※地の文アリ
※時系列は原作4巻カバー裏おまけ漫画の後ですが、読んでいなくても全く問題ありません
※次レスから悪魔的行為開始
ラフィ「あらヴィーネさん」
そんなことを考えていたら、見知った天使の声が聞こえた。比喩ではない、事実として彼女はあれでも天使なのだ。
ヴィーネ「ラフィじゃない、もしかして貴女もガヴのところ?」
ラフィ「いえ、私はこれからサターニャさんで遊びに」
ヴィーネ「今確実にサターニャ『で』って言ったわね」
そうですか、などと無垢な笑顔で宣う。私が言えたことではないけれど、本当に天界は大丈夫なのだろうか。こんな人が次席でアレが主席だなんて。
本当ならそうしたいところなんだけれどね。あの子とても可愛いし、その気があればいくらでも私が見繕ってあげるのになあ。でも絶対に面倒臭がるし。はあ、勿体ない。
ヴィーネ「ううん、掃除よ掃除。ほっとくとすぐゴミ屋敷になっちゃうんだから」
最初の内は自分でやるように促したり、せめて少しでも手伝ってもらおうとしたり頑張ったんだけどね。最近はもう諦めてほとんど私一人であの子の部屋を片付けている。
ラフィ「あらー、甲斐甲斐しいですね。通い妻みたいです」
か、通い妻!?
顔が熱くなるのを感じた。もう、急に何を言い出すの。
ラフィ「前々から思っていたんですけれど――」
見れば、ラフィが満面の笑みを浮かべている。うう、嫌な予感がする。あれはサターニャを弄っているときと同じ表情だ。
ラフィ「どうしてそんなにガヴちゃんのお世話をするんでしょうか」
ヴィーネ「そ、それは……」
ガヴリールが、どうしようもない子だからだ。自堕落だし、宿題やってこないし、すぐ学校をサボろうとするし。誰かが監督してあげないともっと駄目になっちゃいそうで。
ラフィ「もしかして、そうやってガヴちゃんを自分に依存させて堕天させようとしているとか?」
ヴィーネ「えっ」
依存。
ガヴが、私に依存?
天真=ガヴリール=ホワイトは、駄目な天使だ。私がしなければ掃除もしない。私が誘わなければ外にも出ないで一日ずっとゲームをしている。宿題は私と一緒じゃないとやらない。私がいなくて食事をまともに摂れなかったことだってあった。
そう、あの日最の子が最初に助けを求めたのは――私だったじゃないか。
ラフィ「なあんて……あら、もうこんな時間」
ラフィ「早くサターニャさんを導いてあげないと、それではごきげんよう」
足早に去っていくラフィエルに、しかし私は挨拶も出来ぬまま呆然としていた。
もしかして本当に、あの子は私に依存してしまっているのではないか。
ラフィ「私、最低だ……」
へたりと、その場に座り込んでしまう。立って歩く気力がなかった。
でもその実、どうだろうか。中身はそんな綺麗なものではなかったのかもしれない。私はあの子を利用して、自分に依存させて、堕落させていたのではないか。思い返せば、海に行った時だってハロウィンの時だって、あの子は乗り気じゃなかった。私が無理矢理、やらせていただけなんじゃないか。
ラフィ「ガヴ……」
名前を呟く。そうすると、あの子の色んな思い出が蘇ってくる。私は、私はずっと楽しかったと思っていた。苛つくことも、迷惑に思うときだってあった。けれどそういうのも全部ひっくるめて、私は楽しかった。
なのに全部、まやかしだったのだろうか。私が一方的に想っていただけだったのだろうか。
胸が苦しい。これまでに感じたことのないような、痛みだ。涙が出そう。
prrrr
ビクッと背中が震えた。あまりにもタイミングが良すぎたからだ。この着メロは、ガヴ用に設定したものだ。
一つ、深呼吸する。
ガヴ『あ、ヴィーネ? お前家に来るだけで何分かかってるんだよ』
家を出る前、電話で今から行く旨を伝えていたのを思い出した。
ガヴ『何かあったのか?』
ヴィーネ「う、ううん、大丈夫。ちょっとラフィと会って話し込んじゃって……。もう目の前だから切るね」
切り替えていかないと、ガヴに心配させてしまうかもしれない。否、それも私の悪行ではないのか。心配してくれたとして、それは私が依存させているからだ。
思考が悪い方向にしか行かない。こんなんじゃ駄目だ。
ヴィーネ「早く、ガヴのところに行かないと」
口に出して、身体に鞭を打つ。なんとか立つことが出来た。
再び歩きだし、扉の前で更に深呼吸をする。
ヴィーネ「お邪魔するわよー」
鍵は開いていた。
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