彼女たちと触れ合う度に、胸の奥から湧き上がるこの感情……それがなんなのか、ずっと考えていた。
考えに考え、考え続けた結果……アタシはようやく、一つの答えに辿り着く。
美嘉「事務所の年下の子たち、みんな妹にしたい」
奏「寝言は寝て言うものよ、美嘉」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1494506840
*
346プロ1階のカフェテラスにて。
アタシは奏と唯に自らの心情を吐露していた。
美嘉「だって、みんな可愛すぎない? みりあちゃんたち小学生組は言わずもがな。中学生組と高校生組も、それぞれまた違う可愛さがあるから……アタシの姉性本能がくすぐられにくすぐられて、もう我慢の限界!」
唯「え、姉性本能なんてあるんだ!」
奏「ないわよ。というか美嘉、あなたには莉嘉という本物の妹がいるでしょう?」
美嘉「もちろん莉嘉は大事な妹。それは絶対に揺るがないけど……妹って、何人いてもよくない?」
唯「なるほど、確かにそーかも☆」
奏「いや、よくないでしょ」
奏が何か言っていたが、無視して続ける。
美嘉「だからアタシは決めた……」
一呼吸おいて、アタシは自らの決意を口にする。
美嘉「事務所の子たちで、妹ハーレムを作る!」
奏「……」
唯「……」
アタシの宣言に、どうやら奏と唯は呆気に取られているようだ。
まあ無理もない。この夢は、あまりに大きすぎるから。
アタシは2人の魂が戻ってくるまでゆっくりと待つことに―――
奏「病院行ったら?」
美嘉「アタシどこも悪くないけど!?」
奏「正常な精神状態で今の発言をしたのだとしたら、そっちの方が問題なんだけど」
美嘉「別にアタシ、おかしなことなんて何も言ってないでしょ!」
まったく、どうして奏はいつもアタシをからかってくるんだろ。
奏「……その目は本気みたいね。まずいわ、唯。美嘉がこれ以上遠くへ行かないうちに私たちで止めないと―――」
唯「美嘉ちゃん! その夢、ゆい応援するよ!」
奏「唯!?」
美嘉「唯ならそう言ってくれると思ってた!」
アタシは唯と、がしっと握手する。
唯「でっかい夢だけど、美嘉ちゃんならきっと叶えられるって☆」
美嘉「うん! きっとアタシ、叶えてみせる!」
そうした友情のやりとりをしたのち……2人で奏に視線を移す。
美嘉「……」
唯「……」
無言でじーっと見つめ続けるアタシと唯。
その視線を受けると、奏は小さくため息をつき、ようやく口を開いた。
奏「……もう好きにすれば?」
美嘉・唯『やりぃっ!』
その言葉に、思わずハイタッチしたアタシたちだった。
*
コーヒー飲んだりしてちょっと休憩したのち、話再開。
奏「それで、妹ハーレムって何をするつもり?」
美嘉「だから言ったじゃん。みんな妹にするの」
奏「おかしいわね、日本語ってここまで難しかったかしら」
唯「とりあえずはお姉ちゃんって呼んでもらうことからだよね~」
美嘉「だね。形から始めるの大事だと思う」
奏「どうして唯は話についていけるの……?」
なんか奏がブツブツ呟いている。今日の奏は少し変だなぁ。
唯「それで美嘉ちゃん、どの子から妹にする?」
美嘉「うーん、悩みどころだよね……」
どの子も可愛いから早く妹にしたいけど……ここはやっぱり。
美嘉「やっぱり、まずはあの3人かな」
*
翌日、アタシはカフェテラスに3人を呼び出し、開口一番に告げた。
美嘉「アンタたち、お姉ちゃん欲しくない?」
卯月「はい?」
凛「急に呼び出されたと思ったら、なんの話?」
未央「お姉ちゃんかー」
そう、呼び出したのはニュージェネの3人。卯月、凛、未央。
未央「私、男兄弟しかいないから、お姉ちゃん欲しかったなー」
卯月「私もお姉ちゃんって憧れかも。一人っ子だから」
未央と卯月は脈あり、と。
美嘉「それで凛は?」
凛「まあ、姉がいたらどんな感じなのかな……とかは考えたことあるけど」
美嘉「そっかそっか」
よし、凛も脈あり。
3人の意思を確認したところで、アタシは思い切って告げる。
美嘉「じゃあそんなお姉ちゃんが欲しい3人に朗報! 今日からアタシがアンタたちのお姉ちゃんになってあげる★」
『…………』
アタシのナイスな提案を聞くと、3人とも黙り込んでしまった。
よっぽど嬉しかったみたい。
卯月「え、えーっと……?」
未央「……」
凛「美嘉、何言い出してるの?」
美嘉「だからお姉ちゃんだって★ 欲しかったんでしょ?」
凛「欲しいとは言ってないし、美嘉になってとも言ってないよ」
美嘉「またまた照れちゃって。さ、お姉ちゃんって呼んでみて」
凛「呼ぶわけないでしょ……」
未央「お姉ちゃんっ!」
凛「未央!?」
未央はお姉ちゃんと呼ぶのと同時に、勢いよくアタシに抱きついてきた。
美嘉「よーしよし、未央はいい子だねー」
未央「えへへー♪」
素直な未央を褒めつつ、頭を撫でてあげる。
とっても気持ちよさそう。
凛「……ノリが良すぎるよ、未央は。ね、卯月?」
卯月「いいなぁ……」
凛「……なんて?」
アタシはそこで、こっちを見る卯月の羨ましそうな視線に気付いた。
妹の気持ちを察してあげるのが、お姉ちゃんの役目だからね。
アタシは優しく微笑みながら、卯月に告げる。
美嘉「いいよ。卯月も遠慮しなくて」
卯月「!」
アタシの言葉を聞くと、卯月は一瞬ためらうような素振りをするも―――
卯月「お、お姉ちゃあーんっ!」
勇気を振り絞って、アタシに抱きついてきた。
凛「卯月まで!?」
アタシは抱きついてきた卯月を体の右側に寄せる。左側は未央のもの。
美嘉「よしよし、卯月もなでなでしたげるね~」
未央と同じように、優しく卯月の頭を撫でる。
卯月「あ……えへへ♪」
撫でられた卯月の顔は、満開スマイル。
うんうん、やっぱり卯月の笑顔は最高だよね。
……さて、これで残るは一人。
凛「……」
こっちを見る視線がさっきの卯月と同じになってるの、自分で気付いてるのかな。
美嘉「凛も来ていいよ?」
凛「わ、私はいいよ」
未央「しぶりん。お姉ちゃんのなでなで、すっごく気持ちいいよ~」
卯月「私、今とっても夢心地です……」
凛「う……」
凛、未央と卯月の幸せそうな表情と言葉に心が揺さぶられているみたい。
だけどまだ余計なプライドが邪魔をしているのか、葛藤を続けている。
……やれやれ、お姉ちゃんが素直にさせてあげますか。
美嘉「凛」
凛「な、何?」
美嘉「たまには、誰かに甘えたっていいんじゃない?」
凛「!」
美嘉「お姉ちゃんなら、甘えるのにはうってつけだよ? ほら、真ん中空いてるから」
アタシは卯月と未央に少しずつ左右にどいてもらい、真ん中のスペースを開ける。
すると、凛は俯いて下を向く。これは……凛、アタシの準備はOKだよ。
凛「お……お姉ちゃんっ!」
そして、恥ずかしそうに俯きながらも、ようやく凛がアタシに抱きついて来てくれた。
表情は見えないけど、多分顔真っ赤にしてるんだろうな。
美嘉「よしよし、よく言えたね~」
未央と卯月と同じように、凛の頭を撫でる。
わ、凛の髪さらさらだ。
凛「うぅ……」
美嘉「気持ちいい?」
凛「……う、うん」
美嘉「そっかそっか」
未央「お姉ちゃん、私もまたなでなでして~」
卯月「私にもお願い、お姉ちゃん」
凛「そ、その後でいいから……もう一回、私にもして。お、お姉ちゃん」
そうやって凛たちが3方向から、上目遣いでお願いしてくる。……これ、無自覚?
恐ろしい妹たち……こんなのされたら、断れるお姉ちゃんはいないよ。
美嘉「ふふっ、もちろんいいよ。でも順番にね」
『はーいっ』
元気よく返事をする3人。
普段この子たちはアイドルとして頑張ってるけど、こうしてるとまだまだ子供なんだなって思う。
さっき凛に言ったことじゃないけど、たまには誰かに甘えたって罰は当たらないよね。
まあ、それはさておき……未央、卯月、凛、妹攻略完了★
モバマスの年齢区分はバラバラ
かわいい
応援そして期待
期待しかない
*
未央たちを妹にした後、また奏と唯にカフェテラスに集まってもらった。
美嘉「―――そんなわけで、もう3人とも可愛くて可愛くて」
アタシの可愛い妹たち自慢を聞き終わると、奏と唯がそれぞれ反応を返してくる。
奏「よく上手くいったわね……」
唯「美嘉ちゃん、さっすがー☆ この調子で、どんどん妹増やしてこー!」
美嘉「もち★ そのつもり!」
奏「もうこの会話に慣れるしかないのかしら……?」
何か呟きながら、奏が手でこめかみを押さえている。
美嘉「奏、頭痛いの? 大丈夫?」
奏「……大丈夫よ。それで、次は誰にする気?」
唯「みりあちゃんがいいんじゃない? 美嘉ちゃん、仲良かったよね?」
美嘉「みりあちゃんかー……」
確かに仲は良いけど……難敵かもしれない。
みりあちゃん、時々すごく大人っぽいんだよね。
でも、結局は避けて通れない相手。
それにお姉ちゃんは……妹を前にして逃げたりはしない!
美嘉「よし、次はみりあちゃんに決定★」
*
ちょうどいいことに、アタシはみりあちゃんと一緒に遊びに行く約束をしていた。
みりあちゃんとアタシは、同じく妹を持つ姉同士。
たまにこうして2人だけで遊ぶことがあるのだ(ちなみに莉嘉には秘密)。
今日も2人で色々なお店を回って、今は喫茶店で休憩中。
そして、2人でまったりとパフェを食べている最中に……アタシは意を決して切り出した!
美嘉「あ、あのさ、みりあちゃん」
みりあ「なぁに、美嘉ちゃん?」
パフェをすくおうとする手を止め、みりあちゃんがアタシの話に耳を傾けてくれる。
アタシは意を決して、切り出した。
美嘉「え、えっと……」
みりあ「うん」
意を、決して……。
美嘉「あ、あのね?」
みりあ「なにー?」
切り……出し…………。
美嘉「……やっぱり、なんでもない」
みりあ「? なんでもないの?」
……切り出しは、したんだけど。その先が言えない。
今日何度も言おうと思ったけど、どうしても『妹になって』の一言が言えない。
こんなもの? アタシの妹ハーレムにかける思いは、こんなものだったの?
ううん、アタシの思いはこんなものじゃないはず……なんだけど。
アタシ、既にみりあちゃんのことを2人目の妹みたいに思ってたところあるから、改めて言うの滅茶苦茶照れる!
みりあ「美嘉ちゃん、顔赤いよ? もしかして熱あるの?」
美嘉「だ、だいじょぶだいじょぶ★ 熱なんてないよ」
みりあ「本当? でもやっぱり心配だから……」
そう言うとみりあちゃんは向かいの席から立ちあがり、アタシに近づいて来て―――自分のおでこをアタシのおでこにくっつけた。
美嘉「み、みりあちゃん?」
その行動に、アタシは若干戸惑う。
少しの間そうしていると、すぐにみりあちゃんはおでこを離した。
みりあ「うん、ホントに熱ないみたい」
美嘉「もう……だから、そう言ったでしょ?」
みりあ「あははっ、そうだよね」
笑ってそう言い、みりあちゃんはアタシから離れた。
そして元の席に戻ると、みりあちゃんはアタシを真っ直ぐに見つめ―――慈愛を感じさせる笑みで、告げた。
みりあ「でも、美嘉ちゃんがなんともなくて良かったよ♪」
美嘉「!」
その言葉と笑みに、アタシの心が強く揺さぶられた。
みりあちゃんがアタシのことを心配してくれたのが嬉しい。……そういう気持ちも、もちろんあるんだけど。
なんだろう、この全身を駆け巡る敗北感は。
今の、普通お姉ちゃんがやることじゃない?……え、アタシ、妹?
みりあちゃんにとって、妹みたいな認識だったりするの?
ていうかアタシ、もしかしてお姉ちゃんらしさでみりあちゃんに負けているんじゃ……?
じゃ、じゃあ妹になんて……なってくれるはずなくない?
みりあ「み、美嘉ちゃん? 今度は顔青くなったよ? やっぱり具合悪いんじゃない?」
美嘉「だ、だいじょぶだいじょぶ。ほら、冷たいパフェ食べて体温下がっただけ」
無理矢理な理屈で誤魔化しながらも、アタシの心は打ちひしがれていた。
突きつけられたのは、完全なる敗北。
今のアタシじゃ、みりあちゃんを妹には……出来ない。
……みりあちゃん、妹攻略失敗。
みりあちゃんの攻略に失敗した後、また奏と唯にカフェテラスに集まってもらった。
アタシは若干涙目になりながらも、事の顛末を2人に伝える。
美嘉「……無理。みりあちゃん、強敵すぎる。今のアタシじゃ、逆に妹にされる……」
奏「随分弱気になったわね」
未央たちを妹に出来たことで天狗になっていたアタシの鼻が、完膚なきまでにへし折られた。
アタシはすっかり自信喪失。
美嘉「所詮アタシには無理だったのかな……妹ハーレムなんて」
遠い目で、そんなことを呟く。もう、誰も妹に出来る気がしない。
唯「しっかりしなよ、美嘉ちゃん!」
唯はそう告げると同時に、『ぱぁんっ』とアタシの頬をはたいた。
突然の痛みに、アタシは目を見開いて唯を見つめる。
美嘉「ゆ、唯……?」
唯「たった一人、たった一回、妹に出来なかったからって諦めるの? 美嘉ちゃんの妹愛は、その程度のものだったの?」
美嘉「!」
唯の言葉がアタシの胸に、深く深く突き刺さる。
奏「私は、諦めるならその方がいいと思うんだけど」
奏が何か言っていたが、耳には入らなかった。
唯「みりあちゃんに姉として負けたんなら、もっと姉として成長しよーよ! みりあちゃんを妹に出来るくらいに☆」
美嘉「姉として、成長……」
唯の言葉を受けて、アタシの目に光が戻る。
美嘉「……そうだよね。まだ終わりじゃないんだ」
アタシは椅子から立ち上がって、2人に宣言する。
美嘉「アタシ、もっとお姉ちゃんを磨く! 成長して、成長して、みりあちゃんを越えるお姉ちゃんになって! 絶対にみりあちゃんを妹にしてみせる!」
それがアタシの決意!
美嘉お姉ちゃん、ここに完全復活★
唯「やっといつもの美嘉ちゃんに戻ったね☆」
美嘉「ありがと、唯!」
奏「唯、余計なことを……」
美嘉「奏も、話聞いてくれてありがと★」
奏「……どういたしまして」
よーしっ、目指すはNo.1お姉ちゃん!
待っててね、未来の可愛い妹たち!
これはカリスマですわ
あと、そこは「妹になりなさい」であるべきじゃないのか
0 件のコメント :
コメントを投稿