―――346王国 城
王様「よくぞ来た、勇者ウヅキよ」
卯月「……はい?」
卯月(え、なんですかこれ? 気が付いたら目の前に王様みたいな人がいるんですが……)
王様「お主も知っての通り、今世界は魔王の復活によって滅亡の危機に瀕している……」
卯月「魔王!? あの、私そんなの知りませ―――」
王様「世界を救えるのは、勇者であるお主だけだ!」
卯月「そもそも私、勇者なんかじゃないですよ!?」
王様「勇者はみなそう言うのだ!」
卯月「そうなんですか!?」
王様「どいつもこいつもやれ『私は勇者なんかじゃない』『身に覚えがない』『弁護士を呼べ』などと抜かしおって……もっと自分の運命を自覚せよ! そういうとこだぞ!」
卯月「うぇぇ!?」
王様「とにかく頼んだぞ、勇者ウヅキよ! なんかこう上手いこと魔王を倒して、世界に平和をもたらすのだ!」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1494338600
―――346王国 城下町
卯月「うぅ、どうしてこんなことに……私、勇者じゃなくてアイドルなのに……」
卯月(あのまま流されるような形で送り出されちゃったけど……そもそもここって一体? 世界観からして違うし……まるでゲームの世界みたい)
卯月「ゲーム……あ、もしかしてこれ……夢かな? じゃあほっぺたをつねれば」ムニッ
卯月「……いたたたたっ!? え、夢じゃないの!? じゃ、じゃあ私、異世界に来ちゃったってこと!?」
ちひろ「その通りです」
卯月「うぇ!? ち、ちひろさん!?……なんか小さいし、空飛んでるぅ―――っ!?」
ちひろ「ええ、手のひらサイズですし、空だって飛びますよ。私はちひろではなく、導きの妖精ちっひですから」
卯月「妖精!? ちっひ!?」
ちひろ「あ、でも呼び方変えるのも面倒でしょうから、ちひろのままで結構です」
卯月「あ、それはありがたいです」
ちひろ「卯月ちゃん。あなたはこの世界を救うために、元の世界から事後承諾で転移させられました」
卯月「せめて承諾取ってからにしてくれません!?」
ちひろ「元の世界に戻る方法はたった一つ、魔王を倒すことのみです」
卯月「そんな!? む、無理ですよ、そんなの!」
ちひろ「大丈夫です。何度死んでも教会で復活できますから」
卯月「あ、やっぱりゲームみたいなシステムなんですね」
ちひろ「まあ死ぬ度に超絶痛みを感じますが」
卯月「今すぐ元の世界に返してください! 痛いの嫌です!」
ちひろ「我慢してください」
卯月「対応が冷たいっ!」
ちひろ「それと、私も旅に同行し適度に横からアドバイスをしますが、戦闘能力は皆無なのでその辺は期待しないようにお願いします」
卯月「ほ、本当に魔王倒さなきゃ駄目なんですか?」
ちひろ「駄目です。大丈夫、なんとかなりますよ」
卯月「なんとかなる根拠を教えてほしいです……」
ちひろ「ではまずは酒場に行って仲間を増やしましょう。まず間違いなく卯月ちゃんだけでは瞬殺されますし」
卯月「勇者なのに滅茶苦茶弱いんですね、私!」
―――楓の酒場
楓「いらっしゃいませ」
卯月「楓さん!? ど、どうして楓さんが?」
ちひろ「卯月ちゃんだけではなく、346プロのアイドルのほとんどがこちらの世界に転移しているんですよ」
卯月「みんな来てるんですか!?」
ちひろ「ただ転移にちょっと失敗して、みんなこの世界のあちこちにバラバラに跳ばされちゃったんですが」
卯月「それみんな無事なんですか!?」
ちひろ「命の心配はありませんよ。……なんかさっきからいちいちリアクションがうるさいですね」
卯月「そんなこと言われても! この状況で驚かないなんて無理ですよ!」
ちひろ「慣れてください」
卯月「慣れたくないです……。で、でもどうして楓さんは酒場をしているんですか?」
楓「酒場で働けば、お酒が飲み放題だからよ」
卯月「そんな理由なんですか!? ていうか商品飲んじゃ駄目ですよ!」
楓「まあまあ。それより卯月ちゃん、酒場には何か用があって来たんじゃないの?」
卯月「あ、はい。実はかくかくしかじかで……」
楓「なるほど、仲間を探しに来たのね。ならちょうどいい子が―――」
未央「楓さん、ビール追加で!」
卯月「未央ちゃん!?」
未央「……しまむー? わ、しまむーだ! 会いたかったよ、しまむー!」
卯月「み、未央ちゃんも酒場で働いてたんだね」
未央「うん。楓さんに一緒に酒場で働かないかって誘われたんだ。私の力を貸してほしいって言われて」
楓「未央ちゃん、あなたはクビよ」
未央「唐突すぎる解雇通告!? な、なんでですか楓さん!? 私何もミスしてないですよ!? もう要らなくなったんですか私の力!?」
楓「そうじゃないわ。卯月ちゃんが魔王退治の旅の仲間を探しているそうなの。だから未央ちゃん、一緒に付いて行ってあげて」
未央「え、しまむー、魔王倒そうとしてるの?」
卯月「そうしないと元の世界に帰れないらしくて……」
未央「なるほど、帰るためには魔王倒せばよかったんだね。そういうことなら任せて! この未央ちゃんが力になるよ!」
卯月「ありがとう、未央ちゃん!」
ちひろ「未央ちゃんが仲間になりました」
―――ソノヘンノ森
未央「さあ冒険の始まりだよ、しまむー」
卯月「勢いで旅立っちゃったけど……私たち、本当に魔王なんて倒せるのかな?」
未央「大丈夫だって。どうせらんらんが魔王だとかいうオチだよ」
ちひろ「それはないですね。蘭子ちゃんはこの世界に転移していませんので」
卯月「え? でもさっき、みんな転移してきているって言っていましたよね?」
ちひろ「ほとんどと言ったはずですよ。蘭子ちゃんはこっちに来たら面倒なことになりそうなので、呼びませんでした」
未央「面倒って言い方はあんまりじゃない?」
ちひろ「蘭子ちゃんがこっちに来たら、自ら魔王を自称して近隣の町の傭兵に討伐されてしまうかもしれないんですよ?」
卯月「……お空に上がった時にそんな感じだったので、否定できないです」
未央「……それだと、確かに呼ばない方がいいかもね」
『きゅぴー』
卯月「きゅぴ?……な、何かいます!?」
未央「こいつは……魔物だよ!」
ちひろ「それはスライムですね。ザコなので、とっとと倒しちゃってください」
卯月「とっととって言われても……」
ちひろ「その腰に付けている剣で、ザシュッとやっちゃえばいいんですよ」
未央「これくらいの敵なら、しまむーだけでも倒せるよ。やっちゃえ!」
卯月「う、うん……」
スライム『きゅぴー』
卯月「ざ、ザシュッと…………」
スライム『きゅぴぃ~』
卯月「…………」
スライム『きゅぴぃ~……!』
卯月「無理です! 私には出来ませんっ!」
未央「なんで!? そいつ多分一撃で倒せるよ!?」
卯月「たとえ魔物でも、剣で斬るなんて残酷なこと……私には無理です!」
未央「え、えぇー……それを言ったらもうどうしようもないよ? 旅ここで終了だよ? まだ旅立ってから30分も経ってないのに」
ちひろ「大丈夫ですよ、卯月ちゃん。卯月ちゃんたちの武器には特別な魔法がかけられているので、魔物を傷つけることはありません」
卯月「特別な魔法?」
ちひろ「その武器で攻撃して魔物の体力が無くなると、魔物は魔界に送還されるんです。殺したりすることはありませんので、思いっきりやっちゃって大丈夫ですよ」
未央「だってさ、しまむー。随分都合がいい設定だけど、これなら戦えるよね?」
卯月「そ、そういうことなら……えいっ!」ザシュッ
スライム『きゅぴっ!?』シュワァァ
未央「あ、ホントだ。光に包まれて消えてくよ」
ちひろ「テレレレッテッテッテー♪」
未央「レベルアップ音!?」
ちひろ「今の戦闘で、卯月ちゃんのレベルが2に上がりました」
卯月「この世界観、本当にゲームなんですね……」
ちひろ「ちなみに、未央ちゃんは今レベル5です。酒場で働いていたおかげですね」
未央「戦闘以外でも経験値貰えるんだ」
ちひろ「そして、今の戦闘でチュートリアルは終了となります」
卯月「ここまでチュートリアルだったんですか!?」
ちひろ「ここからは本格的な冒険が始まります。元の世界に帰るために、頑張って魔王を倒してくださいね」
卯月「……で、出来るだけ、頑張ります」
なので旅の途中で唐突に魔王戦に突入する可能性がありますが、ご了承ください
ageんな[ピーーー]
こういう奴は減らないよな何様よ
0 件のコメント :
コメントを投稿