フードファイト。
それは伝統的な文化であり、世界中の女子の嗜み。
喰えば完食、馳走は早く、食す姿は零れなし。
膳の掟、料理の心―――
これは、食の戦場を駆け抜ける少女たちの物語であるッ!
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フードファイト・ウォー! 第1話 『開幕!フードファイト!』
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【LIVE】 ―戦車道フードファイト―
審判「両者、礼っ!」
ローズヒップ「いただきますでございますわっ!」ペコリ
エリカ「……いただきます」
審判「位置について、用意っ!」
\パパパパパウアードドンッ!/
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1494053090
このお話の世界では特殊なカーボンにより選手たちの肉体の安全には十分配慮されています。実際に行うと非常に危険ですので絶対にマネしないでください。料理はよく噛んでゆっくり味わいながら食べましょう。
王「両者一斉に駆けだしました! スタートランを制し、先にサンドイッチに手を伸ばすのはどちらだーっ!?」
ローズヒップ「聖グロいちの俊足が走りで負けるわけがねぇのですわー!」ドドド!
エリカ「くっ!」タッタッタッ!
<イケークルセイダー! ガンバレー! フウキヲマモッテオウエンシナサイ!
王「さぁー始まりました! 戦車道連盟主催フードファイトォッ!」
王「実況はわたくし、大洗の天に輝く五つ星こと、王大河がお送りします!」
<イイゾー! ウォンタイガー!
愛里寿「解説の島田愛里寿。好きな食べ物は牛丼、アタマの大盛り」
<アリスステキヨー! タイチョーカワイー!
王「パンツァージャケット映える晴天に恵まれた本日、茨城県立カシマサッカースタジアムよりお届けして参ります」
王「Aグループ第1試合は聖グロリアーナvs黒森峰という好カード! 白熱した試合展開が予想されます!」
愛里寿「えっと、『礼儀を持ちて誇りを懸けよ』? 合ってる?」
<アッテマスタイチョー! カワイー!
愛里寿「よかった! 私もボコのフードファイト回を思い出しながら頑張るけど、3人ともお手伝いよろしくね」ニコニコ
王「カンペを用いた4人羽織のバミューダ解説、期待しております!」
王「さあ! そうこうしているうちにローズヒップ、テトラーク並みの素早さでサンドイッチが大量に置かれた大テーブルへと到着ゥ!」
愛里寿「あのテーブル、TOGⅡの形してるんだね」
ローズヒップ「先手を取りましたわー! サンドイッチがよりどりみどりでございますのよー!」ブイッ
王「ローズヒップ、余裕のVサイン! アルデンヌの森は自然の要塞だったか!? 聖グロが電撃戦で黒森峰に勝利だァーッ!」
愛里寿「これで食事時間を稼げた。けどローズヒップさんは早く走った分、体力を消耗したはず」
王「犠牲を払いながらも黒森峰からの逃げ切りを図ったわけですね! サンドイッチのダイナモ作戦、ダンケルクだいてったぁーいっ!」
ローズヒップ「ダージリン様の作戦通り、きゅうりサンドを独占してやりますわ-!」スッスッスッ
エリカ「くそっ!」タッタッ!
ローズヒップ「ごめんあそばせでございますわーっ!」スススッ
王「おーっとローズヒップ! 見事にきゅうりサンドばかりを自らの手中に納めた! フードファイトの空中戦、バトル・オブ・ブリテンを制します」
王「少し遅れて黒森峰逸見が到着! 既に残っているのはハムサンド、エッグサンド、ツナサンドとお腹に溜まりやすいものだけだが!?」
愛里寿「この試合は食べたサンドの数で勝敗がつく。食べやすいものを優先する方が圧倒的に有利」
王「もはやアシカは上陸不可能! チェーンホームを前にして戦車砲は届かなーい! これは早くも勝負がついてしまったかぁー!?」
ローズヒップ「大家族で育ったわたくしの食事スピードを舐めるんじゃねぇでございますわー!」パクパクパクッ!
ダージリン「見事な食べっぷりよ、ローズヒップ。はい、どんどん。はい、じゃんじゃん」ニコニコ
まほ「エリカ、相手にペースを乱されるな!」
エリカ「はい、隊長っ!」パクッ パクッ
王「本試合、選手のセコンドには聖グロリアーナ女学院戦車道チーム隊長ダージリンさんと、黒森峰女学園戦車道チーム隊長西住まほさんがついております」
王「セコンドは開始時点からテーブル横で待機しており、選手のプレイングのサポートをします!」
愛里寿「セコンドの補佐は何人居ても構わないルール。聖グロ側はオレンジペコさんたちも控えてる」
愛里寿「それと、貸してほしいって言われたからセンチュリオンも待機中」
王「あちらに停めてあるのは島田さんの戦車だったんですね」
愛里寿「スタジアムに許可も取ったよ」
王「聖グロは戦車を何に使うつもりなんでしょうか! 楽しみです!」
王「本試合のサンドイッチに使用されているパンは10枚切り食パンの耳落としとなっております」
愛里寿「けっこう薄いね」
王「なんでも、薄ければ薄いほど上品なんだそうです」
ダージリン「こんな格言を知ってる? サンドイッチはね、パ―――」
オレンジペコ「挟まれた方が良いお味を出すんですよね。でも今は関係なくないですか?」
ダージリン「まあ見てなさい」ンフ
ローズヒップ「んまーいっ! しっとりしたパンの間に挟まれたシャキシャキきゅうりと絡み合うたっぷりバターの風味が"まいうー"ですわー!」パクパク!
オレンジペコ「……格言というか、そのままですね」ハァ
王「ローズヒップ、ものすごい勢いでサンドを殲滅していくーっ!」
愛里寿「俊足と戦車の操縦のみならず、その摂食嚥下も拙速を尊んでいる模様」
王「無心ッ! 食卓<テーブル>という名のバックストレッチを反射神経で疾駆する姿はまさにアスコットのエクリプスだぁーっ!」
ダージリン「"Eclipse first, the rest nowhere."」ドヤッ
王「対する逸見は―――」
エリカ「はむっ! はむむっ!」ガブッ ガブッ
ローズヒップ「なんとっ!」
まほ「いいぞエリカ!!」グッ
王「おおっ!? 大口を開けてサンドを一度に3つ重ねて食べています!?」
愛里寿「まるでワニ。アニマルシリーズ?」
王「砂漠の狐かカプッツォの獅子か!? トブルク陥落ッ! めざせエジプトーッ!」
<シキカンタルモノゼンセンデメシヲクエ! オチツケエルヴィン!
ルクリリ「所詮ネズミよ! 爆弾を詰めてから石炭に混ぜて差し上げますわ!」
オレンジペコ「チャーチルはトーチ作戦の説明にワニの絵を使い、固い鼻と柔らかい腹の同時攻撃を提案しました」
ダージリン「ロンメルサンドの出来上がりというわけね。頑張って、モンゴメリー」クスクス
ローズヒップ「ダージリン様? わたくしの名前はローズヒップでございますわ?」モグモグ
王「聖グロは余裕のようですが、黒森峰のこの追い上げ! 時間当たりの食べた数としては黒森峰の方が多いのではないのでしょうか?」
愛里寿「だけど顎や食道に負担がかかる。制限時間いっぱいこのペースは無理かも」
ダージリン「それにしても、レディーのすることではなくってよ」
アッサム「そろそろ第2戦線展開のタイミングかと、ダージリン」
ルクリリ「マンシュタインプランをシュリーフェンプランに書き換えてやりましょう! 逆メヘレン事件よ!」
ダージリン「そうね。ペコ」
\キュポラッ/
オレンジペコ「お紅茶の用意できています」スッ
王「おやぁ? センチュリオンの車長ハッチから出てきたオレンジペコさんが持っているのは―――ティーポットだーっ!」
愛里寿「確かにセンチュリオン砲塔内部にはBoiling Vesselがあるけど、普通の給湯器を用意すればよかったんじゃ……」
ダージリン「だって使ってみたかったんだもん」
オレンジペコ「こういう機会じゃないとセンチュリオンに乗れませんもんね」トポポ
アッサム「それに通常の湯沸かしよりも温度が低くなるので、より飲みやすいお紅茶になります」キリッ
王「わたくしも一度聖グロにお邪魔して紅茶とサンドイッチをいただきましたが、あれは素晴らしい味わいでしたよ!」
愛里寿「いいなぁ。私も飲んでみたい」
王「さて、この大量の紅茶をどうするのでしょうか。わたくし、てっきり戦車から空砲を撃って黒森峰を妨害するのかと思ってました」
愛里寿「それだと敵味方両方に甚大な被害」
ダージリン「どこかのチームはうちとの親善試合の前、ブーム海軍大将のように空砲を目覚まし代わりにしたみたいだけど」フフッ
<ワタシタチノコトデスヨ,ニシズミドノ エェッ!?
ダージリン「準備はよろしくて? それじゃ、コッパーヘッド(まむし)作戦、開始」
ローズヒップ「わっかりましたでございますわー!」ゴクゴクゴクッ!
王「な、な、なんとぉっ! 聖グロのクルセイダー、大量の紅茶でサンドイッチを流し込む作戦に出ました!」
愛里寿「本大会は外部から飲食物の持ち込みを一切制限してない。ルールの穴をついた上手い作戦」ムフーッ
まほ「待て! これは邪道食いじゃないのか!?」
ダージリン「あら? サンドイッチを重ね食べさせている人が何かおっしゃっているようで」
オレンジペコ「邪道食いとは、食べ物本来の味を損なう行為のことです。むしろお紅茶とサンドイッチのセットは王道中の王道ですね」
アッサム「何よりルール上問題ありません。貴女も黒森峰なら規則を遵守してください」
まほ「くっ……」
愛里寿「聖グロの皮肉、ちょっと怖い」
王「ローズヒップ、次々と標的サンドを撃滅させる様はオーストラリア製センチネルの連射攻撃のようです!」
エリカ「水分摂取は死亡フラグよ! 勝手に自滅するがいいわ!」ガブリガブリ!
ダージリン「それはどうかしら?」フフン
オレンジペコ「この試合は短期決戦型。喉に詰まらせることなく胃に入れることが何より重要です」
オレンジペコ「それだけじゃありません。このお紅茶は我が校独自のフレーバーをベースに改良を加えたもの」
オレンジペコ「士気向上のみならず、興奮しやすいローズヒップさんの冷静さを保つよう調合された特殊なお紅茶なんです!」
ローズヒップ「ぬるめのお紅茶のマジカルパワーがチョークールでございますわッ!」バクバクッ!
愛里寿「カヴェナンターみたいにならないといいけど」
王「場内に魔法のような爽やかな香りが漂います」
エリカ「そんな精神論、私には通用しないわッ!」モグモグ!
ダージリン「そろそろ紅茶がキいてきたはず。ローズヒップ、エンジンキャブレターのガバナーを外しなさい」
ダージリン「……常に動き続けて、食し続けるのよ」ニヤリ
ローズヒップ「リミッター外しちゃいますわよー!」ゴクゴクゴクッ!
エリカ「ッ!?」
オレンジペコ「は、早いっ!」コポポポ
王「聖グロの快速戦車、ここでトップギアァーッ! 紅茶装填手のスピードが追い付かなーいッ!」
愛里寿「でも逸見さんの指摘通り胃の内容量が増えるから諸刃の剣。スピードに自信がないと普通はできない」
王「黒森峰に衝撃走る! コマンド部隊ノルウェー上陸を目前に、大西洋の壁は間に合うのかーッ!?」
まほ「なんだあれは!? ホントにただの紅茶なのか!?」
ダージリン「ルクリリ、ペコを手伝ってあげて」
ルクリリ「お任せくださいっ!」コポポポ
愛里寿「装填手が2人……チャレンジャー」
王「これが聖グロの秘策! 英国面! ロンドンの霧のように深く厚いベールが今あらわになりましたーッ!」
愛里寿「FIDO、滑走路バーナー?」
<シルバーストーン? ウッドコートシケインダネ! イヤカンケイナイカラ
王「もはや彼女はクルセイダーではありません! ミーティアエンジン搭載のクロムウェルッ! 探していた、見失っていた光は、ロンドンの風の中にありましたーッ!」
<ラッキーガールスパイクアウトォ! マッテマシタコノシュンカン! アリガトー! アヒルサンチームドウシタ?
ローズヒップ「きゅうりサンド、お紅茶、きゅうりサンド、お紅茶でございますのよー!」ゴクゴクッ!
ルクリリ「はーっはっはっは! 黒森峰など敵ではないわっ!」トポポポ
ダージリン「大事なことはポイントを一突きすること」
オレンジペコ「チャ、チャーチルですね」トポポポ
ダージリン「ここにおいては、そう。『速さ』ですわ」キリッ
王「大蛇のように呑み込んでいくーッ! サンドイッチのノルマンディー上陸作戦だぁーッ!」
王「さあ制限時間は残り2分を切りましたが、対する黒森峰は……むむッ!?」
愛里寿「えっ……!?」ガタッ
エリカ「―――はむむっ! はふふっ!」ガブッ ガブッ!
ローズヒップ「マジですのッ!?」ビクッ
王「ご、ご、5個重ねーッ!?!? 人間の限界に挑戦していますッ!!」
愛里寿「パン1斤を丸かじりしてる……」プルプル
王「女を捨てた肉食獣ッ! ミドガルドシュランゲッ! 奴に噛み砕けないものは無いというのかーッ!?」
ダージリン「落ち着きなさい、ローズヒップ。食べられるかどうかを疑った瞬間、永遠に食べられなくなってしまうわ!」
ローズヒップ「ッ!!」
ダージリン「貴女は騎士道精神で優雅に勝負すればいいの。そう、マッド・ジャックのようにね」ニコ
オレンジペコ「バグパイプ演奏でもする気ですか!?」トポポポ
ダージリン「世界が成長とともに堕落したのよ」
ローズヒップ「がんばりますでございますのよォ~っ!」モグモグ
王「ローズヒップ、この試合で何かを感じているようです! 成長が止まらなーいっ!」
王「両者一歩も譲らず! この勝負、一体どちらに軍配が上がるのかぁーッ!?」
王「さあ残り時間30秒ッ! 会場では過酷なデッドヒートならぬフードヒートが繰り広げられていますッ!」
愛里寿「ふたりとも少しペースが落ちてきた」
王「途中経過ですが、現在のところ聖グロがわずかにリード! これはコッパーヘッド作戦が功を奏したか!?」
まほ「エリカッ!」
エリカ「…………」ピタッ
王「おや!? 逸見、手が止まりましたが、まさかここでギブアップなのかぁーっ!?」
愛里寿「ううん、これは……」
エリカ「胃袋よ、ほら、サンドイッチだわ……! ハァァァ……!」コォォォォ!
王「か、彼女は一体なにをしているんでしょうか!? なにやら強烈なオーラを放っております!」
愛里寿「これは、"自律神経系"」
王「自律神経系!?」
愛里寿「人間は、口、消化器官、肛門といった、食事にかかわる器官の働きが副交感神経に左右されている」
愛里寿「内臓筋は意志によって動かせない不随意筋。だから副交感神経の支配は食の支配と同じ」
愛里寿「彼女は瞬間的に脳内麻薬を放出、胃酸と蠕動を自在にコントロールしている」
愛里寿「そして交感神経を刺激し幽門を開放することで、胃から十二指腸へ食べ物を送り出している……」
王「で、ですが交感神経と副交感神経はシーソーのような存在! 両方を活性化させるなど―――」
愛里寿「もちろん同時には無理。だけど、それが交流電流のように変化するとしたら?」
王「彼女は今日のために肉体改造を行ってきたとの情報ですが……おーっと! 逸見、信じられなーいッ!」
エリカ「ガブッ! ガブブッ!!」グルン グルン
ローズヒップ「ヒィッ!?」ビクッ
まほ「っ!?」ビクッ
王「全身をひねっていますっ! 噛み千切る補助動作として身体をツイストしていますッ!」
愛里寿「デスロール……」
<バケモノゼヨ!? オニシマヅ!? アポカリプスビースト!? イヤ、P1500モンスターダロ! ソレダ!
王「今までの倍の速さで手当たり次第にサンドイッチを撃破ァーッ! 戦いの歓喜を無限に味わっているかのようだぁーッ!」
ダージリン「っ……」
ルクリリ「た、助けて東部戦線っ!」ウワーン!
アッサム「は、挟まれた方が良い味出すのよ」プルプル
オレンジペコ「それは血の味というブラックジョークでは……」ビクビク
王「聖グロに恐怖の味を思い出させていくッ! 食のフランケンシュタインコンプレックス逸見エリカーッ!」
王「聖グロを制す様はまさにヴィレル・ボカージュ! ティーガーの騎士、ここに見参ッ!」
<ヴィットマンキュウハウチノタイチョウダゾ! エルヴィンサンオチツイテ!
王「小手先のテクニックではなく、己の肉体の圧倒的なパワーで英国貴族の嗜好品を蹂躙するッ!」
王「胃袋の報復兵器ッ! 食欲の陸上戦艦ッ! これが真の西住流なのかぁーッ!?」
<チガウヨ!?
ダージリン「あれが、ロイヤル・タイガー……」
まほ「エ、エリカ……」
エリカ「ハムッ! ハムムムッ!!」グルン グルン
ローズヒップ「お~の~れぇ~ッ!」パクパクパクパク
王「聖グロ、ATシリーズのごとき守備力で防衛なるか!? それともマーケットガーデン作戦となってしまうか!? 残りあと3秒ッ! 2、1……ッ」
ビーーーーーーーーーーーッ!
王「し~あ~い~しゅ~~りょ~~~~ッ!! 勝ったのは、どっちだぁ~~ッ!?」
審判「勝者―――」
黒 森 峰 女 学 園 ッ !!
王「やりましたァーッ! 勝者、黒森峰副隊長、逸見エリカーッ!!」
エリカ「―――私の胃袋は、宇宙よッ!!」
ローズヒップ「ごちそうさまで……ございますわ……」バタッ
<ワーワー! ドレスデンボウエイ! チュウケンー! カペルスウェイトー!
王「逸見、勝利のガッツポーズ! 黒森峰、Aグループ準決勝進出決定ッ!」
王「ここに巡航戦車、歩兵戦車の歴史が幕を閉じる! ローズヒップ、試合終わっての一言め……まさに"ごちそうさま"、と言った感じでした!」
王「情報によりますと、黒森峰の追い上げ逆転勝利。しかもサンドイッチ1つ分という僅差とのことです」
王「いやー解説の島田さん。今試合、直接的な勝因はなんだったでしょうか」
愛里寿「試合の組み立て方。ギリギリまで敵に手の内を晒すのを我慢できた黒森峰の作戦勝ち」
王「なるほどー。ですが、手の内を見せれば次戦以降は対策を立てられてしまうのでは?」
愛里寿「それはどこのチームも同じ。あるいは次の策を用意してるのかも」
王「次の試合が楽しみです! なお、余ったサンドイッチは会場にご来場のお客様に無料で振る舞われます」
愛里寿「一旦CM」
―CM―
♪パーパパパッパッパッパッパパパーパッ! ~
この度、大洗ボコミュージアムがリニューアルオープンしました!
♪やってや~るやってや~るやぁ~てやるぜ~
『おう! よく来やがったなお前たち!』
♪い~やなあ~いつをボ~コボコに~
可愛いボコたちが大集合! アトラクションで大冒険!
♪け~んかは売~るものど~うどうと~
『ボッコボコにしてやるぜ!』
♪か~たでか~ぜ切りタ~ンカ切る~ ジャン!
ボ コ ミ ュ ー ジ ア ム
(株)島田コーポレーション
―CM裏―
<聖グロベンチ>
救護班「バイタルチェック終わりました。何かありましたらいつでも救護テントまでどうぞ」
ローズヒップ「ゴポッ……お、お紅茶で溺れそうですわ……」クターッ
ダージリン「ローズヒップ、貴女はよく頑張ったわ。戦い方に気品が現れていてよ」ナデナデ
オレンジペコ「とっても素敵でした。ゆっくり休んでください」ニコ
ルクリリ「でも悔しいですぅ! 今日はVEデーになるはずだったのにぃ!」
アッサム「私のデータによれば勝率は90%を超えていました。黒森峰の暗号は解読していたのに、一体どうして……」
ダージリン「あら? ホームズさんは黒森峰が何か不正を働いたとお考えですの?」
アッサム「い、いえ、そういうわけでは……」
ダージリン「例えそうだとしてもルールは穴だらけ。不正を指摘できないこちらが悪いのです」
アッサム「はい、ダージリン……」
ダージリン「それに、私はローズヒップの方がサンドイッチをおいしく召し上がっていたと思いますわ」
ダージリン「バーナード・ショー曰く、食物を愛するよりも誠実な愛はない」
オレンジペコ「愛の深さでは私たちは負けていない、ということですね」
アッサム「空爆を受けてもなお鳴り響き続けたウェストミンスターの鐘のような心の強さですわ」
ダージリン「そもそもサンドイッチは一度に3個も重ねて食べるものではありませんっ」プンプン
オレンジペコ「お紅茶で流し込むように食べたことは棚上げなんですね……」
アッサム「サンドイッチなのにイチド3個……3個イッチ……」フフッ
ダージリン「あらおかしい。そのジョークをエリカさんに送っていたら勝てていたかも」
オレンジペコ「……それはモンティ・パイソンです」
ローズヒップ「ぷっ! アッサム様サイコーですわ、あはは―――ごぽっ、ごほっ、がはっ! くるしっ!」バンバン
<黒森峰ベンチ>
まほ「……よくやった、エリカ。周りは色々言っているが、勝ちは勝ちだ」
エリカ「まだ初戦です。優勝するまで気を抜けません」
まほ「あ、ああ。そうだな」
救護班「あ、あの、バイタルチェックを……」
エリカ「必要ないわ。この通り、問題なしよ」
救護班「ですが一応――」
エリカ「今からトイレに行くの。ついてこないで」キッ
まほ「エリカ……」
エリカ「心配しないでください、隊長。私は大丈夫です」
まほ「……そうか」
エリカ「……失礼します」クルッ スタスタ
「――あ、あの、エリカさん!」タッタッ
エリカ「っ、あなた……」
みほ「はぁ……はぁ……」
エリカ「……ここは黒森峰ベンチよ。大洗のところへ帰りなさい、みほ」
みほ「で、でも、心配になっちゃって……」
エリカ「敵の心配をしているヒマがあったら自分たちの心配をすることね」フンッ スタスタ
みほ「あぅ……」
まほ「……みほ。エリカのことは私に任せてくれ」
みほ「……うん」
<通路 女子トイレ前>
エリカ「…………」スタスタ
ローズヒップ「あら」
エリカ「げっ」
ローズヒップ「エリカ様はお尻からサンドイッチをデファイアントでございますの? わたくしはお紅茶をロックですわ!」
エリカ「その下品なお口をBf109してあげましょうか? というか、せめて陸軍の話をしなさいよ」
ローズヒップ「アーチャー自走砲の方がよろしくて?」
エリカ「それ、トイレ間に合うの?」
ローズヒップ「ハッ! そうでしたわ! お先に失礼致しますわ!」ダダダ
エリカ「……ほかのところに行きましょ」クルッ
エリカ「…………」スタスタ
エリカ(……私は)
エリカ(―――私は、間違ってないわよね……)グッ
―次回予告―
♪エンター エンター ミッショーン ~
ついに始まった戦車道フードファイト。
エリカさんが勝ったけど、どこか様子がおかしい? 心配だな……。
次の試合はアンツィオ対継続。食材は"安斎さん"!?
次回! フードファイト・ウォー。『アンチョビのスペシャリテ』
みんなで一緒に、パンツァー・フォー!
♪ダカライッショ カモン!
おまけでボコのフードファイト回もやってください
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