校内に放送が流れると同時に、重波(しげなみ)は席から立ち上がり窓際まで走った。
1秒前まで一緒に授業を受けていたクラスメート――のみならず全校生徒――は消滅していた。
校舎の4階から校庭を見ると、巨大な竜が出現していた。
「お前は……フロストドラゴン!!」
重波は、かつての想い人であった竜神まきなの描いたらくがきを思い出し、叫んだ。
・5th dragon
「フロストドラゴン(gelida draco)」
出身:西洋の竜
体長:12.2m
重さ:22ton
特徴:全身が氷で覆われた白銀の竜。冷たい地域に生息する。氷の息吹はあらゆるものを凍結させる。
まきなとの思い出:他の竜がキャンプファイアーを楽しんでいるのを遠くから見ていると、抜け出してきてホッカイドウの話を聞かせてくれた。
「準備はできてるな!!」
重波は廊下で大声を出して尋ねた。
「僕はね!だけど引森さんが学校に来てない!」
また不登校だ。
「しょうがない。二人で行くぞ!」
「毎回ながら緊張するね」
二人の男子生徒は窓を開け、校舎の4階から校庭に向かって飛び降りた。
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登場人物が多いため(4人程度)、特徴に基づいた名前をつけています。
かどうかは、測ったことがないから知らないけれど。
「……5円玉は161グラム。10円玉は590グラム。1円玉は115グラムあると思う」
1枚あたりの1円玉の重さは1グラム。
5円玉の重さは3.75グラム。
10円玉の重さは4.5グラムである。
「ありがとう」
お母さんが電卓を取り出し計算をした。
「ちょっと割り切れないけど。だいたい1,641円ね。じゃあ、バイト代として500円あげる」
「やった」
毎度のことながら、報酬がかなり多い。
「間違ってたらごめん」
「今から数えるから大丈夫よ。誤差の分だけあんた英単語覚えなさい」
「俺数えた意味なくね」
「ダブルチェックよ」
母親は嬉しそうに笑った。
3枚の新聞紙の上にそれぞれ置かれていた1円玉、5円玉、10円玉を親の貯金箱に戻し、報酬の500円玉を受け取った。
アルバイトに時間は1分も要さなかった。
新聞紙の上に親の貯めた小銭を撒き、”新聞を持つことで小銭の重さを測った”。
俺には、物の重さを正確に測る才能があった。
「飲食店は上手くいくでしょうね。お皿に盛るグラム数が決まってるらしいわよ。マニュアル通りにいつも同じ量乗せられたらすぐにバイトリーダーになれるわよ。ああ、でもあんた手順覚えるの向いてないわねぇ」
萎えるようなことを母が言ってきたのを無視して返答する。
「大金を稼げるようなのはないの。ほら、完全記憶能力のある人がポーカーで大儲けしたっていう映画あったじゃん。俺もこの能力使って派手なことできないかな」
「変なことに使うんじゃないわよ」
母親はたしなめた。
「能力っていうのは人に役立て信頼されるために使うものなの。インチキで自分だけ得をしてたら、人の信頼を失ってしまうわよ」
「インチキじゃないよ。絶対音感を持ってる人が音楽家を目指すのと方向性は同じだって」
「ならいいけど。あんたが学校に通ってるのは、その才能を磨く方法を考えるのと、誰のために使うか使い道を学ぶためであることを忘れちゃだめよ」
「うるさいなぁ。RPGの長老かよ」
「ふふっ、なによそれ」
母親は小銭を数えながら笑った。
1円玉を10枚ずつ重ねて並べていた。
まだ時間がかかるだろうなと思った。
ポーカーじゃなくてブラックジャックでしたね。映画『レインマン』より
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