o
MY「な、なるほど、そうなんですか? ……そうなんですね」

CER「えっ……す、すいません、よく意味が……いや、言葉の意味は分かるんですけど」

RN「うん、まぁそうだよね……私もどう説明したらいいか分からないんだけど」

CER「そ、そうなんですか……」

RN「……」

RN(監視カメラは……ない。よし)

RN「智絵里。ちょっと見てて」

CER「?」

ピカッ!

CER「……!? えっ、えっ!?」パチパチ

MY「わぁっ、何回見てもビックリしますね。でも……素敵です」

RN「世の中にはこういう不思議な力もあるってことだけ覚えてくれればいいよ。他の事情は、下手に知らない方がいいと思う」スッ

CER「じゃあ、モバPさんもそのベルトを使って、不思議な力で中野さんになってたってことなんですね」

RN「そういうこと。まったく……本当に無茶するんだから」チラッ

P「…………」
91 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/27(月) 22:46:22.06 ID:uEpTo1r6o
CER「あの、じゃあもしかして、モバPさんが倒れたのもその力を使ったから……ですか?」

RN「多分、そうだと思う。このベルトは身体にかなりの負担がかかるから、本当は長い時間変身したら駄目なの」

CER「モバPさんは、私と居る間ずっと変身していたから……」

RN「うん。プロデューサーのことだからそれでも智絵里を助けたいと思ったか、それとも──」

MY「それとも……?」

RN「実は前もこのベルトを使ったことがあるんだけど、その時はある方法で倒れずに済んだの」

CER「そうなんですか」

RN「だから、それをあてにしてたのかも。でも智絵里と別れてその方法を使おうとした矢先、力尽きて倒れてしまった」

CER「……やっぱり、私が無理なお願いをしたからこんなことに」

RN「それは違うよ。何度も言ってるけど、プロデューサーが自分で考えた結果だから」

CER「…………」

MY「それより凛ちゃん、今、倒れずに済む方法があるって言いましたよね?」

RN「うん。正確にはその時も一回倒れたんだけど、すぐに復活出来たんだ」

CER「じゃ、じゃあ……!」

MY「その、ある方法を使えば……」

RN「……プロデューサーを目覚めさせることは、出来ると思う」
92 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/27(月) 22:48:29.41 ID:uEpTo1r6o
MY「その方法を教えてください。まゆがやります」

RN「残念だけど、それは出来ないの。これもちょっと、事情が複雑なんだけど……とにかく、出来る人は一人しか居なくて、その人に頼むしかない」

CER「じゃあ、頼みに行きましょう! 私も一緒にお願いします」

RN「……ううん、それは私一人に任せて。なんとか上手くやってみせるから」

CER「そう、ですか……分かりました」

MY「……ずるいですね」

RN「え?」

MY「私の知らないプロデューサーさんを知ってるのは、いつも凛ちゃん。だから、ずるいです」

RN「えぇ……(困惑) そう言われても困る……」

MY「はい、だから聞き流してください。あとの事は任せますから」

RN「……うん。プロデューサーを起こしたら、もういい加減にしてって怒らないと」

MY「だったら、まゆは優しくしてあげる係ですね」

CER「じゃあ、私は……謝る係になります」

RN「えぇ?」

CER「あ……ごめんなさい」

MY「いいじゃないですか、かわいらしくて」

RN「まぁ、なんでもいいか……」

CER「あ、あはは……」

MY「うふふ♪」

RN「……くすっ」

フフフフ……
93 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/27(月) 22:54:18.48 ID:uEpTo1r6o
ガララララッ!

CER・RN・MY「!」ビクッ

ISHR先生「なんだ、君たちまだ居たんですか。今から検査を行うので、しばらく出ていてください」

CER「あ、はい。分かりました」

ISHR先生「……出来ればそのまま帰って欲しいですね」

MY「は?(威圧)」

RN「ちょっと、まゆ。もう日も暮れてるし、今日はそろそろ帰っていいんじゃない?」

MY「……そうですね。そうしましょうか」

ISHR先生「明日以降面会出来るかは分かりませんが、また事務所の方にお伝えします」

RN「分かりました。よろしくお願いします」

MY「お願いします」ペコッ

CER「」ペコッ

ガララララッ,スタスタ……

ISHR先生「それじゃ、続きいくよぉ~↑」スッ

シュッ、ジュズッ! ピョッ!(小鳥の囀り) プゥ!
94 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/27(月) 22:57:56.94 ID:uEpTo1r6o
スタスタ……

RN「エレベーター、一緒に乗るよね?」ポチ

CER「あ、はい。お願いします」

スタッ……ポチ、ウィィィィ……

MY「智絵里ちゃん、一つ聞いていいですか?」

CER「は、はい。なんですか?」

MY「ステージの上のモバPさんは、どんな人でした?」

CER「どんな……えっと……」

RN「見た目はずっと中野くんだったわけだし、答えづらいよね」

CER「はい……でも今思い返すと、ほとんど普段のモバPさんだったような気がします」

MY「普段と同じ、ですか」

RN「本物の中野くんに似せるつもりは無かったんだ……」

CER「あ、いえ、そんなことはないと思いますけど……そもそも、私が『普段のモバPさん』なんておかしいですよね。すいません」

RN「ううん、いつもの智絵里と接してる時のプロデューサーってことでしょ? おかしくないよ」

MY「智絵里ちゃんと接してる時のプロデューサーさん……なおさら気になってきますね」

CER「あ、いや……」

ピンポーン

CER「あっあのっ! 私カーリーさんの病室にも行かないといけませんから、失礼しますっ!」ポチ

ウィーン,タッタッタッ……
95 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/27(月) 23:10:19.26 ID:uEpTo1r6o
MY「あら、逃げられちゃいましたね」

RN「ね、って。私は何も聞いてないから」

MY「えぇ? 分かりますよ、本当は気になってるの」

RN「……そうやって心を見透かしたような言い方をするまゆの方がよっぽどずるいよ」ボソッ

MY「うふふ、ごめんなさい♪」

スタスタ……

RN「ねえ、まゆ。もし……私が失敗したらどうする?」

MY「プロデューサーさんのことですか?」

RN「うん。やってもらえるかどうか、本当に分からないから」

MY「私は凛ちゃんを信じます。ダメだったときは、仕方ありませんよ」

RN「……そっか。ありがと」

MY「もしかしたら、凛ちゃんが何とかする間に元気になってるかもしれませんよ? プロデューサーさんのことですから」

RN「ふふっ、そうだといいね」

MY「ええ。明日また、ひょっこり事務所に顔を出してて……」

RN「昨日はごめん! って?」

MY「うふふ、そうですそうです。それで次に───」



……
………
96 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/30(木) 01:31:17.04 ID:QlO2lGo8o
二日後

RN(ここに来たの、いつぶりだろう……)

『810プロダクション』

RN(あぁ、モバプロって名前はもう無いんだよね。正面入り口も改築したみたいだし、あの頃の面影はどこにも……)

RN「って、そんなこと考えてる場合じゃないでしょ」パチパチ

RN(プロデューサーの意識が戻る気配はまったくない。放っておいたら、最悪このまま目覚めない可能性だってある)

RN(昨日暇が無くて行けなかった分、一秒でも早く田所を連れていかないと!)

RN「…………」ムズムズ

RN(といっても、どうすればいいんだろう……受付の人に言ったら、それで来てもらえるかな?)

RN(でも、そもそも田所が今ここに居るかどうかが分からないんだよね、それ一番言われてるから)

RN(せめて卯月や未央と連絡がとれれば良かったんだけど……ちひろさんを恨むな)

RN「……」スゥー,ハァー

RN(あれこれ考えても仕方ない。まずは、行動しないと……!)スタッ

ウィーン

RN(最初に卯月か未央を呼んで、その後田所を──)スタスタ

ガシッ

RN「……あれ?」クルクルクル

RN(誰かに持ち上げられてる……!?)

「渋谷凛さん、あなたは出入り禁止です。どうかお引き取りを」ドスドスドス

RN「え? ちょっと、出入り禁止ってな──」

ウィーン,ボスッ

RN「…………」
97 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/30(木) 01:32:56.59 ID:QlO2lGo8o
ウィーン、タッタッタッ!

ガシッ

「お引き取りください」ドスドスドス

ウィーン、ドサッ

RN「…………」

ウィーン、スタタタタタ!

ガシッ

RN「お引き取らない! 離してっ!」

「申し訳ありません。お引き取りください」ドスドスドス

ウィーン、ドサッ

RN「…………」

ウィーン、スタッスタッ

ガシッ

RN「あのさ、出入り禁止なのは分かったよ。用件だけ聞いて欲しいの」

「…………」ドスドスドス

ウィーン、ドサッ……ウィーン,スタッ!

RN「無視しないで! 無視だけはやめて!」

ガシッ,ドスドスドス……ウィーン、ドサッ

RN「あああああああああああ! もうっ!」

RN(正面から入れないなら、別の入り口を探す!)スタスタスタ
98 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/30(木) 01:34:06.17 ID:QlO2lGo8o
RN(予想の斜め下をいかれた……本当なんなの? 出入り禁止って)

RN(そりゃ、自分の意志で辞めたのは事実だけど……)

RN「……ん」スタッ

『改築中、関係者以外立ち入り禁止』

RN(この奥にも出入り口があるはず。工事をしている音は聞こえないし、上手くいけば中に入れるかも)

RN(……ダメで元々。行ってみよう)

キィー,スタスタ……

RN「誰も居ない……? なら、扉まで走って──」スッ

トントン

RN「っ……このストーカー! まだ入ってないよ!」クルッ

変態糞土方「?」

RN「え、あっ、アンタ……誰?」

変態糞土方「わしは163*90*53、ただのアイドル好きのおっさんや」

RN「あ……思い出した。特別審査員? だったっけ、やってたよね」

変態糞土方「そうや。今度の決勝、楽しみに待ってるぜ」

RN「そ、そう……」

変態糞土方「……」

RN(な、なにこの人……無視していいのかな)
99 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/30(木) 01:38:13.76 ID:QlO2lGo8o
RN「じゃ、じゃあ私、これで……」クルッ

変態糞土方「待てや。ここは関係者以外立ち入り禁止。入り口は向こうや」

RN「それは分かってるけど……なら、アンタはなんでここに居るの?」

変態糞土方「わしはここで働いてる土方や。アイドルも毎日見られるし、最高や」

RN「えぇ……」

変態糞土方「今、帰ろうとしたら姉ちゃんが入って行くのが見えたんや。まさかと思ったら、本物の渋谷凛でわしはもう気が狂う!」

RN「そう……(無関心) っ!」タッタッタッ!

変態糞土方「あっ、おい!」

RN(入ってしまえばこっちのもの……!)

ガチャガチャガチャ

RN「! 開かない……っ」

変態糞土方「今日の作業は終わったからもう戸締まりしたんや。それに申し訳ないが、関係者以外がそこから入るのはNG」

RN「そう……分かった、もう行くよ」スタッ

変態糞土方「入りたいか?」

RN「え?」

変態糞土方「戸締まりしたのはわしや、鍵は持っている。開けてやろうか?」

RN「いいの?」

変態糞土方「アイドルの助けになれれば気持ちがいい。鍵を突うずるっ込む!」

ガチャン,キィー……

変態糞土方「やったぜ。」

RN「あ、ありがとう……」

変態糞土方「今度、糞まみれでライブやってくれや。ゲストで呼んでくれたら最高や」

RN「いや、まあ、考えとく……それじゃ」スタスタスタ

RN(よく分からないけど、いい人で良かった……)
100 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/30(木) 01:39:42.07 ID:QlO2lGo8o
スタスタ……スタッ

RN(このドアを開けたら810プロの中に入ることになる……正確に言えばもう入ってるけど)

RN(誰が歩いてるか分からないけど、さっきの警備員みたいなのに見つからないよう慎重に進まないとね)ガチャ

スタ,スタ……

RN(外観に比べると中はあまり変わってないかな。とりあえず、突き当たりにある階段で上の階に行こう)

RN(それにしても、懐かしいなあ。ちょっと前までは毎日来てたのに)

RN(いや、ちょっと前……もう半年以上経ってるからちょっとはないかな。少し前、大分前? どっちでもいいや)

RN「! 曲がり角……」

シュタッ,スーッチラッ

RN「誰も居ない、左右前後確認よし」

RN(なんだか潜入してるみたい。ちょっと楽し……いやいや、楽しんだら駄目だから。真面目にしないと)スタスタ

RN「さて、階段。ここは二階で、上の階には……」

『プロジェクトルーム』

RN「!」

RN(あそこはまだ、そのままなの……?)
101 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/30(木) 01:40:58.97 ID:QlO2lGo8o
過去

RN「……今日からここが私の部屋ってこと?」

P「私『たち』の部屋ね。勝手に私物化しない」

RN「それで、プロデューサーがそのなんとかプロジェクトっていうのを任されたの?」

P「まっさか! 俺みたいな新人が任されるわけ無いだろ~。ただ凛がメンバーに選ばれたから、俺もオマケでやらせてもらえるだけだよ」

RN「ふーん……」

トントン

P「おっ! 凛、ユニットの仲間が来たぞ!」

RN「……ユニット? なにそれ」

P「言ってなかったか? 今日からは──」ガチャ

UDK「おはようございます!」

MO「おはよ~!」

P「この二人とユニットを組んで、それを俺がプロデュースするんだよ! いいだろ~?」

RN「なんで自慢気なの……っていうか、聞いてないし」

P「いやぁ、まさかこんなに早くプロデュース出来るアイドルが増えるなんて思わなくてさ、これも──」

MO「おやおや? もしかしてここに居るのが渋谷の凛ちゃんかな?」ズイッ
102 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/30(木) 01:43:47.76 ID:QlO2lGo8o
RN「あ……うん。よろしく」

UDK「よろしくお願いします! 私、島村卯月っていいます!」

MO「よろしくね、しぶりん! 私は本田未央!」

RN「しぶりんってなに……」

MO「なにって、あだ名あだ名! しまむーは、しまむー!」

UDK「それじゃ分からないですよ未央ちゃん~」

MO「あ、そっかぁ。てへへ」

P「……っておい! そっちで勝手に盛り上がるな!」

UDK「あ、すいません。プロデューサーさんも、今日からよろしくお願いします!」ペコッ

MO「よろしく頼むぞ、プロデューサー君!」

P「おっすお願いしまーす! 未央は変なキャラやめろ」

MO「はーい」

RN「ねえ、私たち三人でユニットって……何か名前はあるの?」

P「ユニットの名前か? もちろんあるぞ」

MO「なになに? 聞かせて!」

P「それは名付けて……『迫真デレラガールズ』! どうだ!?」

MO「うわぁビミョー……(素)」

RN「……ダサ」

UDK「えっ、えっと……いいんじゃないでしょうか! ダジャレ? ダジャレっぽくて!」

P「申し訳ないが三日三晩悩んだ名前を酷評するのは本気でNG……つかマジ、へこむ……」

ガシャッ

RN「ちょっと、大丈夫?」スッ,ジー

P「悪い悪い。……どうした?」

RN「ここに書いてある『new generations』っていうのは何?」

P「ん? それは昨日の会議で決まった、プロジェクトメンバー全体のとりあえずの名前」

RN「ふーん……じゃあこれでいいじゃん、ユニット名」

UDK「ええっ!? そんなあっさり決めちゃっていいんですか?」

RN「少なくともプロデューサーが考えたのより良いと思うんだけど」

P「ウーン……」

MO「意味は、『新世代』? 私たちにピッタリかも!」

UDK「確かに、響きはしっくりきますね」

RN「どう? (これよりいい名前)出そう?」

P「あーー、もう分かった! ……今日から三人は『new generations』だ! 」

………
……
103 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/30(木) 01:47:31.41 ID:QlO2lGo8o
現在

RN(改めて考えてみても迫真デレラガールズは無いかな……)スタスタスタ

RN(あの部屋は今多分、別のプロジェクトで使ってるんだよね。冷静に考えて、あの時のままな訳ない)

スタッ

RN(ドアが少し開いて、光が漏れてる。誰か居る……?)

RN(ちょっとだけ、覗いてみようかな……)スーッ,チラッ

RN(……ダメだ、隙間が小さくて何も分からない。寄り道してないで早く……早く、どこに行けばいいんだろう)

キィー……

RN(!? ヤバっ、体重かかっちゃった!)スタタッ

RN(早く離れないと、知り合いのアイドルじゃなかったらまずい……!)

「……プロデューサーサンですか?」キィーッ

RN「!」クルッ

SMMR「……?」スタッ

RN「卯月! 良かった……」

SMMR「あれ、あなたは……凛チャン?」

RN「うん。ビックリした? どうしても頼みたい用事があるから、来ちゃった」

HND「しまムー、今の誰……しぶリン!?」

RN「未央!? ……はぁー、良かった。二人がここに居て……」

SMMR・MO「…………」

RN「……? そういえば二人とも、そのゴーグルみたいなのは──」

ポポポポポポ!

RN「!?」

SMMR「TARGET CAPTURED……」

HND「BODY SENSOR……」

エミュレイテッド,エミュレイテッド……

RN(みたいじゃない、田所が着けてるゴーグルと同じ!? 二人とも、それで様子がおかしくなってる!)

RN「ね、ねえ二人とも! 落ち着いて!」

SMMR・HND「……」ポポポポ

RN(ダメだ、聞こえてない……)

スタ,スタ,スタ……

RN「!」

ONDISK「おやおや……騒がしいと思ったらこれはまた……困りましたねぇ」

RN「氷崎健人……!」
104 : ◆8Zk9bbuSBI [sage]:2017/03/30(木) 01:49:01.84 ID:QlO2lGo8o
とりあえずここまで
105 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/31(金) 22:52:23.38 ID:kfvpY18Do
ONDISK「フルネームでご丁寧にどうも」ポチッ

SMMR・HND「」ガクッ

RN「そのリモコンは……二人に何をしたの!」

ONDISK「静かにしてくださいよ。それとも、人が集まった方が好都合ですか?」

RN「っ……」

ONDISK「島村さん、本田さん。とりあえず中に戻って、大人しくしていてください」

SMMR・HND「ハイ」スタスタ……

キィー,バタン!

ONDISK「さて……本来貴女は入ろうとしても入れないはずなのですが、どうやってここまでやって来たんですか?」

RN「二人に何をしたの。先に質問したのは私だよ」

ONDISK「何をした、という質問ならこう答えましょう。彼女たちにも田所と同じ装置を付けたのです」

RN「どうして!」

ONDISK「勝つためですよ、貴女達に。それは島村さんや本田さんも望んでいることです」

RN「な……だからって……!」

ONDISK「これ以上は答えようがありません。今度は貴女の番ですよ」

RN「……答える必要、ある?」

ONDISK「そうですか、でしたら早く出ていってください。それとも警備員を呼びましょうか?」

RN「…………」

RN(ここで引き下がれない。とにかく、なんとかして田所を引きずり出さないと)
106 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/31(金) 22:57:07.75 ID:kfvpY18Do
RN「……待ってよ、私がここに来た理由は聞かないの?」

ONDISK「答えてくれるんですか? 何を聞いても無駄かと思いましたよ」

RN「答える……っていうか、正直に言うと、お願いする」

ONDISK「お願い……? なんですか、言ってみてください」ニタァ

RN「…………」

ONDISK「ほら、早く。人が来ても知りませんよ」ニヤニヤ

RN「くっ……」

RN(ムカつくし、ものすごく敗北感があるけど、言わなきゃ……!)

RN「田所を貸してほしいの。ほんの少し、一時間ぐらいでいいから」

ONDISK「貸す、それはつまり彼をどこかへ連れていきたいということですか?」

RN「うん。あいつにしか出来ない事をしてほしいから」

RN(……待った、もしかしたら今のゴーグルを付けた卯月と未央なら出来るんじゃ?)

RN(だとしても、こいつを退けないと連れ出すことは出来ないだろうけど……)

ONDISK「彼にしか出来ない事ですか。一体なんでしょう、それも話してくれないと困りますよ」

RN「……話したら、言うとおりにしてくれる?」

ONDISK「聞いてみないと分かりませんね」

RN(聞くだけ聞いて、断るつもり? でも、ここで止めたら……)

ONDISK「おや、ここでは話せませんか。人の来ない場所へ移動しますか?」

RN「……うん、そうしよう。話すから」

ONDISK「ではこの部屋の中で話しましょう」ガチャ

RN「待って。そこには卯月と未央が居るでしょ」

ONDISK「大丈夫ですよ、ほら……」
107 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/31(金) 22:59:08.58 ID:kfvpY18Do
キィー,バタン

ONDISK「……」ポチッ

SMMR・HND「」

RN「……卯月? 未央?」

ONDISK「今の彼女達は言わば電源の入っていない機械のようなものです。話を聞かれる心配はまったくありません」

RN「なっ……どうして、卯月と未央にまでこんな……!」

ONDISK「時間が無いんで、話すなら早くしてくださいよ」グイッ

RN「……っ」

RN(嫌だけど、許せないけど、ここで放り投げたらいけない……!)

RN「田所にはツボ押しをやって欲しいの」

ONDISK「ツボ押し。お仲間が、ケガか何かされたんですか?」

RN「それは……」

ONDISK「誰にやって欲しいんですか? そこまで言ってくださいよ」

RN「…………プロデューサー」

ONDISK「はい?」

RN「プロデューサーが、倒れて……だから、田所のツボ押しで目覚めさせて欲しい」
108 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/31(金) 23:00:20.09 ID:kfvpY18Do
ONDISK「へえ……そうですか……」

RN(動揺してる? さすがに予想外だったってことかな)

ONDISK「……分かりませんねぇ」

RN「何が?」

ONDISK「今の言い方、まるで田所のツボ押しでなければ目覚めさせられないような言い方でしたが……その理由が分かりません」

RN「! い、いや、別にそうじゃ……」

ONDISK「だとすればなおさら分かりませんねぇ。何故、危険を冒してまでここへ入り込んできたのか……」

RN「……」

ONDISK「ツボ押しというのは魔法ではありませんから、何でも治せる訳ではありません。ですが貴女の言い方は明らかに、この方法なら治せるという確信を持ったものでした」

ONDISK「その確信へ至った根拠は、なんでしょうか?」

RN「……アンタが知ってるかは知らないけど、前、田所のツボ押しでプロデューサーの体調不良を治してもらった事があるから」

ONDISK「知っていますよ。島村さんから聞いているので」

RN「根拠はそれだけだよ。プロデューサーがどうして倒れたのかは、医者も分からないらしいから」

ONDISK「成る程。それで納得しておきましょう」
109 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/31(金) 23:38:47.32 ID:kfvpY18Do
RN「これで全部話したよ。……お願い、田所を連れてきて」

ONDISK「出来ませんね。よりにもよって相手がモバPでは」

RN「な……そっちの知りたいことは全部話したでしょ!」

ONDISK「だからこそです。ここまで聞いて敵に塩を送る人は居ませんよ」

RN「だって……別に、今度の決勝戦には関係ないでしょ? 私たちの誰かならともかく」

ONDISK「本当にそう思っているのですか? モバPが居ようが居まいが、勝敗には関係ないと」

RN「それは……」

ONDISK「いずれにせよ、田所を貸す訳にはいきません。残念ですがね」

RN「どうしても……出来ない?」

ONDISK「はい?」

RN「私……なんでも、するから──」

トントン,ガチャ

ONDISK「おや」

「ここに居ましたか。渋谷さん、いい加減にしてください」

RN「なっ、またアンタ!? どうしてここが……」

「先ほど監視カメラの映像を確認しました。あの様子では、まだ諦めていないだろうと思いましたので」

ONDISK「やりますねぇ。ちなみに、彼女はどこから入ってきたのですか?」

「工事関係者用出入口からです。まったく、驚きました……」ガシッ

RN「やめてっ! まだ話が終わってない!」ジタバタ

「……どうしますか?」チラッ

ONDISK「話は終わりました。連れていってください。……ああ、ここで話していたことは他言無用でお願いします」

「はい。分かりました」ドスドスドス

RN「離してッ!」ジタバタ

「暴れないでください……暴れないで」


……
………
110 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/31(金) 23:46:45.28 ID:kfvpY18Do
────
810プロ 事務室

CHR「それは本当ですか!?」

ONDISK「ふっ、ええ。そう驚かないでくださいよ」

CHR「それは驚きますよ……凛ちゃんが来ていた上に、モバPさんが倒れたなんて」

ONDISK「そうですね。私も、最初は耳を疑いました」

CHR「……凛ちゃんはわざわざそれを伝えに来たんですか?」

ONDISK「いえいえ、そんな訳ありませんよ。ツボを押してもらうから田所を貸してほしいと頼みに来たのです」

CHR「ツボ押し? なんですかそれは」

ONDISK「あぁ、貴女はご存知ない。スタドリやエナドリのような効果を得られる行為だと思ってください」

CHR「なるほど、それでモバPさんを……、断ったんですか?」

ONDISK「もちろん。わざわざこちらの勝率を下げる必要はありませんよ。貴女が許可するというなら、吝かではありませんが」

CHR「まさか。やめてくださいよ、冗談は」

ONDISK「クク……しかし、まったくの期待外れでしたね。まさかこんな形で予想を裏切られるとは思いませんでしたよ」

CHR「ええ……モバPさんについては、他に何かありますか?」

ONDISK「渋谷凛が言うところによれば、倒れた原因は不明だそうです。詳しいことはまだ調べていません」

CHR「分かりました。どこの病院かは、分かりますか?」

ONDISK「ふっ、知ってどうするんですか?」

CHR「何もしません、少し気になっただけです。私が自分で調べますから、もう結構」

ONDISK「ちひろさぁん。貴女も結構、怖いですねぇ」

CHR「……ハァ(クソデカため息)」
111 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/31(金) 23:54:58.12 ID:kfvpY18Do
病室

ガラララッ……

RN「まゆ……やっぱり、ここに居たんだ」

MY「凛ちゃん。お疲れさまです」

RN「あ、お疲れ様……隣いい?」

MY「わざわざ聞かなくても、好きに座ってください」

RN「……うん」スッ

MY「プロデューサーさんは、さっきからずっとこうです。ほんの少しも動かないんですよ」

P「…………」

RN「そう……いつから居たの?」

MY「1、か2(時間)ぐらいかな……分からないです」

RN「そんなに!?」

MY「プロデューサーさんが起きたとき、近くに居たほうがずっと嬉しいですもん」

RN「いや、まあ……それはそうだろうけど」

MY「もう少ししたら帰ろうって、さっきから思ってたんですけどね。中々、腰が上がらなくて」

RN「そっか。…………」

MY「……何か、あったんですか?」

RN「まゆ……ごめん、私、何も出来なかった」
112 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/03/31(金) 23:57:53.62 ID:kfvpY18Do
MY「え……? それって……」

RN「プロデューサーの、こと……今日、頼みに行ってたの」

MY「そう……ですか。仕方ないですよ、凛ちゃんのせいじゃありません」

RN「私、また時間があるときに行ってみるから! 次は絶対に──」

MY「凛ちゃん」

RN「っ……」

MY「誰も凛ちゃんを責めませんし、プロデューサーさんの意識も絶対に戻ります。だから……そんな顔しないでください」

RN「まゆ……」

MY「気負い過ぎです。話さなくていいですから、たまにはゆっくり、休んでください」

RN「うん……ごめん……っ」グッ

MY「謝ることなんて、何もありませんよ……」チラッ

P「…………」

MY「……」ギュッ
113 : ◆8Zk9bbuSBI [sage]:2017/03/31(金) 23:58:19.86 ID:kfvpY18Do
とりあえずここまで
114 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/04/02(日) 23:30:22.90 ID:qIo5iJuQo
決勝戦当日

ガラララッ

遠野「あっ、おはようございます社長」

KMR「三浦さん、遅いですよ」

MUR「おはよう。いやーごめんだゾ、誰か間違えて事務所に来るかと思ってギリギリまで待ってたんだ」

NTK「多分、そんな勘違いするとしたらアンタだけだと思うぜ……」

MUR「あっ、そっかぁ……えーと、俺が最後でみんな居るよな?」

TDN「はい」

RN「……羽田野は?」

RIN「ここにちゃんと居るよ!」スッ

HTN「ウィヒ!」

RN「あ、そう……」

DB「なんでお前がかわりに答えるんだ」

RIN「絶対誰か羽田野さんが居るか確認すると思ってたんですよ!」フフン

HTN「プロデューサーが倒れた時は誰も俺に連絡してこなかったけどな」

RIN「あっ……」

MUR「い、いやあ気が動転してすっかり忘れたんだゾ。ごめんな」

HTN「うまいぞ言い訳(皮肉)」

RIN「そ、それよりほら! えーと……なんだろう、どうしようかな」

NTK「何も考えてないのかよ」

RIN「だって!」

MY「李衣菜ちゃん」シーッ

RIN「あ、ごめん……」
115 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/04/02(日) 23:32:05.41 ID:qIo5iJuQo
DB「……全員揃ったならとっとと出発すればいいだろう。ここは狭くて仕方ない」

RIN「あはは、なんだかプロデューサーさんを取り囲んでるみたいですもんね」

P「…………」

MUR「……様子は変わらないのか?」

MY「はい。ずっとこのままです」

MUR「そうか……じゃあ、大坊の言うとおりにしようか」

DB「フン、先に行ってるぞ」ガラララッ

TDN「おい、大坊! ……プロデューサーさん、行ってきます」スッ,スタスタスタ

KMR「……」ペコッ,スタスタ

NTK「じゃあな、モバPさん」

RIN「夢の中ででもいいですから、私たちのこと、見ていてくださいね」ペコッ

スタスタ……

MUR「ワン、ツー……まゆちゃんたちも行くゾ」

遠野「はい」

MY「……」スタッ

RN「…………」ジー

MY「凛ちゃん?」
116 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/04/02(日) 23:33:28.28 ID:qIo5iJuQo
RN「プロデューサー……私たち、先に行って待ってるよ。ゆっくりでいいから、ちゃんと来てよね」

P「…………」

RN「よし、行こっか」

MY「……はい」

スタスタ……

MUR「よし、全員出……羽田野も早く行くんだゾ!」

HTN「ばれたか」スタスタスタ

MUR「……じゃあプロデューサー、行ってくるゾ!」

ガラララッ,スタスタスタ……



……
………



ガラララッ! スタッ,スタ,スタ……

???「…………」
117 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/04/02(日) 23:35:03.59 ID:qIo5iJuQo
数時間後 会場 控え室

トントン,ガチャ

RN「ん、どうしたの?」

MUR「今、木村たちのステージが始まったゾ。それを伝えに来たんだ」

遠野「そうですか……じゃあもうすぐですね」

MUR「ああ。このままここに居ようか?」

RN「いいよ、私たちだけで大丈夫」

MUR「そうか。じゃあ、頑張るんだゾ」

キィー……バタン

遠野「…………」スーハースーハー

MY「……」

RN「ふぅーっ……緊張してきたね」

遠野「はっ、はい。そうですね」

RN「もう、ちょっとそわそわし過ぎじゃない?」

遠野「す、すいません。ただいよいよ、これで最後なんだと思うと……」

RN「最後、か……確かに」

MY「そう考えてみると、今まで色んな事がありましたね」
118 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/04/02(日) 23:36:56.96 ID:qIo5iJuQo
RN「モバプロから364に移ってもう7、8ヶ月?」

遠野「僕がアイドルになってからもそれくらい経つんですよね……長いような、短いような」

MY「ふふっ……私、遠野ちゃんの教育係を任されたとき内心戸惑ってたんですよ」

遠野「ええっ、そうなんですか?」

MY「はい。その時凛ちゃんが言ってましたけど、予選まで1ヶ月しかないのに未経験の人とユニットを組んで大丈夫なのかなって」

遠野「ああ、それはそうですよね……」

RN「でも、今はもうそんなこと思ってないでしょ?」

MY「もちろん♪ 遠野ちゃんと一緒で良かったと思ってますよ」

RN「うん。遠野とまゆと……この三人でユニットを組めて、本当に良かった」

遠野「凛さん、まゆさん……ありがとうございます」

RN「って、今からステージなのにもう全部終わったような言い方だった。ごめんごめん」

MY「うふふ♪ 今の言葉、このライブが終わったらもう一度言ってあげてくださいね」

RN「言ってあげる? 誰に?」

MY「まゆにじゃなくて、プロデューサーさんにですよ。このユニットを組んでくれたお礼の意味も込めて」

RN「あ……そうだね、プロデューサーにも……」

「…………」

遠野「……お二人の気持ち、僕には分かります」
119 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/04/02(日) 23:38:50.37 ID:qIo5iJuQo
RN「気持ちって、何の?」

遠野「大切な人と離ればなれになる気持ちです。僕と先輩もずっとそうですから」

RN「……うん」

遠野「でも、ちょっと予感がしてるんです。このステージが終わったときにはもう、戻ってきてるんじゃないかって」

MY「プロデューサーさんがですか?」

遠野「はい。先輩も……とにかく、僕たちの大切な人が戻ってきてる予感がするんです」

RN「……願望っていうんじゃないの? それ」

遠野「そんなことありません! 僕の予感は当たります!」

RN「初めて聞いたんだけど……」

MY「ふふ、引っ込み思案な遠野ちゃんがここまで言うんですから、きっとそうなりますよ。信じましょう、凛ちゃん」

RN「……うん、そうだね。じゃあ戻ってきた時に──」

トンッ! ガチャ

RN「っ、誰……イニ義!?」

タカダキミヒコ「どうも」

イニ義「よう、姉ちゃん達。準備は万端だろうな」
120 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/04/02(日) 23:40:05.90 ID:qIo5iJuQo
RN「なんでここに……IDカードを持ってる関係者以外は入れないはず」

イニ義「んなこたぁどうでもいい、質問に答えろ。準備は万端か?」

RN「……今日まで、やれることはやったよ」

イニ義「そうか。だったら、俺の目をまっすぐ見て『勝つ』って言ってみな」

RN「……」

イニ義「どうした。出来ねえか?」

RN「勝つよ。絶対」ジッ

イニ義「残った姉ちゃん達もだ。目ェ見て言ってみろ」

MY「……勝ちます」

遠野「お、同じく……勝ちますっ」

イニ義「……そうか。期待してるぜ、じゃあな」

タカダキミヒコ「失礼します」

バタン

RN「何なの、一体……」
121 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/04/02(日) 23:42:51.39 ID:qIo5iJuQo
スタスタスタ……

タカダキミヒコ「……? 兄貴ぃ、観客席はそっちじゃないですよ」

イニ義「あぁん? わざわざ見る必要はねえよ、結果だけ後から知れば十分だ」

タカダキミヒコ「それもそうですね」

イニ義「……それに、アレは負けるかもしれねえ」

タカダキミヒコ「え?」

イニ義「負けない覚悟しかしてねえンだよ。姉ちゃん達の目からは勝つ自信を全く感じなかった」

タカダキミヒコ「……じゃあ、まずいんじゃないですか?」

イニ義「その時は仕方ねえよ。……分の良い賭けだと思ったんだがな」

タカダキミヒコ「そうですねぇ、じゃあ兄貴ぃ、今の内に ────」ゴニョゴニョ

イニ義「……」

タカダキミヒコ「どうですか?」

イニ義「フッ、どのみちあいつは手に入れておきてえし、悪くねえな。よし、車ですぐに向かうぞ」

タカダキミヒコ「はい、精進します」


……
………
122 : ◆8Zk9bbuSBI [sage]:2017/04/02(日) 23:43:17.40 ID:qIo5iJuQo
とりあえずここまで
123 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/04/04(火) 23:28:59.28 ID:mB2F+EsNo
────
~♪

(ステージの上で誰かが踊っている)

「────!」「──」「───!!」

(とてつもない歓声だ……)

~~~♪

(踊っている姿は見えるのに、歌っている声も聞こえるのに、それが誰なのかよく分からない……)

(しかしどうやら、ステージに居るのは一人じゃないようだ。これは……LIVE、バトル?)

ワアアアアアアア!!! フゥ~! ハイ! ハイハイ!

(三人組のユニット二つが競っているらしい。どちらが勝つのだろう)

~~♪

(実力は拮抗している。会場全体から双方のパフォーマンスを楽しんでいるという思いが伝わってきた)



(……あれ? 俺は一体────)



ワアアアアアアアアアアアア!!!!


(俺の意識が逸れたほんの一瞬で拮抗が崩れたようだ)

(顔に何かを付けたアイドルの居るユニットが優勢に見える)

(もう一方のユニットは挽回しようと必死な様子だが、勝負は今にも決まってしまいそうだ……)

(…………)

(……ああ、やっぱりそうなのか)

(俺はこの場に居ないんだ。一番大事なときに、俺は側に居てやれなかった)

(仕方ないよ。みんなは悪くない。何もかも、全部俺が悪いんだ……)

「負けないよ」

(声……?)

RN「私たち、絶対に負けないから……!」

P「凛……!?」

────
124 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/04/04(火) 23:31:36.50 ID:mB2F+EsNo
病室

バサッ!

P「っ!? っく、はあっ、はあっ……」

P(なんだ、俺は一体……いや、ここは、どこだ……?)キョロキョロ

『(パチパチパチパチパチ!)……ありがとうございました!』

P「ん、テレビが……つけっぱなしなのか?」

『スペシャルステージは以上となります。さあ! この後はいよいよ、アイドルアルティメイト決勝戦のお時間です!』

P「え、ファッ……は、はぁっ!? いっ、今なんつった!」

『司会は引き続き、わたくし西寺郷田がお送りします。フラッシュ!』

P「なん、や、どっ、え? あのさぁ……動悸が収まらないってそれ一番言われてるから……」ハアッハアッ

P(落ち着け! まず、俺が何をしていたのか思い出すんだ)

P(俺は中野くんを探してて、でも結局俺が中野くんになって、智絵里と一緒にステージに立って──)

P「最終的に、倒れた……! ならここは病院か!」

P(だったら今、このテレビで流れてたのはなんだ!? まさかとは思うが、あの日から決勝戦までの丸々一週間眠ってたっていうのか!?)

『ここでニュースをお伝えします。本日、東京では過去に例のない量の積雪が────』

ガララララッ

「失礼しま……あれっ! あなた起きてるじゃない!」サササッ

P「えっ? あ、はい! 起きたんですよたった今! えーっとそれでですね、あの、今日の日付は──」

「……あーっ! 点滴勝手に取ったらダメじゃないですか!」
125 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/04/04(火) 23:35:22.52 ID:mB2F+EsNo
P「点滴?」

P(左を見ると確かに点滴袋が吊り下げられていた。しかし、針は抜けている)

P「ちょっと飛び起きるような感じで目覚めたんで、その時抜けちゃったんですかね?」

P(にしては綺麗に抜けてるし、腕から血も出てないみたいだが……)

「そうですか。とりあえずは、えーっとすぐ先生を呼んでくるので、じっとしててくださいね」スタタッ

P「あちょっと! 今日は何日ですか?」

「はい? 24日です、12月24日!」

ガララララッ,スタスタスタ……

P(24日って……本当に決勝戦当日じゃないか!)

ガタッ,コロコロコロ……

P「なんだ、何か落ちた……ジュースの空き瓶か? 誰のゴミだよまったく」スッ

P(それは見覚えがある容器とラベルだった。このスタドリは間違いなく──)

P「……気になるが、今やるべきことはそうじゃないだろ」スタッ

P「えっと……スーツの上着にズボン、靴と……ベルトもあるな。よし」スッ,スルスル

P(じっとしてなんかいられるか、すぐに三人の所へ向かうんだ!)

ガララララッ,タッタッタッ……
126 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/04/04(火) 23:38:04.27 ID:mB2F+EsNo
タッタッタッ,ウィーン

ビヒュウウオオオッ!

P「運良く誰にも見つからなったぞ……ってか寒っ! 雪まで降ってるじゃないか!」

P(そういえばさっきのテレビでも言ってた気がするけど)

P「まったく、とんだホワイトクリスマスだな……とりあえず、どこかにタクシー乗り場でもないか探そう」スタスタスタ

ヒュウウ!

P「あー寒、東京のくせして雪降らせるなよホント……」

P(そういえば携帯は? ポケットに入ってるはずだが)スッ

P「あった! だったらとりあえず電話して……あれ?」カチカチ

P(電源が入らない……充電切れか!)

P「はーつっかえ! やめたらこの機種……タクシーも見つからないし」

P(病院内に戻って電話するか? ……いや、それよりは動きながらタクシーを探した方がいいか)

P(とはいえ、ここがどこの病院か知らないから道もまともに分からないし……)

P(クソッ! テレビ中継ではこの後決勝戦開始と言っていた、ぐずぐずしてる時間は無いぞ!)タッタッタッ

ブゥーン……キキッ! バシャッ!

P「うわっ、あぶねえだろこの野郎! 安全運転しやがれ! ただでさえこんな雪降ってんだぞ!」クルッ

P(……ん? あの車、もしかして──)
127 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/04/04(火) 23:40:01.17 ID:mB2F+EsNo
キキーッ,ストッ

P(向こうも止まった! もしかするか!?)

ガチャッ,スタッ

イニ義「モバP!」

P「っし、こんなときに運が良い……!」グッ

タッタッタッ……

P「イニ義! 話は後にして、とにかく会場まで送ってくれ!」

イニ義「ンだと、間に合うのか?」

P「そういう問題じゃないだろ! 行かなきゃ駄目なんだよ!」

イニ義「フッ、そりゃあそうだな。後ろに乗れ」

P「助かる!」ガチャ,バタン

イニ義「タカダ! 出せ!」

タカダキミヒコ「はい」

ギギッ,ブゥーーン!
128 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/04/04(火) 23:43:54.03 ID:mB2F+EsNo
イニ義「まさか、このタイミングで兄ちゃんの生きた顔を拝めるとはな」

P「おいおい、今まで死んでたような言い方しないでくれよ。しっかし本当……いやぁ、どうして今病院に来たんだ?」

イニ義「フッ……」

タカダキミヒコ「兄貴?」

イニ義「大した理由はねえよ。勘、だな」

P(胡散臭え……)

P「……なあ、俺が眠ってる間みんなは大丈夫だったのか? 送迎とか事務とか、仕事のことも気になるが」

イニ義「姉ちゃんも兄ちゃんも元気だぜ。てめえらの仕事は送迎に関しちゃ、しょうがねえからウチの奴らを少し貸してやった。事務は知らねえよ」

P「そうか……ありがとう、力を貸してくれて」

P(事務は三浦さんが一人でこなしていたんだろうな……)

イニ義「こっちからも質問させてもらうぜ。お前、あの日一体何してやがった?」

P「それに関しては……完全に俺の失態だ。本当にすまないと思ってる」

イニ義「質問の答えになってねえぞ? おい」

P「今はそんな場合じゃないだろう! 決勝戦が終わったら、いくらでも話すから」

イニ義「ほう……だったら今夜、俺の所へ来い。じっくり話そうじゃねえか、今後の事も含めて」

P「……ああ、分かった」
129 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/04/04(火) 23:48:47.79 ID:mB2F+EsNo
キィーッ……

イニ義「あ? どうしたタカダ、もっとスピードを出せ」

タカダキミヒコ「前を見てください兄貴。渋滞です」

イニ義「チッ……このクソ雪のせいかよ」

タカダキミヒコ「この渋滞では会場に着くまでかなり時間がかかるかもしれません。交通規制がかかってる場合もあります」

P「足止め食らってる時間は無いってのに!」

イニ義「多少迂回していい。別のルートはないのか?」

タカダキミヒコ「難しいですね。これでは、次の交差点まで進むのに何分かかるか」

P「……会場までの距離はあとどれくらいなんだ?」

タカダキミヒコ「約3キロといったところでしょうか」

P「なんだ、たったの3キロか。だったら……俺は降りて自分の足で行く!」カチッ,スーッ

タカダキミヒコ「待ってください! 確かに車よりは早く着くでしょうが、走ったとしても決勝戦には──」

イニ義「それでも行くっつってんだ。止めるんじゃねえよ」

タカダキミヒコ「……はい」

P「悪いな。それじゃ、イクゾオオオオオ!」

ガチャッ、バタン,タッタッタッ……

イニ義「……タカダ、ラジオだ。決勝はラジオ中継もあっただろう」

タカダキミヒコ「あ、はい」

イニ義「フッ、面白え……」


『……さあ、幾多のLIVEバトルを勝ち抜き残った二組のユニットがステージに上ります。SCOOOP! そしてミッドサマーナイツ・ルードドリームの皆さんです!』
130 : ◆8Zk9bbuSBI [sage]:2017/04/04(火) 23:50:29.15 ID:mB2F+EsNo
とりあえずここまで
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/05(水) 02:42:49.17 ID:YpCw8GHro
雪降ってるじゃない!寒いと思ったわぁ^~
132 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/04/06(木) 23:44:17.35 ID:lrQZjs8ho
会場

ワアアアアアアアアアアアアアア!!!
キャアアアアアアアアアアッ!
ウオオオオオオオオオオオオオ!!
パチパチパチパチパチ……

NSDR「それぞれが可憐な衣装に身を包んで登場して参りました! それとともにものすごい熱気が会場を包んでおります!」


遠野「あ、あわわわ……」

MY「大丈夫です、遠野ちゃん。大丈夫」ギュッ

遠野「はっ、はい!」キッ

RN「……」チラッ


HND「いえーい! みんな、盛り上がってるかーい?」

FOOOOOO~!

SMMR「今日は見に来てくれて、ありがとうございます!」

ワアアアアッ!パチパチパチパチ!

野獣「…………」ポポポポポポポ


遠野「先輩……絶対救ってみせますから」
133 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/04/06(木) 23:46:48.92 ID:lrQZjs8ho
NSDR「ライブの前に少し、お話を伺います。本日の衣装はいずれも意匠を凝らしてあるものですが、ミッドナさんは今回あえて、デザインを統一していないんですね」

RN「うん。私たち個人のイメージに合うようにデザインしてもらったから、ユニットの衣装って感じはしないかもね」

NSDR「何故そのような衣装にしようと?」

RN「私たちは一つのユニットではあるけどその前に一人のアイドルだから、そのイメージを大事にしたいっていうのが、一つ」

NSDR「もう一つはなんでしょうか」

MY「今日は三曲演奏するじゃないですか。だから、三人別々の衣装の方が最後まで飽きないんじゃないかって、それがもう一つです」

NSDR「なるほど、その衣装は三人それぞれのイメージであるととも、に本日披露する三曲のイメージでもあるんですね。……対してSCOOOPサイドは、統一感のある衣装ですが」

SMMR「はい。私たちがSCOOOP! っていう感じの衣装だと思います」

HND「出た、たまに飛び出すしまむーの謎表現!」

NSDR「はははは、面白いですね~。一番の特徴はやはりそのゴーグルですか? これまで野獣さんが着けていたものと同じですよね」

野獣「……」ポポポポ

SMMR「先輩にあやかって私たちも着けちゃいました。大した意味は、無いんですけど」

NSDR「無いんですか(笑)」

アハハハハハ……

MY「……どう思います、凛ちゃん」

RN「どうかな……」

RN(この前と違って、様子がおかしいところはないみたいだけど……)
134 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/04/06(木) 23:48:37.66 ID:lrQZjs8ho
NSDR「さて、今さら聞くことでもないかもしれませんが、この決勝戦に懸ける思い、意気込みを語っていただきましょうか。まずは、SCOOOPの皆さんから!」

SMMR「はい! 今までやってきた事を出し切れるように頑張ります!」

HND「ここまで来たら、勝つしかないよね!」

SMMR「そうですね! 応援してくれるファンの皆さんに、今日は最高の私たちを見せてあげます!」

ワアアアアアアアッ!

NSDR「ありがとうございます。野獣さんはいかがでしょうか?」

野獣「キャプチュ……」

NSDR「……はい、ではミッドナの皆さんにも話していただきましょう」

遠野「ぼっ、僕はずっとせんぱ……野獣さんと同じステージに立ちたいと思っていたので……」

NSDR「なるほど、そうだったんですか」

遠野「はい。なので、えーと……満足しています!」

RN「今満足しちゃってどうするの……」

遠野「あっいえ、もちろん、今日勝って優勝するのは僕たちです!」

NSDR「はい。ライブ中も焦らず、遠野さんの美声を響かせてくださいね」

遠野「は、はい……頑張ります」

アハハハハ!
135 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/04/06(木) 23:51:05.64 ID:lrQZjs8ho
NSDR「お二人はいかがですか?」

MY「月並みですけど、このステージに立てたのは私たちの力だけじゃなくて、支えてくれる人の力があったからです」

MY「だから、今日のステージは少しでもその人たちへのお返しになればいいいなって思います」

NSDR「一つと恩返しというわけですか、いいですねぇ~」

MY「はい。次は凛ちゃんの番ですよ♪」

RN「うん。……遠野と被っちゃうけど、私もあの三人と戦いたいってずっと思ってた。特に、卯月と未央とは」

NSDR「それはもしかして、ニュージェネレーションズとして活動していた頃から?」

RN「……どうかな、正直分かんない。でも、この決勝って最高の舞台で巡り会えたのは偶然じゃないと思うから──」スタッ

NSDR「から……?」

RN「だから、お互い悔いのないように。最高のパフォーマンスで競い合おう」スッ

NSDR「おっと、凛ちゃんが戦いの前の握手を求めましたー!」
136 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/04/06(木) 23:53:29.64 ID:lrQZjs8ho
SMMR・HND「……」

野獣「…………」ポポポポ

RN「……?」

NSDR「ど、どうしたのでしょうか……」

ザワ,ザワザワ……

SMMR「…………はい! 頑張りましょう!」

ギュッ

RN「!」

ワアアアアアッ!パチパチパチパチパチ~

RN(今、明らかに動きが止まっていた……やっぱり何か、秘密があるんだ)

RN(でも、それを考えてる余裕はない。何があったとしても、今は自分のステージに集中すること)

NSDR「今、お互いが健闘を誓う握手をしました! それではいよいよ、火蓋を切るとしましょう!」

RN「遠野、まゆ」

遠野「はいっ」キリッ

MY「……」コクッ

NSDR「準備はいいですか? ……参りましょう。アイドルアルティメイトトーナメント部門決勝戦、『SCOOOP!』vs『ミッドサマーナイツ・ルードドリーム』」


「ミュージック・スタート!」


RN「行くよ……蒼い風が駆け抜けるように!」
137 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/04/06(木) 23:54:49.19 ID:lrQZjs8ho
────────
タッタッタッタッタッタッ……

P「ハァッ、ハアッ、クソ、革靴は走りにくいったらありゃしない!」

P(しかもなんか、滑りやすいような……)

ツルッ,ステーン!

P「痛ったァ……思ったそばから転んでんじゃねえよ……」

キキーッ,スタッ

「大丈夫かい?」スッ

P「あ、すいません……って、あなたは!」

一般通過爺「おや、見たことのある顔のような」

P「えーと、一週間? ほど前にそちらのアパートを訪ねたモバPです。あの時はどうも」

一般通過爺「ああ、あんたか! ナオキのサイングッズはまだなのかい!」

P「すっすいません! ちょっと、事情がありまして……」

一般通過爺「……こんな所で何してるんだ? 今ちょうど、あんたのアイドルがライブをやっているんだろう?」

P「知ってるんですか?」

一般通過爺「なんとかかんとかの決勝戦だって? 街頭ビジョンはその中継ばかりじゃよ」

P「ああ……俺、今そこに向かって急いでるんです。ナオキのグッズは必ずお渡ししますから、今日はこれで!」スタッ

一般通過爺「……待ちなさい!」
138 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/04/06(木) 23:56:48.78 ID:lrQZjs8ho
P「なんすか(半ギレ)」

一般通過爺「急いでるならこれを使うといい。こんな天気で年寄りが自転車に乗っていたら危ないからの」

P「いいんですか!?」

一般通過爺「かわりに、もっと豪華なグッズを頼むよ? 孫の喜ぶ顔が見たいんでな」

P「……ありがとナス!」スッ

一般通過爺「早くいってやるんだぞ!」

P(信号次第だけど、自転車なら10分もあれば着ける! こいつは心強いぞ!)


チャリチャリチャリ……

「ああもうやだああああああああ!」ダッダッダッ

P「!?」

キキーッ! ズルッ,ガターン! カラララララ……

P「あ、ぐっ……飛び出し……?」ガタッ

ひで「あっ、おじさん大丈夫……?」

P(こいつ……)

ひで「……死んでるね。さよならー!」タッタッタッ

P「ってお前待てオラァ!」スタッ

スッ,チャリンチャリンチャリン!

ひで「やだやめて追ってこないで!」

P「てめえひでだな! つくづく俺の邪魔しかしない奴だなお前は!」

ひで「おじさんだれ!? ぼくおじさんのことなんて知らないにょ!」

P「うるせえ! このまま轢き殺してやらぁ!」チリンチリンチリン!

ひで「あああああああああああ!!!」
139 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/04/06(木) 23:57:35.95 ID:lrQZjs8ho
ドカッ!

ひで「うぐええっ!」ヒューン

P「ざまあみやがれ! …………あれ?」カチ,カチ

P(ブレーキがきかない!? さっきのでイカれたか!)

「……? きゃあああああっ!?」「突っ込んでくるぞ!」

P(雑踏! 直進したら人殺し!)

P「曲がって止まれえええええっ!」グッ,スタッ

ドサッ……ドガシャーーン! カラカラカラカラ……

「なんだこのオッサン!?」「やべえよやべえよ……」

P「はっ、はあっ、あぶねえ……」

P(間一髪飛び降りて、大事故は免れたか……でも自転車は派手な音立ててビルの壁に突っ込んじまったぞ!)

P(いや、ブレーキが壊れてるんじゃどのみち駄目だな。騒ぎが大きくなる前に……逃げる!)

ガシッ

P「!?」クルッ

虐待おじさん「君、今この子を自転車で轢いたよね」

ひで「ぐすっ、ううっ、おじさん……」

P「げえっ! さ、さあなんのことか……」

「今の自転車、あの人が乗ってたよね……?」「おっ、やべえ110番だな!」「一応119番もだな!」

虐待おじさん「…………」

P「さいならーっ!」バシッ,タッタッタッ!

虐待おじさん「あっ、待てオラァ!」タッタッタッ
140 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/04/06(木) 23:58:43.71 ID:lrQZjs8ho
虐待おじさん「逃がさねえぞお前!」ブンブンブン

P「なんで竹刀もったおじさんに追いかけられなきゃいけないんだよ」!タッタッタッ

ひで「いっけー! おじさんやっちゃえー!」タッタッ

虐待おじさん「……あ?」スタッ

ひで「え……」

虐待おじさん「お前もお仕置きの途中で逃げ出してんじゃねえぞオラァ!」バシーン!

ひで「痛いんだよおおおっ!」タッタッタッ

虐待おじさん「悪い子は二人ともお仕置きだどー!」

ひで「ひいいっ!」

P「なんでお前も逃げてるんだよ!」

ひで「うるさいにょ! お前があんな所に居たから悪いんだにょ!」

P「うざっ! お前一人で捕まってろ!」ドカッ

ひで「うざいのはおじさんだにょ!」ゲシゲシ

虐待おじさん「興奮させてくれるねぇ!」ブンブンブン!

P・ひで「ひいっ!」タッタッタッ!

P(竹刀の間合いまで追い付かれたらアウトだ! どうする!?)

ザワザワザワザワザワ……

P「ラッキー人混み! あそこにまぎれるんだ!」

ひで「無駄だにょ! 時間稼ぎにしかならない!」

P「ちいっ! でもどっちにしろ進行方向よ!」ダッダッダッ
141 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/04/06(木) 23:59:56.76 ID:lrQZjs8ho
P「二人離れていればお互い囮に出来る。息を潜めろよ……」スタスタ

ひで「わ、分かったにょ……」スタスタ

「ちょっと何こいつら~」「割り込むなよな~頼むよ~」

虐待おじさん「…………」

「あのさぁ、ちゃんと並んで、どうぞ」

バシーン!

虐待おじさん「……OK? OK牧場?(激寒)」

「あっ大丈夫っす……」

スタスタスタ……

P(まずいな、やっぱり隠れるよりは通り抜けて逃げ続ける方が得策か……?)

KNK「お菓子はたくさんありますから、ゆっくりでも大丈夫ですよ~」

淫乱テディベア「(割り込みは)してはいけない(戒め)」

P(そうか、こいつらは菓子に群がってたのか)スタスタ

スタッ

KNK「わっ! びっくりしたぁ~、追い抜きもダメですよ!」

P「え? あぁすいません……」

P(いつの間にか先頭に出てしまったらしい)

KNK「って、あれ? モバPさんじゃないですか」

P「あ、うん。どうも、この前はケーキありがとう」

淫乱テディベア「……君はこんなところに居ていいのか?」

KNK「テディさん、こんなところ扱いは酷いですよ!」

淫乱テディベア「あぁいや、そうじゃなくてね……」

「ぎゃあああああああああ!!!」

KNK「な、なに!?」

P「ひでが捕まったか! ……お菓子、貰っていきますね!」ゴソッ

KNK「あっちょっと! もぉ~、一人一つですよ!」
142 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/04/07(金) 00:05:14.39 ID:yh0OAWQgo
P(今度しっかりお返ししないとな……)タッタッタッ

虐待おじさん「逃げられると思っているのか?」ザザーッ

P「は?(困惑)」

P(なんであの位置から先回り出来るんですかね……)

虐待おじさん「ひでを虐めていいのはプロデューサーの俺だけだ。君にはしっかりとお仕置きを受けて貰うよ」

P「そんな暇無いんだよ!」ダッダッダッ

虐待おじさん「向かってくるか!」スッ

P「喰らえ!」

虐待おじさん「遅い!」ブンッ!

ガシッ

虐待おじさん「!?」

P「そ、そう来ると思ったぜ……痛てて……」

虐待おじさん「攻撃はフリで初めから受け止めるつもりだったか!」

P「その通り! 今度こそ喰らえ!」フンッ

虐待おじさん「っ……!」スッ

モグッ

虐待おじさん「……なんだこれ」モグモグ

P「ショコラだよ! 美味しく頂いてくれ!」タッタッタッ

虐待おじさん「ちっ、時間稼ぎか……!」クルッ

P「残念だったな、もう追ってこられないぞ!」タッタッタッ

虐待おじさん「なに? ……! 信号が変わるタイミングまで読んでいたのか!」

P「こんな所で止まってられないんでな!」タッタッタッ

虐待おじさん「……そうか」スッ

P(素直に諦めたか……?)スタ、

ヒューン! ……ドガッ!

P「あずっ……!? がっ……」

虐待おじさん「信号が変わったら、すぐそっちに向かうからな」スタッ

P(竹刀を投擲とか、そんなのあり……?)バタッ
143 : ◆8Zk9bbuSBI [sage]:2017/04/07(金) 00:05:52.60 ID:yh0OAWQgo
とりあえずここまで
144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/07(金) 00:11:42.10 ID:kBK4EJboO
虐おじの戦闘力がBB先輩シリーズ並みですねこれは・・・負けそう(小波)
145 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/04/08(土) 23:16:52.47 ID:1Ofgg3Afo
────────
遠野「アンッ! アンッアッアンッ!」

RN・MY「~~♪」


ワアアアアアアアアアアアアアア!!!


TDN「三人とも、実力を存分に発揮していますね」

NTK「ああ、見てるこっちも熱くなってくるぜ」

TDN「……そのせいでしょうか、ファンの歓声まで今までと段違いに大きく聞こえてきませんか?」

NTK「ん、そうか? 確かにそんな感じもするな」

KMR「この関係者席もそうですけど、一回戦の時には開放されていなかった席も今日は全て埋まっています。だから、本当にあの時よりも大きな歓声が上がっているんですよ」

TDN「なるほど」


MUR「凛ちゃーん! がんばれー!」

RIN「遠野さんもまゆちゃんも、810プロに負けるなー!」

ワーキャーワー!


DB「……単にこいつらがすぐ側で喚いているからそう感じるだけじゃないのか」

TDN「ははは、そうかもしれない」

DB「まったく、恥も外聞もあったものじゃない……」

NTK「大坊も今日ぐらい素直に応援したらどうだよ?」

DB「フンっ…………俺はこいつらのように騒ぎ立てないだけだ」

TDN「大坊……よし、自分も応援します!」ワン!ワン!

RIN「そうだよ!(便乗)、みんなで応援しよう! 頑張れーっ!」

MUR「セリフ取られたゾ~……でも、とにかくがんばれー!」
146 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/04/08(土) 23:17:38.30 ID:1Ofgg3Afo
舞台袖

CHR「どう見ますか、ここまでの彼女たちを」

ONDISK「はは、そう焦らないでくださいよ。まだ始まったばかりじゃありませんか」

CHR「……そうですね、すいません」

ONDISK「フッ。ちひろさぁん、そんなにこのステージの勝敗が気になりますか?」

CHR「それは当たり前です。こうしてモバPさんと戦う日のために、貴方を雇ったんですから」

ONDISK「ええ、分かっていますよ。肝心のモバPは今なお眠っているようですがね」

CHR「…………」

ONDISK「いずれにせよ、余計な心配はしなくて結構。このステージも予定通りに進んでいますよ」

CHR「その言葉、信じます。信じますが……」

ONDISK「が、なんですか?」

CHR「最後まで何が起こるか分からないのが勝負です。いくら周到に計算しても、イレギュラーは起こり得ます」

ONDISK「身に染みて分かっていますよ。それでも、勝つのは彼女達です」

CHR「……ええ」
147 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/04/08(土) 23:20:31.01 ID:1Ofgg3Afo
────────
トボ,トボ,トボ……

P(結局まるで歯が立たず、俺は腹筋ボコボコにパンチ食らってのされてしまったのだった……)

P「げほっ、がはっ……クソッ、マジで容赦無いんだもんな……」

P(同じ調教師でも、タクヤとはレベルが違い過ぎる……)ズサッ

ツルッ

P「ああうっ!」バタッ

P(また転んじまった、これじゃ天海春香だな……)

P「っず、ぐ……あ、あれ……?」ドサッ

P(クソ、手も足も言うことを聞かない……予想以上にダメージが大きいみたいだ)

P「ぁー、誰か、誰か……」ムズムズ

P(おかしいな、真っ暗だぞ……そりゃあ日は完全に沈んでるけど、ここは東京だろ?)

P(それに雪だって降ってたはず。なのに、目の前は真っ暗……)

「なにこれ、人?」「パネルか何かが倒れてるんでしょ」「あ、そっかぁ(池沼)」

P(生きてるっての、頼むから起こしてくれよ……)ムズ

「それよりさ、早く行こうよ」「えーどこに?」「二人きりになれるとこ」「アーイク!」
スタスタスタ……

P「…………」
148 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/04/08(土) 23:24:23.58 ID:1Ofgg3Afo
アハハハハハ!ソレマジ?ウンマジハェーアーイッスネエ
ゲラゲラゲラ
ザワザワザワザワ……

P(人の往来はあるのに、誰も俺の事を気にかけない。たまに誰かが近づいても、すぐ見なかったことにする)

P(そりゃあそうだよなぁ。触らぬ神に祟りなし、クリスマスイブに生き倒れに構う奴なんか居ないよ)

シンシンシンシン……

P(ああ、やっぱり雪は降ってるのか。
カップルにはいい日だろうなぁ、ノンケでもホモでも)

P「…………」グッタリ

P(なんだか、だいぶ冷えてきた……)


『きよし この夜 星は ひかり……』~♪


P(はは……おいおい、とうとう讃美歌まで聞こえてきたぞ。このまま天使が迎えに来るんじゃないか?)

P(まあ、いっそ、それも……)

P(…………)

P「いいわけ、ないだろうが……っ!」スッ

P(俺がこうしてる間にも三人はステージで歌いつづけてるんだ。いつまでもくたばっていられるかよ!)

P「っ、こんの……ッ!」ムクッ

「うわあっ!?」

P「んなっ!?」

ドスッ……バタッ

P(ああ、やっとの思いで立ったのに……後ろから来た人にぶつかってあっさり倒れる俺って一体……)
149 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/04/08(土) 23:28:16.44 ID:1Ofgg3Afo
「ごめんなさい! いきなり立ち上がったから、避けきれなくて!」

P「…………」

「だ、大丈夫……?」

P「もう無理、立てない……」

「ええっ!? い、今起こしてあげるから!」ギュッ

P(よかった、優しい女の子みたいだ……)

「あれ……もしかして、お兄ちゃん? あー違う、お兄ちゃんじゃなくて」

P「お兄ちゃんじゃねえよ! ……え?」

YK「やっぱりお兄ちゃんじゃん!」

P「だからお兄ちゃんじゃねえよ! あっ、痛ててて……」スタッ

YK「大丈夫、っていうかどうしたの!? 傷だらけじゃん!」

P「まあちょっと色々あって、とととっ!」フラフラ

YK「ちょっ、危ない危ない! 肩貸すから!」スッ

P「わ、悪い悪い。病み上がりなもんでな……」

YK「病み上がり!? 生傷だらけになる病気ってなに!?」

P「あーもう、気にすんな……起こしてくれてありがとう、俺はもう行くから、離してくれ」

YK「えっ、駄目だよ! 病院に行った方がいいって」

P「そんな時間無いの! だいたい、お前もどっか行く途中だろ? 俺なんかに構わなくていいから……(良心)」バシッ、トボ,トボ

YK「アタシはねこっぴーのクリスマスディナーショーに……って、駄目だってば!」ガシッ

P「流行らせコラ! ムーミン野郎お前離せコラ!」ジタバタ

YK「ムーミン? っていうか野郎じゃないし!」ガシガシ

「モバPを離してあげなさい」

YK「え、誰?」クルッ
150 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/04/08(土) 23:30:41.41 ID:1Ofgg3Afo
HRN「久しぶりね、モバP。姫川友紀も」

P「ヘレンさん!? 何してんすか!」

YK「ヘレン? ……あ、IUの予選で戦った人!」

HRN「そう、四次予選以来になるわ。次に会う時は、また別のステージの上になると思っていたけど」

YK「それよりおにっ、モバPくんを離せってどういうこと?」

P「いい加減間違えるなよ」

YK「モバPって呼び慣れてないもん!」

HRN「……私は全て見ていたわ。ボロボロになりながら歩みを止めず、しかし転んだ拍子に動けなくなってしまった彼を」

P「どこから!? っていうか見てたなら助けてくださいよ!」

HRN「あそこからよ」

P「あそこって……まさかビルの屋上ですか?」

HRN「少し、この雪の世界を感じていたの。それで不意に地上を見たら、アナタが来たのだから驚いたわ」

YK「えぇ……(困惑)」

HRN「遠くて、アナタと断定してここまで降りるのに少し時間がかかってしまったのは謝るわ」

P「あ、はい。なんかこっちもすいません」

YK「というか、今の理由になってないし……」

HRN「前へ進もうとしている者の歩みを止める事は許されないわ。さあ、離してあげなさい」

P「頼むよ友紀。どうしても行かなきゃいけないんだ」

YK「……うん、分かったよ」スッ

P「うおっとととっ!」フラッ

YK「ほらふらふらしてる! やっぱり駄目だよこれ!」

P「だーいじょぶだって安心しろよ~、平気平気、平気だから」

YK「本当かなぁ……」
151 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/04/08(土) 23:33:02.37 ID:1Ofgg3Afo
P「それじゃ、俺はこれで──」

HRN「待ちなさい」ガシッ

P「ええっ!? なんでヘレンさんが止めるんですか」

HRN「アナタは何処へ向かおうとしているの? 私たちにもそれを知る権利ぐらいはあるはずよ」

P「……今まさにステージに立ってる、凛たちのところですよ」

HRN「……! IUの決勝戦ね」

YK「あっ、そういえば今日だった!」

P「これ以上は説明する時間がもったいないんで、俺はもう行きますよ」スッ

HRN「待ちなさい」ガシッ

P「なんですか!」

HRN「傷ついたアナタでは速く走ることは出来ないわ」

P「分かってますよ! だから急ぐんじゃないですか!」

HRN「落ち着いて。力を貸すと言っているの」

P「え?」

HRN「INUE君!」
152 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/04/08(土) 23:33:51.66 ID:1Ofgg3Afo
INUE君「ああああああああああああああああああああああ!」ダッダッダッ

YK「うわっ、何この人!?」

HRN「INUE君、彼を乗せてあげなさい」

INUE君「あ(肯定)」スッ

P「えぇ……」

HRN「ほら、急いでいるのでしょう?」

P「わ、分かりました……」スタッ

INUE君「あああああああああああ!」ダッダッダッ

HRN「さあ行くわよ! アナタを待つ世界へ!」タッタッタッ

P「なんでついてくるんですか!?」

YK「よーし、アタシはエールで元気付けてあげる!」タッタッタッ

P「お前もかよ! 無理しなくていいんだぞ!?」

HRN「今の私たちに無理なんて言葉は似合わないわ!」

YK「野球でもアイドルでも、諦めたら試合終了だよ!」

P(似合うとかそういう問題じゃないし、なんか微妙にズレてる例えだし……)

P(でも……)

P「……ああ、その通りだ!」
153 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/04/08(土) 23:34:28.02 ID:1Ofgg3Afo
────────
~~♪、…………ワアアアアアアアアアアアアアアッ!!!
パチパチパチパチパチ!


RN「はあっ、はあっ……」

RN(一曲歌っただけでこんなに疲れたのは初めて……無意識の内に、余計な力を入れちゃってるのかも)

RN(二曲目が始まるまでのインターバルはとても短い。すぐに息を整えて、もう一度集中しないと)スーハー

RN「はぁっ、ふぅーっ……」チラッ

遠野「はあ、はあ、はあっ……」

RN(やっぱりまだ呼吸が荒い……でも、もう休んでる時間はない)

スタ、スタスタ……

RN「なんとか踏ん張って、遠野」

遠野「はあっ、凛さん……っ、絶対、勝ちましょう」

RN「……うん。じゃあ、交代」スッ

遠野「はいっ……!」スッ

パチン!

…………、~~♪
154 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/04/08(土) 23:45:54.17 ID:1Ofgg3Afo
MUR「あれっ、センターが凛ちゃんから遠野に代わったゾ!」

TDN「センターを固定しない……衣装デザインを統一しなかったのにはこういう意図もあったんですね」

RIN「っていうことは、二曲目は遠野さんのイメージに合った曲ってこと?」

KMR「……ええ、そうだと思います」


~♪
デデデデン,デデンデンデンデン,デンデンデンデンデン,デデンデンデン……

RN・MY「Baby,I can't wait」

遠野「アアンッアンッアンッ↑アンッ↓アンッ↓ア↑アン↓アアンッアンッアンッ↑ア↓アン↓」

アアンアンアンアンアンアアン、アアンアンアンアンアンアアン……


KMR「『I can't wait』、歌詞も雰囲気も遠野さんにピッタリですよ」

RIN「凄い……遠野さんの歌声、きれい……」

MUR「いいゾ~コレ、810プロを引き離せー!」

KMR「ですが、この曲は……」ボソッ

TDN「……遠野さんへの負担も大きい、ですか」

KMR「はい。ここまでSCOOOPに大きな動きがないのも気になります」

RIN「二人とも! なに喋ってるの? ほら、応援応援!」

KMR「……ええ、僕たちに出来るのはそれぐらいですね」

RIN「がんばれがんばれー!」

DB「馬鹿騒ぎする曲でも無いだろうに……」

RIN「いーいーかーら!」

DB「チッ…………頑張らなきゃ撃つぞゴルァ」

RIN「えー、何ですかそれ……」

NTK「とことん素直じゃないな」

DB「うるさい!」
155 : ◆8Zk9bbuSBI [sage]:2017/04/08(土) 23:46:20.25 ID:1Ofgg3Afo
とりあえずここまで
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/09(日) 16:53:42.17 ID:p8l1Wm8Wo
アツゥイ!
157 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/04/10(月) 23:57:34.92 ID:puIFgdnmo
────────
INUE君「あああああああああああ!」ダッダッダッ

P「うるせぇ! けど速え!」

HRN「アナタを背負っていなければもっと速いわよ?」タッタッタッ

P「はぇ~すっごい」

P(息ひとつ切らさずついてきてるヘレンさんも大概凄いが……)

YK「はあっ、ねっ、ねえ、あれ!」スッ

P「!」

P(ついに、視界の端に大きな会場のドーム部分が映った!)

HRN「INUE君! ラストスパートよ!」

INUE君「あああああああああああ! あああああああああああ!」ダッダッダッ

P「うおおおっ!?」グラッ

HRN「しっかり掴まっていなさい!」

P「は、はいっ!」ガシッ

YK「ちょっ、ちょっと、速くなぁい!?」タッタッタッ

P「はやいのがきもちいい!」

P(もうあと1キロも無いはずだ……もうすぐだからな、凛、まゆ、遠野!)
158 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/04/10(月) 23:58:01.10 ID:puIFgdnmo
INUE君「あああああああああああ↑ ああああ、あぁ、ああああぁぁ……↓」

P「お、おい。どうした?」

ダッダッダッ……スタッ

INUE君「ああ、ああぁ……」ガクッ

HRN「……限界が来てしまったようね」

YK「はあっ、はあ、はあっ……こんなに走ったの、ひさびさぁ……」ゼエゼエ

P「こっちも……友紀、大丈夫か?」

YK「はあっ、うん……ちょっと休めば平気だから」

P「いいよ。もう十分だ」

HRN「そうね……どうやら私たちはここまでのようだわ。後はアナタ次第よ、モバP」

P「はい。ありがとうございましたヘレンさん。もちろん、INUE君も」

INUE君「あぁ、あぁあ……」

YK「ちょっと、はぁっ、アタシには感謝してないの?」ゼエゼエ

P「もちろんしてるよ。サンキューな、友紀」

YK「えへへ……ふうーっ、最後まで頑張れ! 応援してるぞ!」

P「おう! じゃあ、またいつか!」

HRN「次こそステージで会えることを期待しているわ!」

タッタッタッ……

HRN「……少しの間にずいぶん回復したのね。流石だわ」

YK「はあっ、はあ、はーっ、疲れた……速すぎだよ、えーっと、INUE君?」バシッ

INUE君「うっ……ちょっ、何か出ちゃう……(吐き気)」

HRN「INUE君!?」

INUE君「う、おえっ……」スタ,スタ

YK「ちょちょちょっと! こっち来ないでー!」

HRN「INUE君! 病室へ戻りなさい!」

INUE君「おええええええっ!」ゲロゲロゲロ……
159 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/04/10(月) 23:58:27.82 ID:puIFgdnmo
────────
~~♪

ONDISK「心地よい歌声ですねぇ。彼はアイドルでなく歌手を目指すべきじゃないでしょうか?」

CHR「……はい? 何を言っているんですか」

ONDISK「まずうちのどかの事ですよ。世界の遠野と言った方が分かりやすいですか?」

CHR「そういう意味じゃありません! 対戦相手を評価してどうするんですか!」

ONDISK「はぁ。そう言われましても、私は彼女達に何の指示も出来ませんから」

CHR「一方的な『命令』なら出来る、以前そう言っていたのは貴方ですよ」

ONDISK「命令? いったいどうやってですか?」

CHR「……人を馬鹿にしてふざけるのもいい加減にしてください。そのための装置でしょう」

ONDISK「ええ、確かに準決勝ではそうでした。……ですが、今回は違いますよ」ククク

CHR「な……」

ONDISK「島村卯月と本田未央にあの装置を着けたのは命令を送るためではありません。勘違いしていたんですか?」

CHR「では一体なんの目的で──」

ONDISK「それを話す前に、俺が決勝戦をどのように勝つと話したか覚えていますか?」

CHR「なんですか一体……えっと、確か……真正面から、堂々と撃ち破るだけ、と」

ONDISK「その通りです。ではステージを見てください、それがどういうことですか分かるはずです」

CHR「……?」

~♪ アンッアンンッアンアン!

CHR「……!」
160 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/04/10(月) 23:58:54.13 ID:puIFgdnmo
アンッアンンッアンアン! アーッアンアン!

RN(ん……遠野の声が、二重に聞こえる?)

遠野「アンッアーッ! アンッアンッ!」~♪

RN(喉の問題じゃない、マイクの故障?)

アンッ……アンッア……アァ……

RN「!?」

RN(遠野のパートじゃないのに、声が聞こえた……?)スタッ、タッタッ

遠野「……」スタッ、チラッ

RN(本人も驚いてる? どういうことなの……)~♪

キュッ,スタッ、タッ

MY「!」パチッ

RN(まゆ……!? どうしたの、視線の先……SCOOOPのステージに何かある?)の

アー、アッアッアッ!

RN(また声が重なってる、音響の問題?)

アーッ……アー、アーイキソ

RN(いや、違う……これ、まさか……!)

キュッ、クルッ,ターン!

RN「!」

RN(一瞬だけど、はっきりと見えた……)


野獣「アッアッンアーッ! アーッアッアッ!」~♪


RN(田所が、遠野と同じ世界レベルの歌声を出している……!)
161 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/04/10(月) 23:59:21.45 ID:puIFgdnmo
RN(どういうこと? どうしてあいつが……)


遠野「アンッ! アンッアンアンッ!」
田所「アーッ、イキソ,アーイキソ……」


RN(ただ歌が上手いわけじゃない。ほとんど遠野の歌声そのもの、同じ声質)

RN(もしかして例のゴーグルに秘密が? でも、あれが喉に影響を与えてるとは……)

キュタッ,タッ、タッ……スタッ

RN「っ!」キュッ

RN(しまった! 一歩分余計にステップしちゃった……余計な事に気をとられているから!)

MY「~♪」タッタッ

RN(まゆも気づいたはず……この後もう一度同じステップをする場面があるから、そこでズレを直す?)

RN(でも、下手にズレを修正しようとするとまた余計なミスをするかもしれない……)

RN(……焦ったら負ける。今は、このまま続ける)

アンアンアアンアン! アーイキソ

RN(この曲でボーカルの評価に差を付ける予定だったけど、これじゃあそうもいかない。三曲目のためにもある程度体力を温存した方がいい気がする、特に遠野は──)

遠野「アンッ! アーッアンアンアン!」

RN(張り合うつもり!? ただでさえ負担が大きいのに、そんなことしたら……!)
162 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/04/10(月) 23:59:48.40 ID:puIFgdnmo
遠野(今の先輩が本当の先輩がどうかは分からないけど……)

遠野(先輩がこうして僕と歌い合いたいというのなら……僕はそれに応えたい!)

野獣「アッ、ア!(スタッカート) アイキソ」~♪

遠野(やっと同じステージに立てましたものね)

遠野「アンッ! アンアンアッアーッ! アンッアンッ!」~♪

遠野(一生懸命やって楽しい思い出にしなきゃ損ですよね、先輩!)

アンアンアンッアーイキソンアー! アンッアンッ!

ワアアアアアアアアアッ!


ONDISK「さあ、盛り上がってきましたよちひろさん。このボーカル対決、どちらが勝つんでしょうね?」

CHR「それは私には判断出来ませんが……彼の歌があれほどとは知りませんでした」

ONDISK「あの歌こそ田所の真骨頂ですよ。私が特別何かをしたわけではありません、彼自身の素質だったんです」

CHR「何故今まで隠していたんですか?」

ONDISK「隠してなんていませんよ、これまではこうする必要が無かっただけです」

CHR「そうですか。……しかし、こうも競い合うように歌っていては体力の消耗が激しくなってしまいます。まだ二曲目なのに大丈夫なんですか?」

ONDISK「こちらの消耗を気にする必要はありません。なんといっても、そのためのゴーグルですから」

CHR「……なんですって?」

ONDISK「ちひろさん、遠野に疲労の色が見え始めましたよ。渋谷凛からは焦りも感じる、このまま自滅してしまうかもしれませんね」

CHR「氷崎さん!」

ONDISK「まあまあ。種明かしはもう少ししてからでも遅くはありませんよ……」

CHR「…………」
163 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/04/11(火) 00:01:03.21 ID:tIfAQS0To
遠野「アンッアンッ! ……」

RN(遠野、少し声が伸びなくなってきてる……あんな無理するから)

~♪

遠野「っ、はっ、はぁっ……」スーハー

RN(今の調子で、最後までもつ? この曲は大丈夫だったとして、まだ三曲目もある。遠野の歌が無くなったら、私たち……)

キュタッ,タッ、タッ……スタッ

MY「I can't wait ~♪」キュッ

RN(まゆ!? 一歩余計に踏み込んでる、さっきの私と同じ!)

RN(……まさかわざと? でも、これだとズレを直すどころか、私たちの立ち位置がステージの中心に向かって一歩ずれただけ)

RN(どういうつもりなの……?)チラッ

MY「……」スーッ、パッパッ

RN(手……!? 繋ぐってこと? ちょっと、もう、何をしたいのか分から──)クルッ

MY『あ、せ、っ、ちゃ、だ、め、で、す』

RN「!」
164 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/04/11(火) 00:01:36.99 ID:tIfAQS0To
MY(いつでも私たちに気を配って、ユニットをまとめてくれる凛ちゃんは本当に凄いリーダーです)

MY(でも、焦ったり慌てたりするのはらしくありません。もっとどっしり、凛々しくかまえてください)

MY(それに、頑張ってる遠野ちゃんを私たちが信じないでどうするんですか。気は弱くても、決めたことはやり遂げるのが遠野ちゃんです)

MY(今の私たちに出来ることは、その背中を支えてあげることだと思います)

MY(……なんて、長々言わなくても伝わりましたよね?)

RN「……」コクッ

MY(だって、凛ちゃんは私たちのリーダーだもの)

スーッ……ギュッ、スタッ,スタッ……

~♪

RN・MY『tell me what is on your mind』

遠野「すーっ……」

RN『……I can't wait』

アアアンアンアンアンアンアアン! アアアンアンアンアン! アアンアンアンアンアンアアン! アアアンアンアンアン……
165 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/04/11(火) 00:03:14.81 ID:tIfAQS0To
会場外

タッタッタッ……スタッ

P「っだーっ、はあっ、はあっ、着いたぁーっ!」ハアハア

ザワザワザワザワザワ……キャーキャー!

P「はあっ、はあっ、なんだよ、外なのに人多過ぎだろ……」

ワアアアアアアアアアアアアアア!

P「……! そこにモニターがあるからか!」タッタッタッ

P(ありがたいが、中でやってるものをすぐ外で流すのはどうなんだ……?)

ワーワーワー! フゥー! ウヅキチャーン! リンチャーン!

P「はいちょっとどいて、ちょっ、通して、通してね」ズイズイ

「あぁん……」「邪魔すんじゃねーよ!」

P「うるせえ! いいから決勝を見せろ!」ズカズカ

『アアンッアンッアンッ↑アンッ↓アンッ↓ア↑アン↓ アアンッアンッアンッ↑ア↓アン↓』~~♪

P「っ! 凛、まゆ、遠野……!」グッ

P(I can't waitのアウトロか、まだ三曲目に間に合うぞ!)

P「……あれ? なんで三人でコーラスを歌ってるんだ?」

「これは一回戦でも見せた、凛ちゃんとまゆちゃんも遠野の歌い方をする演出ですねぇ!」
「はぇ~すっごいハーモニー……」「博識兄貴オッスオッス!」

P(立ち位置もおかしい……本来はセンターだった遠野が後ろに下がって、凛とまゆが二人で前に居るはず)

P(ところが三人横並びになって、まるで二人が遠野を支えるような形になっている……)

『アアアンアンアンアン、アアアンアンアンアン…………ワアアアアアアアアアアアアアア!!!!』

P「っと、いかん危ない危ない危ない……(レ)、早く、会場の中に!」タッタッタッ
166 : ◆8Zk9bbuSBI [sage]:2017/04/11(火) 00:04:00.38 ID:tIfAQS0To
とりあえずここまで
167 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/04/12(水) 23:47:21.28 ID:0O2L4O9oo
────────
ワアアアアアアアアアアアアアア!パチパチパチパチパチパチパチ!

RIN「くぅ~っ、やっぱり凄いよ凛ちゃんたち!」

TDN「とてもいい響きでしたね」

MUR「鈴木が遠野並の歌声を出してきた時は驚いたけど、やっぱり歌なら遠野がナンバーワンだゾ!」

RIN「ですね、もうかなり差がついてますよ!」

KMR「いや……そうとはいいきれませんよ」

RIN「えっ?」

KMR「先輩の歌に隠れて目立ちませんが、SCOOOPは全体で見てもとてもレベルの高いパフォーマンスをしています」

RIN「そ、そうなの……?」

NTK「見てないのかよ……」

RIN「目には入れてたけど、凛ちゃんたちの方に集中してて……」

KMR「ボーカル、ダンス、ビジュアル……この基本的な三要素のうち、凛さんたちが確実に勝ってると言えるのはボーカルだけだと思います」

RIN「じゃあ、ダンスとビジュアルでは負けてる!?」

KMR「いや、それはなんともいえませんが……」

TDN「自分も見ていましたが、SCOOOPは動きが本当に正確なんです。ダンスやアピールの一つ一つが、まるで機械のようで」

NTK「あのゴーグルのせいで余計それっぽく見えるな」

RIN「で、でも、凛ちゃんたちならきっと大丈夫ですよ!」

KMR「もちろん、僕もそう思っていますが……相手は810プロですから」

RIN「う、そりゃあ、私たちは負けましたけど……」

NTK「……それ、関係あるか?」

DB「おい、ステージ上のあいつらをよく見てみろ」

RIN「え?」
168 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/04/12(水) 23:47:53.58 ID:0O2L4O9oo
野獣・SMMR・HND「…………」


TDN「あれだけのパフォーマンスをしたのに、疲れている様子がまったく無い……!?」

DB「息ひとつ切らしていないぞ。まだかなりが余力があるんじゃないか?」

RIN「ほ、ほんとだ……凛ちゃんたちは──」


遠野「はあっ、はあっ、はあっ……」ゼエゼエ

RN「はっ、ふーっ、はぁっ……」スーハー

MY「……」ハアッ,ハアッ


RIN「凄く疲れてる……」

DB「どうやら残りの体力でかなりの差がついているようだな。お前の言った通りだ」

KMR「SCOOOP……底が見えないユニットです」

RIN「…………」

DB「どうした、何を黙ってる」

RIN「だって、そんなに言われたら……」

DB「フン、どのみちお前は応援しか出来ないだろう」

RIN「な……そりゃあ、そうですけど!」

DB「勘違いするな。お前が落ち込んでいる暇は無いということだ」

RIN「……え?」

MUR「もう三曲目が始まるゾ! 準備して!」

RIN「は、はい!」

DB「……フン」

NTK「勝負は分からないからこそ応援を頑張れって、そう言えばいいだろ……?」ボソッ

TDN「大坊はそういう性格なんです。許してやってください」

DB「おい!」

RIN「それなら大坊さんもっ、ほら! サイリウム持って、一緒に応援しましょう!」ギュッ

DB「……今回だけだぞ」

NTK「うわぁ」

TDN「許してあげてください、オナシャス!」

DB「お前ら!」
169 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/04/12(水) 23:48:48.17 ID:0O2L4O9oo
バチン!

RN(三曲目が始まる前には一度ステージの照明が切られて、少しの間司会のMCが入る)


NSDR「皆さん、ここまでの二曲はいかがでしたか! そしていよいよ、次の楽曲がIU最後の曲になります!」

ザワザワザワ……

NSDR「いやぁ、振り返ってみるとこれまで様々な対戦が──」

ザワザワザワザワザワ!
「あくしろよ!」「もう待ちきれないよ! 早く出してくれ!」




RN(だから一曲目よりもインターバルは長いけど……)

遠野「はぁ、はぁっ、はあ……」

MY「大丈夫? 遠野ちゃん」

遠野「は、はい……大丈夫、ですっ……」スーハー

RN「泣いても笑っても、これが最後。勝とう、私たちの力を出しきって」

MY・遠野「」コクッ

RN「……あと、まゆ。さっきはありがとう」

MY「ふふっ、なんのことですかぁ?」

RN「もう、こんなときに……ううん、いいや。最後まで、その笑顔のままでいて」

MY「はい♪」


バチン!

NSDR「さあ! それでは! 皆さん準備はいいですか!?」

RN・MY・遠野「…………」コクッ

SMMR「はい! 私たちのステージ、最後まで楽しんでくださいね~!」ニコッ

ワアアアアアアアアアアアアアア!


NSDR「よし、参りましょう! ミュージック……スタートォッ!」
170 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/04/12(水) 23:49:46.19 ID:0O2L4O9oo
────────
P「だからさ、時間が無いんだよ! 頼むから通してくれ!」

「申し訳ありません。IDカードをお持ちでない方をお通しすることは出来ません」

P「ハァ~(クソデカため息) 顔見て分からない!? 俺モバPよ、モバP!」

「はぁ……あなたのようなアイドルは記憶にありません」

P「アイドルじゃねーよ! プロデューサーだよ!」

「そ、そうですか。申し訳ありません」

P「申し訳は聞き飽きたわぁ!」

「申し訳ありません。ですが、IDカードをお持ちでない方はお通し出来ません」

P「あのね、俺は本当に関係者なんだよ! そのカードもちゃんと貰ってる!」

「では見せていただけますか?」

P「家に忘れてきちゃったんだよ……頼む! この通りだから通してくれ!」

「そんなに大事なものを忘れますか?」

P「は?(威圧) おい、こっちだって忘れたくて忘れたんじゃないんだぞ! ほんの2,30分前まで病院のベッドで寝てたんだからな!」

「はあ……心中お察ししますが、IDカードをお持ちでない方はお通し出来ません」

P「それしか言えんのかこの猿ゥ!」

「申し訳ありません……」

P「申し訳は聞き飽きた、って二回も言わせるなや猿ゥ!」

スタスタスタ……

「何これ、揉めてるの?」「そうみたいですけど……」
171 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/04/12(水) 23:51:35.00 ID:0O2L4O9oo
「ああ、双葉さん、森久保さん。お帰りですか?」クルッ

ANZ「そだよ。巻き込まれるのは勘弁だから、早く通してくれないかな」

「はい、どうぞ」スッ

ANZ「ありがと」

MRKB「」ペコリ

「さて、貴方は……ん? いつの間にか、居なくなっている……?」

スタスタ……

ANZ「ふぁあぁ~。まったく、クリスマスイブにまで働かせるなんてとんでもないよね」

MRKB「何か、予定があったんですか?」

ANZ「え? いや、無いけどさ。雪も降ってるみたいだし、こんな日は部屋でゴロゴロするのが一番だよ」

MRKB「そ、そうですか……」

トントン

ANZ「なに、どうしたの……」クルッ

P「」ニコニコ

ANZ「うわあっ!」

MRKB「え……? ひいいっ!?」ガタッ

P「いやぁ、今日はやけに懐かしい顔と巡り合うな。久しぶり、俺のこと覚えてる?」

MRKB「あ、新手の詐欺師ですか……?」

P「違うわ!」

MRKB「ヒッ!」ガクガク

ANZ「あー、なんとなーく覚えてるよ。364プロのプロデューサーだっけ」

P「そうだよ(肯定)」

MRKB「お、思い出しました……あのライブのことは、あまり思い出したくないですけど……」

ANZ「途中で気絶しちゃったからねぇ」
172 : ◆8Zk9bbuSBI :2017/04/12(水) 23:53:38.10 ID:0O2L4O9oo
P「二人ともスペシャルステージに出てたのか? 」

ANZ「うん。どーしてもって頼まれたから、年末年始を確実に休みにしてもらうってことで手を打ったよ」

P「ほー。相変わらずだな」

ANZ「……っていうか何の用? 杏たち、帰るところなんだけど」

P「一つ、俺に雇われてくれないか?」

ANZ「無理」

MRKB「杏さんが無理なら、森久保もむーりぃ……」

P「いやまだ無理か分かんないだろ! せめて内容を聞け!」

ANZ「じゃあ報酬だけ聞いてあげる」

P「これだよォ~、凄く美味しいんだぞ~?」

P(かな子のお菓子、たくさん貰っといて正解だったぜ!)

ANZ「えー、ただのチョコ菓子じゃん。これ一個だけなの?」ヒョイパクッ

P「あ、おい! 不労所得だぞ!」

ANZ「ん、これおいしいね」モグモグ

P「……まだあるよ~? あげるから雇われてくれるかな~?」チラチラ

MRKB「お菓子で小学生を拐う悪い人みたいですけど……」

P「……」ジロッ

MRKB「あっ、な、なんでもないです、けど……」

P「けど、そのお菓子はちょっと食べてみたいです~ってか? おい、コラ」

MRKB「あぅ……そうですけど……」

ANZ「ね、杏にももう一個ちょうだい?」

P「……あげるよ、あげるからさ、一つだけ頼みを聞いてくれよ」

ANZ「えー、でもな~」

P「土下座でもなんでもするから! お願い!」

ANZ「ん? 今なんでもするって言ったよね」

P「ああ、なんでもしてやる! 土下座でもホモビ出演でも好きにしろ!」

ANZ「むー、しょうがない。そこまで言うなら一つぐらい頼まれてみるかぁ」

P「よしきた! じゃあさっきのとこに戻るぞ!」ガシッ、ダッダッダッッ

ANZ「うわっ、引っ張るなー!」ヒュ~

MRKB「森久保にも、お菓子……」ヒュ~
173 : ◆8Zk9bbuSBI [sage]:2017/04/12(水) 23:54:04.30 ID:0O2L4O9oo
とりあえずここまで